伊勢集・重ね継　『為類久毛能』

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゐ　る　く　も　の　
伊勢集　重ね継『為類久毛能』（清書用臨書用紙）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
伊勢集第十紙料紙、重ね継『為類久毛能』の部分の清書用臨書用紙になります。伊勢集そのものには裏面にも歌が書かれておりますが、表面のみの加工ですので表面のみの使用と御承知おきください。裏面にも墨入れをすることは可能ですが、裏面を使用するには力量が必要となります。裏面の臨書には同じ料紙をご利用頂くか、白具引料紙（花鳥折枝）をご利用下さい。

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重ね継　『為類久毛能』　花鳥折枝金銀袷絵手描	伊勢集　書

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右上側重ね継部分　花鳥折枝金銀袷絵手描　　右側斜めに一枚継で走る赤茶色の重ね継と、その右下の渋いベージュ色の重ね継部分。やや判り辛いですが、色重ねのグラデーションに成っております。こちらは元々見開き一枚分の料紙です。	伊勢集臨書用紙
	右下側重ね継部分
右下側重ね継部分　花鳥折枝金銀袷絵手描きこちらに成ると赤茶色の染紙グラデーション部分がよく判ります。右上部に少しだけ見える渋いベージュ色の重ね継部分は、逆グラデーションに成っており、三十六人集の重ね継の中でも珍しい部類です。ｺｹﾞ茶色の羅紋紙重ね継の右には、水面に見立てたのでしょうか水灰色の破り継が設けられております。
	左側台紙部分具引・白
伊勢集　『為類久毛能』　花鳥折枝部分　　金銀袷絵手描き光を当てていない為に金銀の輝きが見えませんが、手にすればちゃんと輝いて見えますのでご安心ください。『ゐるくものひとりきもせぬ物ならば、なみだはみをとなかれざらまし』

解説及び使用字母へ

伊勢集　『為類久毛能』　書手本　第十紙

歌番号は伊勢集内での通し番号　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　青色文字は使用字母　　　　　　　　　解釈（現代語訳）へ

　　　　　　　　　　　　　　なみぢ（へだてて）
　　　　　　　　　　　　　　　　　君もきく（らむ）
６１
　ゐるくもの
　　ひとりきもせぬ
　　　　　　　　物ならば
　　　　　　なみだはみをと
　　　　　　　　　　　なかれざら
　　　　　　　　　　　　　　　　まし

　　　　五条の内侍のかみ御四十賀を
　　　　きよつらのみぶ卿のつかまつりたまふ
　　　　屏風のゑにわかなつむところ
６２
　春野にわかなならねと君がため
　としのかずをもつまむとぞおもふ

　　　　むめの花のかたはらなる竹に
　　　　たかうなほる所
６３
　たけのはにちりかからなむむめのはな
　雪のなかのもはるとみゆべく

　　　　桜のあるかはつらに
６４
　みなぞこにうつるさくらの影みれば
　このかはつらぞたちうかりける

　　　　　　　　　　　　奈美遅（部堂天々）
　　　　　　　　　　　　　　　　君毛支久（羅武）
６１
　為類久毛能
　　　比止利支毛世奴
　　　　　　　　　　　　物奈良八
　　　　　　　　奈美太者美乎登
　　　　　　　　　　　　　　　　奈可礼左良末之

　　　　　五条能内侍乃可三御四十賀遠
　　　　　幾與川良能美不卿能川可末川利太万不
　　　　　屏風乃衛爾和可那川武止己呂
６２
　春野爾和可奈々羅年登君可多免
　止之能可春遠毛川末武止所於毛不

　　　　　无女乃花能加堂者良奈流竹二
　　　　　堂可宇那本留所
６３
　太希能者爾遅利可々良奈武々女乃者那
　雪乃奈可能毛者流止美遊部具

　　　　　桜能安類加者川良仁
６４
　美奈楚己爾宇川流左久良能影三礼者
　己乃可者川良楚太知宇可利計留

（　）内は欠如部分　　使用字母は推定、伊勢集では「らむ」は圧倒的に「良无」が多い、極稀に「良武」「良無」がある。「む」の前の文字が「ら」以外の時には「武」次いで「無」となる。尚、「良无」は「らん」と読む人も。
「爾」は「尓」とすることも
「礼」は「禮」とすることも

　　　　　　　　　　　　　　　　　現代語訳　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　解釈　　　　　　　　　　解説及び使用字母へ

60
「季にも負ひす羽根もならへてなにしかも、波路隔てて君も聞くらむ」
季節としても相応しい羽子にも慣れたと云うのに、どうしてまあ波路を隔ててしまうのか、君も人の言葉に従っているのであろうか。

61
「居る雲の一人来もせぬものならば、涙は澪と流れざらまし」
もし宮中では誰一人として来るはずの無いものであるならば、涙は舟を通す程の波路となって流れて行くことも無かったのでしょうね。

　　　　　　　ないしのつかさ　　　　　おほんしじゅうのが
　　　五条の内侍司の長官の御四十賀を
　　　清貫の壬生卿のお仕え申し上げ為さる
　　　屏風の絵にある若菜を摘む処を見て、

62
「春野に若菜ならねと君が為、年の数をも摘まむとぞ思ふ」
春の野に若菜が芽生えて欲しいと（願う）、貴方様の為に年の数ほど摘み取ろうと思っておりますのでね。

　　　梅の花の傍らにある竹林の
　　　筍を掘る所、

63
「竹の葉に散りかからなむ梅の花、雪の中のも春と見ゆべく」
竹の葉に散り掛ってしまうだろう梅の花よ、（散り積もれば）雪の中のも春と見えてしまいますよ。
或は「なむ」を誂えの終助詞と採って
竹の葉に散り掛って欲しい梅の花よ、（散り積もれば）雪の中のも春と見えるでしょうから。

　　　　　　　　かはつら
　　　桜の有る川面に

64
「水底に映る桜の影見れば、この川面ぞ立ちうかりける」
水底に映っている桜の花を見ていると、この川の辺りを立ち去るのが適当だったのだなあ。

60
（波路ははるか遠い事への喩えとして引用される。季は頃合いで経験も重ねたと云うのに、なぜこんなにも遠くに感じるのでしょう。）との思いを詠んだ歌。

なにしかも；どうしてまあ…なのか。原因・理由に関する疑問について詠嘆を込めた用法。副詞「何」に強意の副助詞「し」、疑問の係助詞「か」更に詠嘆を表す助動詞「も」の付いた形。

61
（初めから宮中では一人でいる独房の様な処であるとの心構えで有ったなら、これほどの涙を流すことも無かったのでしょうね。）との意を返した歌。

62
（内侍司の女性長官の四十歳の祝の席で屏風絵を種に長寿を願って詠んだ歌。）
若菜摘みは新春の若菜を摘んで食し、その生命力にあやかろうとした正月行事。若菜は食用になる草の総称。春の七草が現代に通じる。

63
（きっと竹の葉に散り積もるだろう白い梅の花であるから、散り積もった花弁と見紛って雪の中でも春だと思えてしまうでしょうね。）との意を詠んだ歌。

さて、春だと錯覚してしまうのは私なのか、筍なのか。

64
（水底に映る桜の花を見ているとゆらゆらと揺らめいてキラキラと輝き余りの美しさに時の経つのも忘れてしまったので、この川の畔を早々に立ち去るべきだったのだなあ。）と思いの外時間を使ってしまった事にハッと気が付いた事実に詠嘆を込めて詠んだ歌。

う；助動詞特殊型「う」。適当・当然の意を表す。…のが当然だ。…するのがよい。助動詞「む」の音便「ん」が更に「う」となったものとされる。

　　　ページ

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右上側重ね継部分　花鳥折枝金銀袷絵手描　　右側斜めに一枚継で走る赤茶色の重ね継と、その右下の渋いベージュ色の重ね継部分。やや判り辛いですが、色重ねのグラデーションに成っております。こちらは元々見開き一枚分の料紙です。	伊勢集臨書用紙
	右下側重ね継部分
右下側重ね継部分　花鳥折枝金銀袷絵手描きこちらに成ると赤茶色の染紙グラデーション部分がよく判ります。右上部に少しだけ見える渋いベージュ色の重ね継部分は、逆グラデーションに成っており、三十六人集の重ね継の中でも珍しい部類です。ｺｹﾞ茶色の羅紋紙重ね継の右には、水面に見立てたのでしょうか水灰色の破り継が設けられております。
	左側台紙部分具引・白
伊勢集　『為類久毛能』　花鳥折枝部分　　金銀袷絵手描き光を当てていない為に金銀の輝きが見えませんが、手にすればちゃんと輝いて見えますのでご安心ください。『ゐるくものひとりきもせぬ物ならば、なみだはみをとなかれざらまし』