和泉式部集切6　断簡模本

和泉式部続集切（続集上巻）（６寸８分×４寸３分）　　　
　
素色料紙（未晒しの楮色）が使われております。
当然滲み止め加工はしてあり、薄茶色は経年変化によるもの。

素色（しろいろ）　　

第六紙（一葉）素色（しろいろ）	清書用　臨書用紙　白色（しろいろ）２５.０ｃｍｘ３６.４ｃｍ　　　　　　　　宝唐草解説及び使用字母へ右半葉２０.６ｃｍｘ１２.７ｃｍ
続集上巻　甲類断簡６　歌１６（1001）　歌１７（1012）。	（　）内の歌番号は、岩波文庫本和泉式部集による通し番号

解説　第六紙　（断簡６）

　かな　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　水色文字は使用時母　　　　　　　　解釈（現代語訳）へ

1001
　こひのなりまさるかな

　　　まへなるたちばなを人のこひたるやるとて

1012
　とるもをしむかしの人のかににたる、はなたち
　　　　　る
　花のなにやとおもへば
　

　　　ぶくにてものもみぬとしの御そぎの日、

　　　くるまにありときくは、まことかととひた

　　　りけるきんだちのありけるを、のちに

1001
　己比乃奈利万佐留可奈

　　　万部奈留太知波奈遠人乃己比多留也流止天

1012
　止流无遠之武可志乃人乃可爾々太留、者奈多知
　　　　　　留
　花乃奈爾也止於无部波

　　　布久仁天毛乃毛美奴東之御所支乃日、

　　　久流万爾安里止支久波、万己止可止々日太

　　　利計留支无多知能安利个留遠、能知仁

歌番号は岩波文庫本和泉式部集による通し番号

「爾」は書間違い右に「留」を書足し。

「爾」は「尓」とすることも。
「个」は「介」とすることも。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ページ

　　　　　　　　　　現代語訳　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　解釈　　　　　　　　　　　　解説及び使用字母へ

1001
「我が心夏の野辺にも有らなくに、繁くも恋のなり勝るかな」
私の心は夏の野辺にいる訳でも無いですのに、頻りに恋心が掻き立てられることですねえ。

　　　前にある橘の木を植え替えの為に引き抜いている、
　　　人に差し上げようというので

1012
「採るも惜し昔の人の香に似たる、花橘のなる宿思へば」
抜き取ってしまうのも惜しいなあ、昔のあの人の香りに似ているので、花橘の薫る屋敷の事を思うと。

　　　喪に服していてものも見ていない年の禊の日に、
　　　車が用意してあると聞いていますが、本当ですかと尋ねて
　　　こられた親族のご子息がいらしたのを、後に

1001
（私の心は夏の野辺に佇んでいる訳でも無いですのに、夏草が生い茂っているかのように絶え間なく恋心が掻き立てられることですねえ。）との意。

たちばな　　　　　　　　　　　　　ときじく　　かく　　こ　　み　　　こうじみかん
橘；食用柑橘類の総称。「時軸の核の木の実」「柑子蜜柑」ともいう。時鳥と共に和歌にはよく詠み込まれ、昔を思い出すよすがとして象徴的に使われていた。

1012
（花橘の薫っていた屋敷の事を思い起してみると、抜き取ってしまうのも惜しい気がするなあ、昔のあの人の薫付けていたお香の香りに似ているので。）との意。

ぶく
服；喪服。また、喪に籠る事。
きんだち
公達；公卿の家柄などの貴族のご子息。「きみたち」の音便。

こう　じんこう　びゃくだん　きゃら　　じゃこう　りゅうぜん　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　たきもの　　　　　　くゆ
香；沈香・白檀・伽羅・麝香・竜涎などの植物や動物から採った様々な香料を練り合わせてその人に合わせた薫物。着物に燻らせて使われた。人それぞれの香りが有り、姿は見えなくともその香りで誰であるかを言い当てたと云われる。

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清書用　臨書用紙
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第六紙（一葉）素色（しろいろ）	清書用　臨書用紙　白色（しろいろ）２５.０ｃｍｘ３６.４ｃｍ　　　　　　　　宝唐草解説及び使用字母へ右半葉２０.６ｃｍｘ１２.７ｃｍ
続集上巻　甲類断簡６　歌１６（1001）　歌１７（1012）。	（　）内の歌番号は、岩波文庫本和泉式部集による通し番号