和泉式部集切20　断簡模本『よひのまを・・・』

和泉式部続集切（続集下巻）（６寸８分×４寸）　　　
　
素色料紙（未晒しの楮色）が使われております。
当然滲み止め加工はしてあり、薄茶色は経年変化によるもの。

素色（しろいろ）　　

第二十紙（一葉）素色（しろいろ）	清書用　臨書用紙　灰青色（薄浅葱色）２５.０ｃｍｘ３６.４ｃｍ　　　　　　　　獅子唐草解説及び使用字母へ２０.６ｃｍｘ１２.1ｃｍ
続集下巻　乙類断簡１８　歌４６（1318）　歌４７（1319、詞書のみ。歌は別歌）。	（　）内の歌番号は、岩波文庫本和泉式部集による通し番号

解説　第二十紙　（断簡１８）

　　　　　　　　　　　　かな　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　水色文字は使用時母　　　　　　　　解釈（現代語訳）へ

　　　（ひとのもとにいきたりけるをとこ、返にや
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つとめて
　　　あらむ。よりきたるにあはねば、わざと）

　　　まいりきたりしを心うくなどいひ

　　　たるに

1318
　よひのまををぎふく風にうらみねど,ふきか

　へさるるたよりとぞみし

1319
　　　よそよそになりたるをとこの、とほきところよ

　　　りきたるを、いかがきくと人のとひたるに

歌４７　　　　　　　　　　　　　ら
きたりともよそにこそきけからごろも,そのしたかひ

　

　　　（飛止乃毛止仁以幾太利計留遠登古、返爾也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　徒止女弖
　　　安良无。夜利幾太流爾安波年盤、和佐登）

　　　末意利幾太利之越心宇久那登以比

　　　堂類爾

1318
　夜日乃末越々幾不久風爾宇羅美禰止,不幾可

　遍佐類々多与利止所美志

1319　　　～
　　　与所～爾那利太留遠登己乃、渡本支東己呂与

　　　利起太流越、意可々支久止人乃止日太流耳

歌４７　　　　　　　　　　　　　　　　　　　良
幾多利止无与所仁己曾支个加良己呂毛,所之多可比

歌番号は岩波文庫本和泉式部集による通し番号

をぎ；荻。イネ科の多年草、しばしば大群落を作る。
　　　風聞草。

（　）内は前項にある前段の枕詞

1319は詞書のみ。歌は別の物になる。

７行目の歌４７は下の句の一部が欠損。
（この断簡の裏に書かれていた物と思われる）

「爾」は「尓」とすることもあり。
「弖」は「天」とすることもあり。
「与」は「與」とすることもあり。
「个」は「介」とすることもあり。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ページ

　　　　　　　　　　　　　　現代語訳　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　解釈　　　　　　　　　　　　　　解説及び使用字母へ

　　　恋人の所に行っていた男性が返されたのであろうか。
　　　忍び寄って来た時に出くわさない様に、翌早朝わざわざ
　　　参上して来ましたのに好ましくないなどと仰いましたので

1318
「宵の間を荻吹く風に憾みねど、吹き返さるる頼りとぞ見し」
夜通し荻吹く風に憾みはしますが、逆に吹き返されてきた伝手だったと思うことにしますよ。

　　　離れ離れになってしまった殿方が、遠い所から
　　　来ているのを、どう尋ねればいいかと人が言うので、

1319
「来たりとも他所にこそ聞け唐衣、その下交ひ○○○○○○○○」
仮に遣って来たとしても他人事のように聞き流して下さいな、その下前の…。

心憂く；嘆かわしい。不愉快だ。好ましくない。「心憂し」の連体形。

1318
（独りきりにされて夜を通して軒端の荻の葉を吹く風の音に残念には思いますが、逆に吹き返されてきた私を気遣う拠り所だと思うことにしましょう。）との意。

をぎふ　　かぜ
荻吹く風；軒端の荻の葉を鳴らしながら吹く風。独りで聞くには心寂しさを募らせる。
吹き返さるる頼り=返されてきた風の便り。ほのかな噂の意。

1319
（仮に遣って来たとしてもきっぱりと他人事のように聞き流して下さいね、下前の褄を結ぶようなことは決してしないで下さいな。）との意か。

唐衣；枕詞。「紐」「着る」「裁つ」「返す」「裾」「袖」など衣服に関する語に掛る。

したが
下交ひ；着物の前を重ね合わせる時下になる方。下前。

にょういん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ほうがんだい　しゅてんだい
女院；天皇の母・お后・皇女に贈られた尊号。待遇は上皇と同じで、女院別当・判官代・主典代などを任命。女院の最初は991年（東三条院）。

1319参考（下の句を任意に想像）
「来たりとも他所にこそ聞け唐衣、その下交ひの褄結ぶごと」
つまむすび　　　　　　　　　　　　　　　　つま・つま
褄結びは着物の妻を結ぶこと。「夫・妻」に掛けて、男女が縁を結ぶことに云う。

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第二十紙（一葉）素色（しろいろ）	清書用　臨書用紙　灰青色（薄浅葱色）２５.０ｃｍｘ３６.４ｃｍ　　　　　　　　獅子唐草解説及び使用字母へ２０.６ｃｍｘ１２.1ｃｍ
続集下巻　乙類断簡１８　歌４６（1318）　歌４７（1319、詞書のみ。歌は別歌）。	（　）内の歌番号は、岩波文庫本和泉式部集による通し番号