貫之集(下)　三十六人集・断簡 (石山切)

　　　　三十六人集・断簡　石山切
貫之集（下）　特選十五枚　　（清書用臨書用紙）　　

紀貫之の家集で上・下二巻からなり、中は更に十巻の部立に仕立てられている。歌の総数は七二七首、その内の下帖で巻六～巻十の歌数三五八首である。昭和四年に西本願寺三十六人集より、伊勢集と共に割譲されて石山切となっている。伊勢集同様に豪華な装飾料紙が使われているが、伊勢集には無かった切継が使用されている。料紙は下巻だけで43枚あり、継紙の料紙は下巻全部で1６枚で、内重ね継1枚、破り継の一部に切継の入ったもの１０枚、切継だけの物1枚、残りは破り継だけの物である。最初の1枚重ね継、と最後の1枚具引唐紙（表面七宝紋、裏面獅子唐草）には墨入れがなされていない。（全料紙組順へ）

下巻（下帖）の部立は以下の通り。
巻第六：恋部。　詞書の無いものが殆どであるが、後半の後ろの辺りでは使用されている。歌数152首
巻第七；賀部。　延喜十二年定方の賀以下、日・月・松・柏・鶴・亀・千鳥他、年寿・慶賀などに関する歌。歌数27首
巻第八；別部。　旅立つ人への餞別歌などで、すべてに詞書を付けて状況を明白にしてある。歌数46首
巻第九；哀傷部。死別の際の歌などで、殆どの物に詞書がある。歌数26首
巻第十；雑部。　詳しい詞書を伴ったものも多く、殆どは贈答歌である。歌数10７首

緑色文字は料紙裏面部分の項を料紙（表面）にしたもの。（臨書用紙に表紙はついておりません、参考の為です。）


貫之集・下	貫之集・下	貫之集・下	貫之集・下	貫之集・下	貫之集・下

貫之集・下	貫之集・下	貫之集・下	貫之集・下	貫之集・下	貫之集・下

貫之集下・表紙			貫之集・下	貫之集・下	貫之集・下

西本願寺本三十六人集には様々な装飾料紙が使用されております。具引唐紙を始め、染紙や具引紙或はこれらに暈しや絵・金銀彩を施した装飾料紙、破り継料紙、重ね継料紙及び切継料紙等で、殆どの料紙に金銀で花鳥折枝が描かれているのが特徴です。当時集められる凡その美術料紙がふんだんに用いられております。
三十六人集で使われております装飾料紙の一部です。貫之集・上はこちら

貫之集（下）　書　第三十四紙　縦6寸7分、横1尺5分5厘　項を捲ると裏側にも書が書かれております。
両面加工の料紙を使用して綴じた帖です（見開き）。中央部分が窪んで、平行線が確認できるのは粘葉綴じの証です。

歌番号は貫之集での通し番号　　　　　　　　　　　　　　　　　　青色文字は使用字母

　　　　もとつながもとより
683
　こち風にこほりとけなば
　うぐひすのたかきにうつる
　　　　　こゑをつけなむ

　　　　とある返しに
684
　ゐてつたふはなにもあはぬ
　うぐひすは、ただにのみこそ
　　　　なきわたりけれ

　　　　ちかとなりなりけるをとこ正月
　　　　　　　　　つ
　　　　三日もとすなかもとにいたりたる
　　　　になかりければ、かくなむまで
　　　　きたりつるといひおきてかへりに
　　　　たるつとめておくれる
685
　とはばとひ
　　とはずばさても
　　　　　　あるべきを、
　もののはじめに
　返るべし
　　　　やは

　　　　毛止川那可毛止與利
683
　己知風仁己本利止計奈波
　宇久比寸能多可支仁宇川留
　　　　　　己衛遠川計奈无
　
　　　　東安類返之二
684
　井天川多不者那爾毛安者奴
　宇久比寸波、多々耳能美己曾
　　　　　　奈支和多利个礼

　　　　知可止那利奈利个留遠止己正月
　　　　　　　　　　川
　　　　三日毛止寸那可毛止仁以多利多留
　　　　耳奈可利計礼波、可久奈无末天
　　　　幾多利川留止以比於幾弖可部利二
　　　　多留川止女天於久礼留
68５
　止者々止飛
　　　止者寸波左天毛
　　　　　　　　安類部支遠、
　　毛能々者之女耳
　　　　返留部之
　　　　　　　　也波

「與」は「与」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。
「礼」は「禮」とすることも。
「个」は「介」とすることも。
「弖」は「天」とすることも。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

貫之集・下料紙組順 料紙順の青色文字は本清書用使用部分（裏面を清書用として組入れている部分も在ります）

紙順	料紙主仕様	料紙特徴
第一紙	重ね継料紙『焦げ茶』菱唐草唐紙（薄茶具引）	左上隅から左項下中央にやや湾曲した破り継、中央に薄茶具引地の菱唐草。その右側上には白地の具引唐紙（宝唐草）、下には焦げ茶の重ね継。左右両項及び裏面両項に墨付けは無し。
第二紙	具引唐紙丸唐草（二重複丸唐草）	薄赤茶具引唐紙、同色雲母摺（ギラ色刷り）。裏面は獅子唐草の具引唐紙。花鳥折枝金銀泥手描き。
第三紙	具引唐紙七宝紋（薄赤茶地）	薄赤茶具引唐紙、同色雲母摺（ギラ色刷り）。裏面は獅子唐草の具引唐紙。花鳥折枝金銀泥手描き。
第四紙	破り継料紙『秋風能』檀紙・七宝（白具引）	左端中央付近から右下にやや斜めに五枚の継紙で幅広の破り継。上が薄茶の檀紙、左下が白地に七宝紋の具引唐紙。花鳥折枝金銀泥手描き。
第五紙	破り継料紙『左牡鹿能』染紙（下付近隈ぼかし）	左側縦向斜めに赤煉瓦色の切継、右側に縦向やや斜めに紫色の破り継。何れも上部が広く下側が細まる。中央の染紙下側部分には叢雲ぼかし。花鳥折枝金銀泥手描き。
第六紙	キラ引唐紙小唐草（黄雲母引）	薄黄茶具引に全面黄雲母引、更に上から黄土の胡粉で小唐草（小重唐草）の柄を打ったもの。花鳥折枝金銀泥手描き。
第七紙	破り継料紙『哀れてふ』菱唐草（白具引唐紙）	白具引唐紙（菱唐草）は左端に有、その下に黄茶継紙を連れて破り継となる。中央は紫染の大きな継紙で更に右には黄土色の切継。破り継は下側が広く切継は狭い。花鳥折枝金銀泥手描き。
第八紙	破り継料紙『雁』染紙（小切箔砂子）	左端縦向に破り継があり、その右は薄紫の染紙、右側には薄黄土色の切継が右上から左下斜めにある。花鳥折枝金銀泥手描き。
第九紙	染紙（大小切箔砂子）花鳥折枝金銀泥手描き	全体に散らばるように大小切箔振。大は約五ミリ角、小は約１ミリ角。裏面は表に比べてやや疎らな中小切箔。中は約３ミリ角。表面は蝶・鳥・松枝葉のみ。裏面には花・紅葉も加わる。
第十紙	染紙『鶴松』銀泥描（全面粗砂子）	銀泥で描かれた松の枝を咥えた飛鶴。裏面は５～７ミリ角の切箔と２～3ミリ幅で15ミリ前後の長切箔が全面に散らしてある。
第十一紙	キラ引唐紙獅子唐草（雲母引）	白具引に全面雲母引、更に上から胡粉で獅子唐草（繋丸紋獅子唐草）の柄を打ったもの。花鳥折枝金銀泥手描き。裏面は白具引地に白雲母で同じ獅子唐草。
第十二紙	キラ引唐紙小唐草（黄雲母引）	薄黄茶具引に全面黄雲母引、更に上から黄土の胡粉で小唐草（小重唐草）の柄を打ったもの。花鳥折枝金銀泥手描き。裏面は白具引地に丸獅子唐草。
第十三紙	キラ引唐紙獅子唐草（黄雲母引）	薄黄茶具引に全面黄雲母引、更に上から黄土の胡粉で獅子唐草の柄を打ったもの。花鳥折枝金銀泥手描き。裏面は薄茶具引地に白雲母で同じ獅子唐草。
第十四紙	切継料紙『日月松栢』染紙（全面小切箔）	丁字色の染紙に全面金銀小切箔振。右端には渋朱色の切継が上部で幅広下部で狭く斜めに付けられている。花鳥折枝金銀泥手描き
第十五紙	染紙（薄茜）花鳥折枝金銀泥描	薄茜色染紙。花鳥折枝金銀泥手描き。
第十六紙	染紙（朽葉）花鳥折枝金銀泥描	朽葉色染紙。花鳥折枝金銀泥手描き。
第十七紙	ギラ引唐紙花唐草（黄雲母引）	黄茶色具引地に黄雲母引き、黄茶色胡粉摺唐紙（花唐草）。
第十八紙	ギラ引唐紙丸唐草（黄雲母引）	薄黄具引に全面黄雲母引、更に上から淡黄の胡粉で丸唐草（二重複丸紋唐草）の柄を打ったもの。裏面は淡黄具引地に丸獅子唐草。　花鳥折枝金銀泥手描き。
第十九紙	破り継料紙『雁』染紙（小切箔砂子）	左端縦向に破り継（第八紙と違って中央付近がへこむ）があり、その右は朽葉色の染紙に3か所の飛雲、右側には薄黄土色の切継が右上から左下斜めにある。花鳥折枝金銀泥手描き。
第二十紙	破り継料紙『尾張守』菱唐草（白具引唐紙）	左端中央付近から下中央やや右側にかけて斜めに三枚の継紙で破り継。右上側が白具引唐紙（菱唐草）。花鳥折枝金銀泥手描き。
第廿一紙	染紙（濃藍）花鳥折枝金銀泥描	濃色藍色染。花鳥折枝は他の物よりもやや密に描いてあり、裏面にも同様の柄。花鳥折枝金銀泥手描き。
第廿二紙	染紙（渋草）花鳥折枝金銀泥描	渋草色の染紙、右側部分にはぼかし。花鳥折枝はやや大きくて太目に描かれている。秋草。裏面には芒は描かれていない。花鳥折枝金銀泥手描き。
第廿三紙	破り継料紙『失せにき』染紙（小切箔砂子）	左側縦向斜めに薄紫の切継、その下に朽葉色で左から右下に斜めの破り継。右側に縦向斜めに縹色の切継。左の切継は上部が広く下側が細まる。右はその逆。花鳥折枝金銀泥手描き。
第廿四紙	染紙（黄檗）花鳥折枝金銀泥描	薄い黄檗染。花鳥折枝はやや疎らで、鳥が少なく蝶々が多い。花鳥折枝金銀泥手描き。
第廿五紙	染紙（薄茶）飛雲（二か所）	薄茶の染紙に右上と左下に二か所の飛雲（一か所には二つ並んで飛雲）。花鳥折枝金銀泥手描き。
第廿六紙	破り継料紙『天の川・縦』花唐草（白具引）	中央付近上から右下に大きくうねった鉄紺色で縦向に天の川の破り継。左には花唐草の白具引唐紙、白雲母。右には菱唐草の具引唐紙。花鳥折枝金銀泥手描き。
第廿七紙	具引唐紙七宝紋（薄黄茶具引）	薄黄茶具引唐紙、七宝紋（黄雲母）。裏面は獅子唐草。花鳥折枝金銀泥手描き。
第廿八紙	具引唐紙菱唐草（薄黄茶具引）	薄黄茶具引唐紙、菱唐草（白雲母）。裏面は獅子唐草。花鳥折枝金銀泥手描き。
第廿九紙	具引唐紙花唐草（薄黄茶具引）	薄黄茶具引唐紙、花唐草（白雲母）。裏面は獅子唐草。花鳥折枝金銀泥手描き。
第三十紙	雲紙『内曇り・下側』飛雲（一か所）	下側に二連の内曇り、右側中央よりやや上側に飛雲が一つとなっている。花鳥折枝金銀泥手描き。
第卅一紙	染紙（濃藍）花鳥折枝金銀泥描	濃色藍色の染紙に花鳥折枝金銀泥手描き。
第卅二紙	染紙（浅縹）花鳥折枝金銀泥描	浅縹色の染紙に花鳥折枝金銀泥手描き。
第卅三紙	染紙（黄檗）花鳥折枝金銀泥描	黄檗色の染紙に秋草の花鳥折枝金銀泥手描き。
第卅四紙	破り継料紙『東風』花唐草（白具引）	右上隅から三枚の継紙で斜めに波状の破り継、三枚目はやや弧を描く様に下まで繋がっている。左上隅には白い継紙が波状に、その下に深緑の継紙が斜めに切継。花鳥折枝金銀泥手描き。
第卅五紙	破り継料紙『六月耳』染紙（朽葉）・飛雲	左上から左下隅にかけて斜めに紫染の破り継。中央部分朽葉色の継紙には中央付近に一か所二つ並んで飛雲。右端には斜めに白具引の切継（上側幅広、下側は狭い）。
第卅六紙	破り継料紙『秋萩能』花唐草（薄黄茶具引）	右端に縦やや斜めに綾花紋の唐紙の破り継、中央に薄黄茶具引唐紙の花唐草（白雲母）。左端には焦げ茶羅紋の破り継。花鳥折枝金銀泥手描き。
第卅七紙	具引唐紙逆波紋（白具引）	逆波紋の白具引唐紙。花鳥折枝は芒・紅葉・萩などが疎らに描かれている。花鳥折枝金銀泥手描き。
第卅八紙	具引唐紙獅子唐草（薄茶具引）	薄茶具引唐紙、白雲母。花鳥折枝金銀泥手描き。
第卅九紙	破り継料紙『秋立日』染紙（濃縹）	左端縦向に薄茶の破り継、上側か広く下側が狭い、中程は左側に凹んでいる。中央部分は濃い縹色の染紙。右端は斜めに薄藍切継（上側が狭く、下側が広い）。花鳥折枝金銀泥手描き。
第四十紙	破り継料紙『寸宇源』染紙（淡色草色）	左端縦向に紫の破り継、細めの波状で左側に二か所大きく凹んでいる。中央部分は淡い草色の染紙。右端は斜めに朽葉色の切継（上側が広く、下側が狭い）。花鳥折枝金銀泥手描き。
第四十一紙	破り継料紙『桜無』飛雲（薄茶染紙）	左端縦向に縹と渋朱の破り継、斜めに小さく凹んで下側に広がる。中央部分は淡い草色の染紙。右端は斜めに朽葉色の切継（上側が広く、下側が狭い）。花鳥折枝金銀泥手描き。
第四十二紙	雲紙『内曇り・上側』飛雲（白具引唐紙）	上側に一連の内曇り、左側中央よりやや上側に飛雲が横並びに二つ、右下側中央より少し右に横並びやや右上りに二つの二か所となっている。花鳥折枝金銀泥手描き。歌は一首のみ。
第四十三紙	具引唐紙七宝紋（淡茶具引）	花鳥折枝金銀泥手描き。墨入れ無。

茶色の背景は重ね継、縹色の背景は破り継部分。凡そ三分の一が破り継（切継）となっている。

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