三十六人集(西本願寺本)
 中務集 飛雲ぼかし 清書用臨書用紙 (半懐紙)  戻る 『三十六人集』 粘葉本 一覧へ


三十六人集 飛雲ぼかし 『金銀砂子振』 花鳥折枝金銀袷型打 (中務集 )
染紙(薄黄土色)飛雲ぼかし 金銀砂子振り 花鳥折枝金銀袷型打

写真は半懐紙の為、臨書手本よりも一回り大きくなっております。
(本料紙は中務集第三紙の代用品です。飛雲の位置、花鳥折枝等は実物とは異なります。)


三十六人集 飛雲ぼかし 『金銀砂子振』 花鳥折枝金銀袷型打拡大 (中務集 )   三十六人集 飛雲ぼかし 『金銀砂子振』 書手本(中務集 )
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 花鳥折枝金銀袷型打部分拡大(中央やや上側部分)  
 
三十六人集 飛雲ぼかし 『金銀砂子振』 花鳥折枝金銀袷型打拡大 (中務集 )
 
 花鳥折枝金銀袷型打部分拡大(右下側部分)  


臨書手本

三十六人集 飛雲ぼかし 『金銀砂子振』 書手本拡大 (中務集 )  使用字母
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 染紙(薄黄土色)飛雲ぼかし  書手本 第四紙 縦6寸7分、横1尺5分5厘   使用字母及び解説へ

歌番号は中務集での通し番号                    青色文字は使用字母

   
(いけにのぞきたる松にふぢかかれり)

12

 
(きみをおもふ あだしこころも なきものを、)
*1
 いけのふぢなみ まつこえにけり


   たちばなにほととぎすのなくに
13
 いろかへぬ はなたちばなに ほととぎす、
 ちとせならぶる こゑぞきこゆる


   のにかりしたる
14
 をみなへし かりのたよりと ききしまに、
 あまたの秋は のべにきにけり

   やりみづのつらにきくさけり、をと
   こふみかく
15
 あかれつつ かげもみるべく みきはなる、
 きくにこひしき 人はならなむ


   としのうちに春たつ雪ふる梅さきけり
16
 ふるゆきの したににほたる むめのはな、
 しのひにかけて 春はきにけり


   村上の先帝の御屏風にの火やくところ
17
 はるはかく のをのみやくと おもふまに、
 なべてくさきも いかでもゆらむ


   春ををしむまにかへるかりなく


   
(以計爾能曾幾多類松二布知可々礼里)
12
 
(幾美遠於毛不 安多之己々呂毛 那幾毛能遠、)1
 以毛能布知那美 末徒己衣爾个利


    
多知者那爾本止々幾須能奈久爾
13
 伊路可部奴 者那多知波奈爾 保止々幾須、
 知止世奈良不留 己衛所幾己由類


    乃爾可利之多流
14

 乎美那部之 可利能多與利登 幾々之末爾、
 安末多能秋八 乃部爾幾仁个利


    也利美徒能川良爾幾久佐个利、越登
    己布美可久
15
 安可礼徒々 可計毛美類部久 美幾八奈流、
 幾久爾己比之幾 人八奈良奈無


    止之能宇知爾春多徒雪婦留梅左幾个利
16
 布類由幾乃 之多爾々本多留 武女能者那、
 之乃比爾可計天 春波幾爾个利


   村上能先帝能御屏風爾能火也久止己路
17
 者類波可久 乃遠能美也久登 於毛不末爾、
 奈部天久左幾毛 以可天毛由良無



    春遠々之武末爾可部留可利奈久

( )*1は前項に有り                               ページトップ アイコン
「禮」は「」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。
「个」は「介」とすることも。

「與」は「与」とすることも。

12
貴方の事を愛おしく思っていますよ、移り気などあろうはずは有りませんのに、池の淵に在る藤波は松を越えてゆらゆらと揺れ動いておりますよ。(私の心も、待つ身を通り過ぎて何故だかゆらゆらと揺れ動いておりますよ。)

あだし
他し;他のものである。異なっている。

ふぢなみ
藤波;藤の花が波が動くかのように揺れ動く様。また、なみなみと咲く藤の花。

13
声色もその花色も変える事のない花橘に時鳥よ、限りなく長い年月に匹敵させる名声であるとの評判ですよ。

はなたちばな
花橘;花の咲いている橘。橘は食用柑橘類の総称で、其の昔「時じくのかくの木の実(非時香菓)=夏に実り、冬になっても香味が変わらない木の実」とも呼ばれていた。「其の非時香菓は是れ今の橘なり」(古事記)。

14
女郎花の咲く頃(初)雁の便りと聞いている間に、数多くの秋がこの野辺に来ては通り過ぎて往きましたよ。(お慕いする方からの便りはとうとう私の許には届きませんでした。)

かり  たよ
雁の便り;便り。手紙。前漢の時代、匈奴に捕えられた漢の蘇武が雁の足に手紙を付て漢に連絡したという漢書の故事によるもの。「雁の使い」とも。

やるみづ

遣水;寝殿造の庭園などに水を導き入れて流れる様にしたもの。


15
別れつつある様に姿も見えるらしく、菊の幹もそう成っている様子であるが、(私も)菊(聞く事)に恋い焦がれている人に成ってしまったようですよ。

 あか
散れ;別々になる事。別れ散る事。

16

降る雪の下より何処からともなく幽かに香って来る梅の花、御しのびを兼ねて春は既に来ていたのですね。

しの
偲ひ;深く思い慕う事。

17
春はこのように野原だけを焼くものだと思っておりましたのに、一面の草木も(燃えてしまったはずですのに)どうして一斉に芽吹いて来るのでしょうか。

帰雁; 春を惜しむ間に帰る雁鳴く。(四月ごろ北へ向かう雁の鳴声は悲哀の情を誘い、古来詩歌に数多く詠まれてきた)




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中務;平安中期の歌人で三十六歌仙の一人。古今和歌集を勅撰したことで知られる醍醐天皇の皇弟で中務省長官、中務卿敦慶親王の王女。家集は『中務集』、天暦・天徳歌合せの作者。母はやはり三十六歌仙の一人、伊勢。

てんとくうたあわせ
天徳歌合;天徳四年三月三十日宮中清涼殿で催された歌合であり、12題20番を採った。これ以後の歌合の規範となり、天徳四年内裏歌合とも称された。


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