和泉式部集切22　断簡模本『ひとならば・・・』

和泉式部続集切（続集上巻）（６寸８分×４寸２分）　　　
　
染紙料紙らしき料紙が使われております。
当然滲み止め加工はしてあり、未晒しの楮色よりも赤茶味の強い為、経年変化を考慮しても黄茶～赤茶に染めたものと思われる。

茶色（薄黄茶色）　　

第二十二紙（一葉）茶色（薄黄茶色）	清書用　臨書用紙　茶色（薄柿茶色）２５.０ｃｍｘ３６.４ｃｍ　　　　　　　　宝唐草解説及び使用字母へ柄拡大へ右半葉２０.６ｃｍｘ１２.６ｃｍ
続集下巻　乙類断簡２０　歌５０（1328）歌５１（1329）歌５２（1330の詞書のみ）。	（　）内の歌番号は、岩波文庫本和泉式部集による通し番号

解説　第二十二紙　（断簡２０）

　　　　　　　　　　　　かな　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　水色文字は使用時母　　　　　　　　　解釈（現代語訳）へ

1328 ひとならばいふべきものをまつほどに、あめふるとてはさはるものかは　　　ひとのもとよりえいかずなどいひたるに 1329 なこそとはたれをかいひしいはねども,心にす〇るせきとこそみれ　　　ものへまうづとて、さふじするをとこ　　　たちながらきて、あふぎとずずと〇とし	1328 悲止那良盤以婦部支毛乃越万徒保止耳、安免布流東弖波佐者留毛乃可盤　　　悲止乃母登夜利盈以可春那止以悲太流耳 1329 奈己所止盤太礼乎可以悲之以盤禰止毛,心仁春□ 　留世支東己所美礼　　　毛能部万宇徒東弖、左布之春留遠登己　　　多遅奈可良支弖、安不支止春々止□止之
歌番号は岩波文庫本和泉式部集による通し番号ものへまうづ；物詣=神社、仏閣へお参りすること。さふじ；掃除あふぎとずず；扇と数珠	ゑ　　　　　う歌1329の□は「衛」か或は「宇」か。歌1330の詞書の□は「越」か「宇」か「弖」は「天」とすることもあり。「礼」は「禮」とすることもあり。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ページ

　　　　　　　　　　　　　　現代語訳　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　解釈　　　　　　　　　　　　　　解説及び使用字母へ

1328
「人ならば言うべきものを待つ程に、雨降るとては障る物かは」
大人であるならば言うべきところですので待っている内に、雨が降るからと言っては差障りが有るものでしょうか。いいえ差障り等有りませんよね。

　　　意中の人の所から伺えませんよなどと言って来たので

1329
「勿来とは誰をか云ひし言はねども、心に据える関とこそ見れ」
名こそ（勿来）とは誰のことを言っているのでしょうかとは言葉にしないけれども、しっかりと心に留めておく関だと心得なさいよ。

　　　ある場所へお参りするという事で、掃除する男性
　　　達が其の儘で来て、扇と数珠には不案内なので

1328
（人としてちゃんと伝えるべき処ですので待っている内に伝えてくれませんか、雨が降るからと言ってここへ来ることに何か差障りが有るものでしょうか。いいえ差障り等有りませんよね。）との意で、私の癇に障っちゃいましたよと詠んだ歌。

ものを；…ので。…だから。ここでは順接の確定条件を表す。

物かは；…ものであろうか、否そうではない。形式名詞「もの」に係助詞「かは」。活用語の連体形に付き、ここでは反語の意を表す。

1329
（勿来の関じゃないですが名こそとは誰のことを言っているのでしょうかなどと聞くことはしませんが、貴方のことだとしっかりと心に留めて置き、行き来することの出来ない関所だと心得なさいよ。）との意。

あふぎ
扇；扇子。平安時代では男女の礼装用に用い、檜の薄板を糸で綴じて作った。檜扇。
ずず
数珠；仏を拝するときに両手で揉むもので、通常は百八の珠を繋げて輪としたもの。また数を数える玉としても使用した。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　う
え行かず；行く事が出来ない。下二段活用動詞「得」の連用形「え」の副詞化したものに打消しの表現を伴った「え…ず」で不可能の意を表す。

　なこそ
勿来；歌枕。勿来の関のことで、現在の福島県いわき市に有った古い関所。常陸の国と陸奥の国の国境に設けられていた。古代の奥羽三関（他は白河関・念珠関）の一つ。勿来は夷人来るなかれの意とも波越の意とも云われる。

もの　まうづ
物へ詣；神社・仏閣へお参りする事。また、ある場所へ参上する。

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清書用　臨書用紙
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第二十二紙（一葉）茶色（薄黄茶色）	清書用　臨書用紙　茶色（薄柿茶色）２５.０ｃｍｘ３６.４ｃｍ　　　　　　　　宝唐草解説及び使用字母へ柄拡大へ右半葉２０.６ｃｍｘ１２.６ｃｍ
続集下巻　乙類断簡２０　歌５０（1328）歌５１（1329）歌５２（1330の詞書のみ）。	（　）内の歌番号は、岩波文庫本和泉式部集による通し番号

1328 ひとならばいふべきものをまつほどに、あめふるとてはさはるものかは　　　ひとのもとよりえいかずなどいひたるに 1329 なこそとはたれをかいひしいはねども,心にす〇るせきとこそみれ　　　ものへまうづとて、さふじするをとこ　　　たちながらきて、あふぎとずずと〇とし	1328 悲止那良盤以婦部支毛乃越万徒保止耳、安免布流東弖波佐者留毛乃可盤　　　悲止乃母登夜利盈以可春那止以悲太流耳 1329 奈己所止盤太礼乎可以悲之以盤禰止毛,心仁春□ 　留世支東己所美礼　　　毛能部万宇徒東弖、左布之春留遠登己　　　多遅奈可良支弖、安不支止春々止□止之
歌番号は岩波文庫本和泉式部集による通し番号ものへまうづ；物詣=神社、仏閣へお参りすること。さふじ；掃除あふぎとずず；扇と数珠	ゑ　　　　　う歌1329の□は「衛」か或は「宇」か。歌1330の詞書の□は「越」か「宇」か「弖」は「天」とすることもあり。「礼」は「禮」とすることもあり。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ページ