和泉式部集(和泉式部続集切)〈 元は綴葉本 〉
冊子本 部分空摺染紙料紙(6寸8分×4寸8分)
伝藤原行成筆(然し乍ら真筆と推定出来る物無し、書写年代及び筆跡から、女性の手によるものではともされている)。平安時代に和泉式部の歌を書写した綴葉装の冊子本で、正集と続集があり合せて和泉式部集と云う。続集に収められた歌数は約647首と言われているが、殆んどが一葉宛の断簡で数十葉が残るのみである。筆跡は針切の字形に似て、細かな仮名の連綿が緩やかな運筆で進められ、小粒の文字ながら一首の中で筆圧も変えており墨の濃淡も生かそうとしている。下巻では字粒がやや大きく、丸みを帯びて運筆が大らかになっている。
正集が在ると云われながらもその全容は不明で、久曽神昇氏によりこれは共に続集であり、正集が続集上巻、従来の続集が続集下巻と謂うべきだと指摘している。又、飯島春敬氏は書風の違いに注目し続集上巻を甲類、続集下巻を乙類と分類している。(他の和泉式部集は、宸翰本、松井本、雑種本の三種が知られており、何れも成立の仕方を異にする。)
冊子本は縦20.6cm×横14.5cmとやや小さめで、元の紙数は不明。一項に歌二首と仮定すると料紙約81枚、324項の冊子本となる。並び順はこちら
この冊子本に使用している料紙は、厚手の楮紙の漉紙で主に素紙(白色)で漉目の無い物と漉目の有る物とがあり、他に藍色、茶色の染紙に部分的な空摺りを施した装飾料紙もある。
下記掲載の物は、昭和中期の模本です。
清書用 染紙 ぼかし唐紙
清書用1冊は、素色(白色)、灰青(薄浅葱色)、茶(薄赤茶色)3色各10枚の30枚の料紙で構成。
表面のみ清書用加工の淡い染紙にぼかし唐紙2柄のみを施した料紙です。尚、柄は実物の物とはやや異なります。臨書用紙1枚で冊子二項分、現存する続集切の大部分が作成できるよう入れてあります。
冊子本 第二紙 和泉式部集 (素色;和泉式部続集切 )解説追加 |
冊子本 第一紙 和泉式部集 (素色・和泉式部正集切 )解説追加 |
清書用 本楮紙(現物には漉目の有る物と無い物とが混在しておりますが、本品は漉目無の物のみです。) 白色、薄藍色、薄赤茶色、ほぼ表裏同色。料紙は縦8寸2分5厘・横1尺2寸、 染紙3色、ぼかし唐紙の計30枚で構成。(巻頭割愛部分を含め零本一巻分) 写真は冊子本(和泉式部続集切)の一部任意箇所を掲載 ハクビ製清書用・臨書用紙は両面加工の本楮紙使用ですが巻子仕立には裏打ちすることをお勧めします。 |
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第八紙(甲類);第七紙(甲類) 茶色(黄茶色);茶色(赤茶色) 解説追加 |
第六紙(甲類);第五紙(甲類) 素色(白色);灰青(浅葱色) 解説追加 |
第四紙(甲類);第三紙(甲類) 素色(白色);素色(白色) 解説追加 |
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第十四紙(乙類);第十三紙(乙類) 素色(白色);茶色(薄黄茶色) 解説追加 |
第十二紙(乙類);第十一紙(甲類) 茶色(薄黄茶色);素色(白色) 解説追加 |
第十紙(甲類);第九紙(甲類) 茶色(黄茶色 ;茶色(黄茶色) 解説追加 |
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第十九紙(乙類);第十八紙(乙類) 素色・青灰色;素色(白色) 解説追加 |
十七紙(乙類);第十六紙(乙類) 素色(白色);素色(薄茶色) 解説追加 |
第十六紙(乙類);第十五紙(乙類) 素色(薄茶色);茶色(赤茶色) 解説追加 |
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第二十五紙(乙類);第二十四紙(乙類) 灰青(薄浅葱色);灰青(薄浅葱色) 解説追加 |
第二十三紙(乙類);第二十二紙(乙類) 灰青(浅葱色);茶色(焦茶色) 解説追加 |
第二十一紙(乙類);第二十紙(乙類) 灰青(薄浅葱色);青灰(薄浅葱色) 解説追加 |
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第三十一紙(乙類);第三十紙(乙類) 薄茶色(薄黄茶色);茶色(赤茶色) 解説追加 |
第二十九紙(乙類);第二十八紙(乙類) 青灰色(浅葱色);青灰色(渋浅葱色) 解説追加 |
第二十七紙(乙類);第二十六紙(乙類) 素色(白色);素色(白色) 解説追加 |
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第三十六紙(乙類) 青灰色(浅葱色) |
第三十五紙(乙類);第三十四紙(乙類) 青灰色(浅葱色);素色(白色) 解説追加 |
第三十三紙(乙類);第三十二紙(乙類) 素色(白色);薄茶色(薄黄茶色) 解説追加 |
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練習用・臨書用紙 資料館価格 練習用・臨書用紙(30枚入) 1冊 3410円(税込) |
清書用・臨書用紙 資料館価格 清書用・臨書用紙(30枚入) 1冊 6380円(税込) |
断簡22 第二十五紙+第二十四紙 |
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正規品30枚入になります
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正規品30枚入になります
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価格改定の予定です。
一部の拡大写真を掲載いたしました。
溪雨資料館にて”一部やや難あり”のものを 3,200円(税込)でお分け致しております。数に限りが御座いますのでご了承ください。
お越しの祭には予め御問合わせ頂く事をお勧め致します。
正規品の清書用については、お近くの書道用品店でお求めになれます。
正規品の価格についてはこちら
模写本及び原本の紙数関係
従来 | 久曽神昇氏 | 飯島春敬氏 |
備考 |
備考 |
和泉式部正集 | 和泉式部続集上巻 |
甲類 |
正集は詳細不明 |
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和泉式部続集 | 和泉式部続集下巻 | 乙類 |
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模写本 | 綴葉本原本 | 断簡の歌数および歌番号 | ||
第一紙 | 紙数番不詳 断簡1 |
模写本歌1・(2) 正集・歌735(松井本歌1905)、詞書‐歌不明 |
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第二紙 | 不詳 断簡2 |
甲類 | 模写本歌3・4・5 続集・歌944・946・947 |
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第三紙 | 不詳 断簡3 |
甲類 | 模写本歌6・7・8・9 続集・歌963・964・968・976 |
徳川美術館蔵 |
第四紙 | 不詳 断簡4 |
甲類 | 模写本歌10・11・12 続集・歌970・971・973 |
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第五紙 | 不詳 断簡5 |
甲類 | 模写本歌13・14・15 続集・歌972・1000・1001 |
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第六紙 | 不詳 断簡6 |
甲類 | 模写本歌16・17 続集・歌1012・1060 |
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第七紙 | 不詳 断簡7 |
甲類 | 模写本歌18・19 続集・歌974・969 |
東京国立博物館蔵 |
第八紙 | 不詳 断簡8 |
甲類 | 模写本歌20・21・22 続集・歌993・994・995 |
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第九紙 | 不詳 断簡9 |
甲類 | 模写本歌23・24・25 続集・歌996・997・998 |
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第十紙 | 不詳 断簡10 |
甲類 | 模写本歌26・27 続集・歌1003・1008の詞書‐但し歌は別歌 |
逸翁美術館蔵 |
第十一紙 | 不詳 断簡11 |
甲類 | 模写本歌28・29・30 別歌、続集・歌1009・1010(正集歌235) |
個人蔵 |
第十二紙 | 不詳 断簡12 |
乙類 | 模写本歌31・32 続集・歌1283・1284 |
逸翁美術館蔵 |
第十三紙 | 不詳 断簡13 |
乙類 | 模写本歌33・34 続集・歌1290・1291 |
個人蔵 |
第十四紙 | 不詳 断簡14 |
乙類 | 模写本歌35・36 続集・歌1305・1306 |
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第十五紙 | 不詳 断簡15 |
乙類 | 模写本歌37 続集・歌1307 |
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第十六紙 | 不詳 断簡15 |
乙類 | 模写本歌38・39 続集・歌1308・1309 |
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第十七紙 | 不詳 断簡15 |
乙類 | 模写本歌40・41 続集・歌1310・1311 |
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第十八紙 | 不詳 断簡16 |
乙類 | 模写本歌42・43 続集・歌1312・1313の詞書のみ(正集264) |
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第十九紙 | 不詳 断簡17 |
乙類 | 模写本歌44・45 続集・歌1315・1317 |
個人蔵 |
第二十紙 | 不詳 断簡18 |
乙類 | 模写本歌46・47 続集・歌1318・1319の詞書‐歌は別歌 |
徳川美術館蔵 |
第二十一紙 | 不詳 断簡19 |
乙類 | 模写本歌48・49 続集・歌1326・1327(松井本歌1833) |
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第二十二紙 | 不詳 断簡20 |
乙類 | 模写本歌50・51・52 続集・歌1328・1329(松井本歌1807)・1330の詞書 |
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第二十三紙 | 不詳 断簡21 |
乙類 | 模写本歌53・54・55 続集・歌1347・1349(下の句欠)・1369(下の句のみ) |
東京国立博物館蔵 |
第二十四紙 | 不詳 断簡22 |
乙類 | 模写本歌56 続集・歌1352(下の句の途中まで) |
出光美術館蔵 |
第二十五紙 | 不詳 断簡22 |
乙類 | 模写本歌56・57・58 続集・歌1352(下の句)・1353・1354の詞書 |
出光美術館蔵 |
第二十六紙 | 不詳 断簡23 |
乙類 | 模写本歌59・60・61 続集・歌1359(下の句のみ)・1360・1361の詞書のみ |
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第二十七紙 | 不詳 断簡24 |
乙類 | 模写本歌62・63 続集・歌1372・1373(松井本歌1940) |
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断簡21の間 断簡25 |
乙類 | 断簡・歌54・64 続集・歌1349(下の句)・1350 |
救世熱海美術館蔵 | |
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歌番号は岩波文庫本和泉式部集の通し番号。
原本は元綴葉装の冊子と推定しているが、断簡の幅に違いがあるのは或は粘葉装であった場合も考えられる。
飯島春敬氏の唱える甲類、乙類は鈴木一雄氏の説によるもの。何分断簡ばかりで、憶測や類推の域を出ないのはお許し頂くことにする。
ページ
い づ み し き ぶ
和泉式部; おおえまさむね たいらのやすひら
平安中期の歌人で中古三十六歌仙の一人。大江雅致の娘、母方の父は越中守平保衡。996年頃、和泉守橘道貞
ためたか
の妻となる。小式部内侍は娘。秘かに冷泉天皇の皇子為尊親王の寵愛を受けたが、事がばれて道貞と離婚する。
そちのみやあつみち
為尊親王の没後、今度は師宮敦道親王の寵愛を受ける。この時の情交を綴ったものが和泉式部日記となる。
また、師宮敦道親王追悼服喪の最中の挽歌の一群約百二十首余りは、和泉式部集の中でも際立った存在である。
その後、中宮彰子に仕え、またまた藤原保昌に嫁ぐこととなるなど、如何にも情熱的な一生を送る。此の時々の感情を
自由な立場で詠った歌が恋愛歌人としての名を世に知らしめている。
挽歌群;歌940〜1061
この中に「つれづれのつきせぬままに、おぼゆる事をかきあつめたる歌にこそ似たれ、ひるしのぶ、ゆふべのながめ、よひのおもひ、よなかのねざめ、あかつきのこひ、これを書きわけたる」の詞書を持つ一連の塊が在る。
ひるしのぶ; 九首(歌1014〜1022)
ゆふべのながめ; 九首(歌1023〜1031)
よひのおもひ; 十首(歌1032〜1041)
よなかのねざめ; 九首(歌1042〜1050)
あかつきのこひ; 九首(歌1051〜1059)