三十六人集　公忠集『ギラ引唐紙」

　　三十六人集　公忠集　ｷﾞﾗ引唐紙『小唐草』（清書用臨書用紙）　　　

五位の蔵人として醍醐天皇・朱雀天皇に仕えた源公忠の歌集で、完存しており歌数は四十八首と成っている。殆ど全てに詞書が有り、詠作事情を明白に知る事が出来、年次の明確なものも多く当時の文人社会を反映する資料ともなる。桂宮本叢書にある書陵部蔵御所本公忠集は三十九首で本公忠集に無い歌が六首あり、又最後の十首は書陵部本には無いことから書陵部本とは別系統の手本を元に後になって書写されたものと推察される。尚、書陵部蔵御所本三十六人集の公忠集には五十七首あり更に後の書写と思われる。本集の料紙は僅かに６枚で表面は全て雲母引のｷﾞﾗ引唐紙、裏面は白具引に雲母摺りの具引唐紙であり、６枚とも表裏で柄が異なる。（本臨書用紙では表面のみの片面加工です）

下記掲載の物は六紙の表面のみです。（右から左への並び順です。）組順はこちら
公忠集の文字の背景がベージュ色の部分は解釈(現代語訳)を付け加えております


第六紙ギラ引唐紙・小波紋	第五紙ギラ引唐紙・七宝紋	第四紙ギラ引唐紙・逆波紋	第三紙ギラ引唐紙・菱唐草	第二紙ギラ引唐紙・花襷紋	第一紙ギラ引唐紙・小唐草

	地を金雲母でｷﾞﾗ引し、唐草柄が色胡粉で施されている為全体的にぎらぎら感が強い様に感じられていますが、何方の上にも墨が乗るように加工が施されておりますので、安心してお使いいただけます。参考写真です唐紙料紙の書手本拡大へ
小唐草・ギラ引唐紙（公忠集）・（半懐紙）黄色ギラ(黄雲母と金雲母の混合)引きにつや消し唐草

小唐草・ギラ引唐紙（公忠集）花鳥折枝金銀袷型打黄色ギラ引きにつや消し唐草

　書手本

解説及び使用字母へ

ｷﾞﾗ引唐紙（金雲母引地胡粉柄）　『小唐草』（公忠集）書手本　縦6寸7分、横1尺5分5厘
第一紙　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　田中親美氏模本

歌番号は公忠集での通し番号　　　　　　　　　　　　　　　　　青色文字は使用字母　　　　　　解釈（現代語訳）へ

　きむただしゅう
　公忠集
　　えんぎのおほむ　　ごいくろうど
　　延喜御ときに五位蔵人にてさぶらひ

　　けるを御譲位にあひてはなれにけ
　　　　すざくいん　　　じょうへい
　　れば朱雀院御とき承平八年十一月に

　　またかへりなりてあくるとしの正月に

　　おほむあそびのついでにむめのはな

　　ををりて

１
　ももしきにかはらぬものはむめのはな,をり
　てかさせるにほひなりけり

　　　公忠集

　延喜御止幾爾五位蔵人爾天佐不良比

　計留遠御譲位爾安比天者那連仁希

　礼盤朱雀院御止幾承平八年十一月爾

　末多可部利奈利天安久留止之乃正月仁

　於保无安曾比乃徒以天爾武女乃者那

　遠々利天

１
　毛々之幾爾可波良奴毛乃者武女乃者那,遠利
　天可佐世留爾保比奈利計利

「禮」は「礼」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。

　　　　　　　　　　　現代語訳　　　　　　　　　　　　　　　　　　解釈　　　　　　　　　解説及び使用字母へ

　公忠集

　　延喜の御代に五位の蔵人としてお仕えしておりましたが
　　天皇の座を御譲位になられましたので退官しておりました。
　　しかし、朱雀院の御代の承平八年十一月に
　　又返り咲きまして、年明けの正月に
　　管弦の遊びのついでに梅の花を折取って

1
「百磯城に変らぬ物は梅の花、折りて挿頭せる匂いなりけり」
宮中で変らないものと云えば梅の花ですね、折取って髪飾りとすれば華やかな美しさであったなあ。

えんぎのおほんとき
延喜御時；平安前期、醍醐天皇の年号。（901年7月～923年4月）
すざくいんのおほんとき
朱雀院御時；平安前期、朱雀天皇の御代。（930年～946年）
承平年間（931年4月～938年5月）

1
（宮中で変らないものと云えば梅の花ですよ、枝を折取って頭の髪に挿して飾りとすれば華やかな美しさであったなあ。）と変らぬ美しさを詠嘆した歌。

匂い；輝く様な美しさ。

なりけり；…であったなあ。断定の助動詞「なり」に過去の助動詞「けり」。ここでは詠嘆を表す。

　ページ

　　　解説及び使用字母へ

第一紙	ギラ引唐紙『小唐草』	表面；褐色地色の雲母引に同色の胡粉摺り、柳・紅葉・松枝・梅・桔梗・蔓竜胆・女郎花・芒・葛・草藤・桜草・千鳥など裏面；白具引きに雲母摺りで「二重唐草」、金銀砂子切箔振。松枝・紅葉・千鳥
第二紙	ギラ引唐紙『花襷紋』	表面；白色地色の雲母引に同色の胡粉摺り、柳・紅葉・松枝・梅・桔梗・蔓竜胆・女郎花・芒・葛・草藤・桜草・千鳥など裏面；白具引きに雲母摺りで「唐子唐草」、金銀小切箔にパラリと数枚の中切箔振。松枝・紅葉・千鳥
第三紙	ギラ引唐紙『菱唐草』	表面；薄茶色地色の雲母引に同色の胡粉摺り、柳・紅葉・松枝・梅・紫苑・葛・草藤・桜草・千鳥など裏面；白具引きに雲母摺りで「波紋」、金銀砂子切箔振。松枝・紅葉・千鳥
第四紙	ギラ引唐紙『逆波紋』	表面；薄茶色地色の雲母引に同色の胡粉摺り、柳・紅葉・松枝・梅・蔓竜胆・葛・草藤・桜草・千鳥など裏面；白具引きに雲母摺りで「獅子唐草」、金銀小切箔にパラリと数枚の中切箔振。松枝・紅葉・千鳥・蔓竜胆・草藤
第五紙	ギラ引唐紙『七宝紋』	表面；白色地色の雲母引に同色の胡粉摺り、柳・紅葉・松枝・梅・蔓竜胆・藤袴・芒・葛・草藤・萩・千鳥など裏面；白具引きに雲母摺りで「鉄線唐草」、金銀砂子切箔振。松枝・紅葉・千鳥・芒・草藤
第六紙	ギラ引唐紙『小波紋』	表面；白色地色の雲母引に同色の胡粉摺り、柳・紅葉・松枝・梅・桔梗・蔓竜胆・女郎花・芒・葛・草藤・桜草・千鳥など裏面；白具引きに雲母摺りで「獅子唐草」、金銀小切箔にパラリと数枚の中切箔振。松枝・紅葉・千鳥


第六紙ギラ引唐紙・小波紋	第五紙ギラ引唐紙・七宝紋	第四紙ギラ引唐紙・逆波紋	第三紙ギラ引唐紙・菱唐草	第二紙ギラ引唐紙・花襷紋	第一紙ギラ引唐紙・小唐草