三十六人集 貫之集 上 『墨流し』 清書用臨書用紙 (半懐紙)   戻る 『貫之集・上』 臨書用紙 一覧へ  

素色 墨流し型打 全面金銀中小切箔砂子振 

貫之集・上 書手本 第十紙 染紙中色 『墨流し』 (三十六人集) 拡大へ
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貫之集・上 染紙中色 『墨流し』 金銀中小切箔砂子振 (三十六人集) 右上側部分拡大
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 墨流し 金銀中小切箔砂子振り 花鳥折枝燻し銀型打 装飾料紙
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 装飾料紙 『墨流し』 全面金銀中小切箔砂子振 第十紙用臨書用紙 半懐紙
墨流しを川に見立てて、急流で筏を操る筏師が銀泥で描かれております。川縁には葦も描かれております。

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臨書用紙 半懐紙
 
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右上側部分


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 装飾料紙 『墨流し』 全面金銀中小切箔砂子振  
墨流しを川に見立てて、急流で筏を操る筏師が銀泥で描かれております。

装飾料紙
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右下側部分


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 装飾料紙 『墨流し』 全面金銀中小切箔砂子振 
墨流しを川に見立てて、急流で筏を操る筏師が銀泥で描かれております。川縁には葦も描かれております。

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 装飾料紙 『墨流し』 全面金銀中小切箔砂子振 
川に見立てた墨流しに添って、多くの葦が描かれております。墨流しの飛び地は飛び出た一部を箸(小さな細い木棒)で切って作ります(料紙には型起こししたものを使用)。銀箔が反射して見辛いですが、墨流しの下端には筏師が描かれております。

装飾料紙
臨書用紙 半懐紙
 
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左下側部分


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 装飾料紙 『墨流し』 全面金銀中小切箔砂子振 
墨流しを川に見立てて、急流で筏を操る筏師が銀泥で描かれております。川縁には葦も描かれております。

装飾料紙
臨書用紙 半懐紙
 
 書手本 『墨流し』 右上側部分貫之集・上 書手本 第十紙 染紙中色 『墨流し』 金銀中小切箔砂子振 (三十六人集) 右上側部分拡大 書手本 『墨流し』 

右上側部分

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 装飾料紙 『墨流し』 全面金銀中小切箔砂子振 書手本 第十紙 右上側部分 
墨流しを川に見立てて、急流で筏を操る筏師が銀泥で描かれております。

装飾料紙
書手本 6寸7分×1尺5分
 
 書手本 『墨流し』 右下側部分貫之集・上 書手本 第十紙 染紙中色 『墨流し』 金銀中小切箔砂子振 (三十六人集) 右下側部分拡大 書手本 『墨流し』 

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 装飾料紙 『墨流し』 全面金銀中小切箔砂子振 書手本 第十紙 右下側部分
墨流しを川に見立てて、急流で筏を操る筏師が銀泥で描かれております。川縁には葦も描かれております。
 
装飾料紙
書手本 6寸7分×1尺5分
 
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 装飾料紙 『墨流し』 全面金銀中小切箔砂子振 書手本 第十紙 左上側部分 
川に見立てた墨流しに添って、多くの葦が描かれております。墨流しの飛び地は飛び出た一部を箸(小さな細い木棒)で切って作ります。墨流しの下端には筏師が描かれております。

装飾料紙
書手本 6寸7分×1尺5分
 
 書手本 『墨流し』 左下側部分貫之集・上 書手本 第十紙 染紙中色 『墨流し』 金銀中小切箔砂子振 (三十六人集) 左下側部分拡大  書手本 『墨流し』 

左下側部分


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 装飾料紙 『墨流し』 全面金銀中小切箔砂子振 書手本 第十紙 左下側部分 
墨流しを川に見立てて、急流で筏を操る筏師が銀泥で描かれております。川縁には葦も描かれております。

装飾料紙
書手本 6寸7分×1尺5分
 
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書手本

三十六人集 染紙 『墨流し』 (貫之集 上) 解説・使用字母 
 貫之集 上『墨流し』  書手本 第十紙 縦6寸7分、横1尺5分5厘

歌番号は貫之集内での通し番号                   青色文字は使用字母       解説・現代語訳
117
(よをうみて わがかすいとは たなばたの)
*1
 なみだの玉の 緒とやなる覧

   よるの歌

118      
 まことかと みれともみえず たなば
 たは、そらになきなを たてるなるべし
   
はづき じゅうごや
   八月十五夜海の邊なる家に男
   女いでゐて月のいるにみる

119
 なにはがた しほみちくれば 山のは
 に、出る月さへ みちにけるかな

   たのなかにこたかがりしたる所

120
 あきのたと よのなかをさへ わくごとく
 かりにぞ人は おもふべらなる

   花のほとりに鶴のむれゐたる
121
 むれゐたる かはべにつるは きみが
 ため、我おもふことを おもふべらなり

   萩みたる
122
 とめきつつ なかすもあるかな 我やど
 の、はぎはしかにも しられざるべし

   をうなのきくの花みたる所
123
 おくしもの おきまかはざる きくの花
 (いづれをもとの いろとかはみむ)


117
 與遠宇美天 和可々須以止八 多奈波多乃
 奈美多乃玉乃 緒止也奈留覧

   與留能歌

118
 末己止可止 美禮止毛美盈須 多那盤
 多波、曾良仁奈支奈遠 太天留奈留部之

   八月十五夜海能邊奈留家爾男
   女以天為天月乃以留爾美留

119
 奈爾盤可太 志保美知久禮者 山能葉
 爾出留月散部 美知爾希留可那

   多能奈可爾己多可々利之多留所

120
 安支能多止 與乃奈加遠左部 和久己止久
 可利仁楚人波 於毛不部良奈留

   花乃保止利仁鶴乃武禮為多留
121
 武礼為多留 加波部爾徒留波 幾美可
 多女、我於毛不己止遠 於毛不部良奈利

   萩美多留
122
 登女支川々 奈可寸毛安留可奈 我也止
 能、者支波之可爾毛 之良禮左留部之

   遠宇奈乃幾久能花美多留所
123
 於久之毛能 於支末可波左留 幾久能花
 (以川禮遠毛止能 以呂止可波美武)


( )*1は前項にあり
「禮」は「礼」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。
「與」は「与」とすることも。
「邊」は「辺」とすることも。
( )は次項にあり


          現代語訳                      解説           解説・使用字母

117
「世を倦みて我がかすいとは棚機の 涙の玉の 緒とやなるらん」
世の中が嫌になって私が浸ける糸は、棚機つ女の涙の珠を綴る玉の緒となることだろう。


   夜の歌

118      
「誠かと見れども見えず七夕は 空に無き名を立てるなるべし」
本当かと想えども思えず七夕は、気もそぞろで身に覚えのない評判が立つことに為ってしまいそうだよ。


   陰暦八月の十五夜に海の邊にある家で男女が庭に出て座って
   月が出ているのを見ている(中秋の名月を愛でている処)

119
「難波潟潮満ちくれば山の端に 出る月さへ満ちにけるかな」
難波潟に潮が満ちて来たので、山の稜線に出て来た月でさへもまん丸であったことよ。


   田の中で小鷹狩をしている所で、

120
「秋の田と世の中をさへ別くごとく かりにぞ人は思ふべらなる」
秋の田と世の中とを別世界にするかのように、小鷹狩りに人々は思いを寄せているようだ。


   花のすぐ傍で鶴の群が佇んでいる処

121
「群居たる川辺に鶴は君がため 我思ふことを思ふべらなり」
群がっている川辺で鶴は君の為に、私が思っていることを思っているに違いない。


   萩を眺めている処

122
「尋め来つつ鳴かずもあるかな我宿の 萩は鹿にも知られざるべし」
訪ねて来ながら鳴かないことも有るのだろうか、我が家の萩は鹿にも知られていない様だ。


   女性が菊の花を眺めている所

123
「置く霜の置き紛はざる菊の花 何れを元の色とかは見む」
置く霜の置き間違えることも無い菊の花、どれどれを基の色と見たら良いのだろうか。(否、見做すことも無いだろう。)


 

117
(世の中が嫌になって私が涙の海に濡らす糸は、織姫様にお貸しして私の意図を汲んでくださり、棚機つ女の涙の珠を綴る玉の緒となると云うことでしょうか。)との意。

かす;「浸す」と「貸す」との掛詞。
いと;「糸」と「意図」との掛詞。
たま                 たま
玉の緒;玉を貫く紐。和歌では、魂を繋ぎ留めておく緒の意味にも用いられる。

とや…らん;…と云うのかなあ。…と云うのだろうな。伝聞を確かめる意を表す。格助詞「と」に疑問の係助詞「や」更に推量の意の助動詞「らむ」の音便「らん」の連体形。

118
(好意を寄せている人が逢ってくれると云うのは本当だろうかと想えども思う事が出来ず、七夕と云うのは、心もうわの空で身に覚えのない評判が立つことに為ってしまいそうですよ。)との意。

無き名;根拠のない噂。身に覚えのない評判。

空に;気もそぞろに。うわの空で。形容動詞ナリ活用の連用形。

べし;きっと…するだろう。…に違いない。助動詞「べし」、確実な推量の意を表す。

はづき
八月;陰暦の八月。現在の九月上旬〜十月上旬頃。葉月。

119
(難波江の浜に潮が満ちて来たので、山の上に顔を出してきたお月様も満ち足りた様子でまん丸の満月であったことよ。)との意。

ば;…ので。順接の確定条件の意を表す。

120
(秋の田と町での日常とをまるで別世界にでもするかのように、小鷹狩りに興じる事に人々は並々ならぬ思いを馳せているようですよ。)との意。

ぞ…べらなる;正に…ようだ。きっと…に違いない。強意の係助詞「ぞ」更に、助動詞「べし」の語幹「べ」に接尾語「ら」が付き形容動詞型の語尾「なり」の付いた「べらなり」の係助詞「ぞ」を受けての連体形「べらなる」。

121
(花=私の思い人の近くの川辺に群がっている鶴は、君の為に私が思っていることを私と同じように思っているに違いない。)との意。

べらなり;…ようだ。…に違いない。助動詞「べし」の語幹「べ」に接尾語「ら」が付き形容動詞型の語尾「なり」の付いた形。平安時代初期に漢文を読下した文章に現れ、延喜年間に多用され男性の用いる口語として平安末期まで存在していた。

122
(直ぐ近くまで萩を尋ね求めて来ながら鳴かないことも有るのだろうか、踏み荒されては困るので、我が家の庭の萩の花は鹿にも知られない方が良い。)との意。

べし;きっと…にちがいない。確実な推量の意で、安堵した様子に訳したが、「…するのが良い。」と当然の意と採ることも出来る。

123
(降りて来る霜が置き間違えることも無く一様に白く染った庭の菊の花であるが、どれを本来の色と見たら良いのだろうか。いいや、見做す必要も無いのであろう。其のままで美しいのであるから。)との意。
 お まが
置き紛はざる;置くのに見分けが付かなくなることもなく。置くことに間違える程によく似ている訳でも無く。

かは;…だろうか、否…ではない。係助詞「か」に係助詞「は」で反語の意を表す。

 

たなばた

棚機;この日、川辺に棚を設け、機で織った布を身に着けて川に入る禊を、女性が行っていたことによると云われている。又お盆を前にした儀礼とする説もある。「七夕」と書くのは陰暦七月七日の夕べに、たなばた祭りを行ったことによるもの。


小鷹狩;ハヤブサ・ハイダカ・ツミなどの小型の鷹を用いて行う秋の鷹狩り。ウズラ・スズメなどの小鳥を捕獲する。初鷹狩。初鳥狩。などとも。

 と    き
尋め来つつ;尋ね求めて来るときに

はしか                     のぎ
芒;麦などのイネ科植物の穂の先にある芒、野毛。また「芒」は「ススキ」とも読む。

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三十六人集 染紙 天地隈ぼかし 『墨流し』 金銀特大ちぎり箔散し (躬恒集) 書手本  解説・使用字母


三十六人集 染紙 天地隈ぼかし 『墨流し』 (躬恒集)
躬恒集『墨流し』詳細へ
 墨流し  躬恒集別柄部分書手本 第二十七紙 縦6寸7分、横1尺5分5厘  (田中親美氏模写本)

歌番号は躬恒集内での通し番号                    青色文字は使用字母       解説・現代語訳
287
 わがこひは しらぬみちにも あらなくに
 まとひわたれと あふ人もなし

288         く に ぞ
 ひとりぬる ひとにきかくに
 かみなつき、にわかにもふる はつしぐれかな


   亭子院に
   かつらのきをほりてたて
      

   まつるにき
289
 みかくれて ふけゐのうらに ありしいしは
  おいのなみにぞ あらはれにける

290
 ことのはを つきのかつらに えたなくは
  なににつけてか そらにつてまし

   をみなへし
291
 ぬしもなき やどにきぬれば
  をみなへし、はなをぞいまは
      あるじとは
        おもふ


287
 和可己比盤 志良奴美地爾毛 安良那久仁
 末止比()堂礼止 安不人毛奈之

288           久仁所
 飛登利奴留 悲止仁幾可久仁
 閑美那川支、爾和可爾毛婦留 盤川之久礼閑那


   亭子院二
   閑川良乃幾遠保利天多天
      

   万川留爾幾
289
 見可久礼天 婦遣為乃宇良仁 安利之以之八
  於以乃那三仁曾 安良盤礼爾計留

290
 己止乃者遠 川幾乃可川良仁 衣多那久波
  奈爾々徒个天可 所良仁徒天末之

   遠美那部之

 奴之毛那支 也止仁幾奴礼盤
  遠美奈部之、盤那遠曾以万波
      安留之止盤
        於毛不


「禮」は「礼」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。


           現代語訳                      解説          解説・使用字母
287
「我が恋は知らぬ道にもあらなくに 惑ひ渡れど逢ふ人もなし」
私の恋は知らない道でもある訳では無いのに、ずっと彷徨い続けてはいるが逢う人もいないことよ。


288  
「独り寝る人の聞くにぞ神無月 にわかにも降る初時雨かな」
独りで寝ている時、聞くところによると神無月と云うのは、突然降り出してくる初時雨の様なものだなあ。


   亭子院に桂の木を掘り建てて奉る時
   
289
「御隠れて噴井の内に在りし石は 老いの波にぞあらはれにける」
お隠れになられて噴井の中に在る石は、寄る年波にこそ洗われている事でしょう。


290
「言の葉を月の桂に枝なくは 何に付けてか空に伝てまし」
言の葉としての和歌を、もし月の桂の木に枝が無かったとしたなら、何に付けたなら空の月まで伝えられるのだろうか

   
 おみなえし
   女郎花
291
「主もなき宿に来きぬれば女郎花 花をぞ今は主とは思ふ」
家主もいない屋敷に来てみれば女郎花よ、其方をば今宵の主人と思うこととしよう。


 

287
(私の恋路は知らない道でも無いのに、あちこち歩き回るけれども出会う人さへいないことよ。)との意。

惑ひ渡れ;ずっと彷徨い続ける。途方に暮れて歩き回る。「惑い渡る」の已然形。

288
(独りぼっちで寝ている時など、人から聞くところによると神無月と云うのは、寂しさのあまり急に涙が溢れ出してくるように、突然降り出す初時雨の様な月であるのだなあ。)

 ぬ                                      
寝る;眠る。横になる。男女が共寝する。下二段動詞「ぬ」の連体形「寝る」

289
(お隠れになられて噴井の内に在る石=亭子院のご遺志は、噴出する水に洗われる様にして、寄る年波にこそ現れている事でしょうよ。)との意。

見隠れて;目隠しとなって。
ふけゐ
噴井;水の噴き出している井戸。

290
(もし詠った和歌を言の葉として月の桂の木に付けるのに、その枝が無かったとしたなら、何に付ければこの和歌を空の月まで届けられるのだろうか。否、届けられなどしないだろう)との意。

なくは;…なかったなら。もし…がなかったとしたなら。打消しの順接の仮定条件を表す。
…か…まし;…だろうか。否、…でないであろう。仮定条件を受けて反実仮想の意を反語としてあらわす。

291
(人の住まなくなった屋敷に来てみれば女郎花の花が咲いていたよ、今夜はとりわけ女郎花の花をこの屋敷の主人と思う事にしましょうか。)との意。
 き                    
来ぬれば;来てみたなら。カ変動詞「来」の連用形「き」に完了の助動詞「ぬ」の已然形「ぬれ」更に順接の確定条件を表す接続助詞「ば」。動作・作用が実現し、完了して次に続く意を表す。



 

かみなづき

神無月;陰暦十月の称。八百万の神々が、この月に出雲大赦に集まり他の国にいない由と考えられてきた。「な」は上代の格助詞で、「の」の意を表し「神の月」の意を表す。出雲では「神在月」と呼び習わし、また、新穀で酒を醸す頃の月でもあることから、「醸成し月」の意とも云われている。他に、時雨月、初霜月などとも呼ばれている。

ふけゐ
噴井;近くに高い山などのある地域では、水の噴き出している泉や井戸がある。水の豊かな所では家の中に掘り抜き井戸があって、吹き出る水が涼しげな音を立てている。岐阜県大垣市などでは昔から噴井のある民家が多くあった。


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  訂正文字部写真
三十六人集 染紙 『墨流し』 (躬恒集)










写真一行目
「仁」の横に「乃」の文字


写真五行目
「爾」の横に「止」の文字


「可久仁」の横に「久仁所」の文字





写真二行目
「良」か「之」の横に「之」の文字
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