清書用 臨書用紙
十五番歌合せ 昭和7年模写巻子本
十五番歌合 全集録歌三十首一覧(収録歌解釈含む)、及び後十五番歌合収録歌三十首一覧
昭和7年模写巻子本 |
前十五番歌合(さきのじゅうごばんうたあわせ) | 後十五番歌合(のちのじゅうごばんうたあわせ) | 前十五番歌合・解釈 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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一番 桜の花が散っているよ、木の下を吹く風は冷たいのだろうね、空には知られることの無い雪が降っているよ。(桜の木の下では花吹雪が舞っていますよ!) 我が家に花見を兼ねて訪れる人は、花の時期だけではなく散った後ににこそ訪ねて来るのが当然ですよねえ。 二番 今から行きますよと(貴方が)言ったばかりに、陰暦九月の長い長い夜を待ち明かして、(私は貴方の代わりに)明け方の月の出を待ってしまいましたよ。 何か月も男性が訪れるのを待っていて秋も暮れて長月になり、然も月下旬の有明の月の頃に成って終いましたよ!。とのつれない待ちぼうけの意も込められている。 散っているのだろうかまだ散っていないのだろうかと聞きたかったのに、(如何した事か)故郷の花見をして帰る人にも逢うことも無いのですよ。 三番 世の中に全く桜が無かったとしたら、春を過ごす人の心はのんびりとして落ち着いていられたでしょうにね!。 草木の葉末の露と根元にある雫、遅速はあるが遅かれ早かれ何れは無くなって終う儚い物ですよ(人の命は)!と云う世の中の例えなのですよ。 四番 春になったとでもいうのだろうか、吉野の山も今朝では霞んで見えることよ。 千年までもと約束した松も今日からは、君に心惹かれて何時までも続く世を過ごそうと思いますよ。 子日の行事「小松引」を念頭に置いた歌。 五番 思い切って行くことも出来ないで、山中に暮らしておりますよ。もう一度ホトトギスの鳴く声を聞きたいがゆえにね 夜も深まって寝覚めることも無ければホトトギスの鳴く声は間接的にこそ聞き及ぶべきだったのですよ。 六番 人の親として心が闇の中に有るわけではないのだが、子を思うあまりに理性を失って戸惑ってしまいましたよ。 この世に逢うという事が全く無かったならば、却ってあの人の事をも自分自身をも恨まないのでしょうにね。 (つれないそぶりを続けて逢ってはくれない人も、それを辛く感じてしまう自分をも、恨みに思うやるせなさ) (天徳四年内裏歌合の歌、未逢恋) 七番 夕方になると佐保川の河原に霧が立ち込めて、友の心を動揺(ざわつかせる)させるかの様に多くの千鳥が鳴いているよ。 (佐保の河原に川霧が立ち込めて姿は見えぬのに多くの千鳥がざわざわと鳴くものだから、共に心がざわついてしまって動揺してしまいましたよ。)との意。 天上の風よ噴井の浦にいる鶴は、どうして空の彼方に帰らないのだろうか(いや帰るべきであるよ。) 八番 色に現れないで変わりゆくものとしては、世の中の人の心に咲く花であったのだなあ! 秋の野に咲く萩の花の彩を我が家の庭にも、鹿の鳴声と共に移したいものだなあ!。 九番 吉野山に白雪が降り積もるようですよ、麓の里ではいよいよ寒さが増してくるのでしょうね。 年毎の春の別れをしみじみと深く心を惹かれるように感じようとも、去り行く人に対して惜しみながら見送る人だけが経験できる感情なのですよ。 十番 (我が世の)夜明け時の月の輝きを待っている間に、私の代は随分と盛りを過ぎててしまったものよ。 まだ知らないであろう。故郷の人は今日までに来るであろうとあてにさせていた私を、(今も)待っているのだろう。 十一番 琴の音色に峰を吹き抜ける松風の音が調和しているようだ、どこの山の尾根から奏で始めたのだろう。 岩橋の夜の約束もきっと絶えてしまうに違いないでしょう、翌日の如何にも辛く苦しそうに見える様子はまるで葛城の神でしょうね。 (葛城山と吉野金峰山の間に岩橋を架けようとしたが、容姿の醜さを恥じて夜だけ動いたため完成しなかった。という逸話) 十二番 悲しみと共に一人で寝ている夜の明ける間での間は、どんなにか長い時間であるという事かは知って居る心算ですよ。 忘れまいとおっしゃるその言葉の将来のことまでは、当てに出来そうにもありませんので今日を最後の命であってほしいものですね。〔儀同三司の母〕 十三番 (わざわざ火をつけて)焼かなくても草はちゃんと燃え(萌え)ますよ、春日野をただ春の火(陽)に任せておいたら良いのですよ。 (野焼きをしなくともちゃんと新芽は生えてきますよ。ただお天道様の火に任せておけば。)〔壬生忠岑〕 水面に映る月の姿を眺めながら月齢をかぞえてみると、今夜はちょうど中秋の名月(十五夜の満月)であることよ。 十四番 指折り数えてみると私自身が重ねてきた長い歳月を過ごし、これから先を待ち受ける時、何を急ぐことが有ろうか。 仮に鶯のさえずりが無かったならば、まだ雪の残っている山里でどうして春を知る事が出来ましょうか。 十五番 ほんのりと明けて行く明石の浦の朝霧の中に島陰に隠れるように見えなくなって往く舟の事をしみじみと考えてしまいましたよ。 和歌の浦に潮が満ちて来れば干潟が無くなって終うので、蘆辺を目指して鶴が鳴きながら飛んでゆきましたよ。 |
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