寸松庵(寸松庵色紙・古今和歌集抄本) 巻五・秋下      戻る 寸松庵色紙 一覧へ
 具引唐紙『抱鶴唐草』(薄渋黄土色)「夕月夜」   田中親美氏作模写本

寸松庵色紙は古今和歌集の四季の歌を精撰して書写したもので、佐久間将監が京都大徳寺の離れ寸松庵で愛玩していた事により、寸松庵色紙と名付けられたもの。元々堺が繁盛していた頃に南宗寺の襖に三十六枚の色紙が貼られており、その内の十二枚を寸松庵に譲り受けたもの。残りの幾つかは烏丸光弘が譲り受けている。
書風は関戸古今集のそれとよく似ている。同筆とはいかないまでも年老いてからの物か、或は行成様の墨蹟を手本とした世尊時流の誰かの手に因る物と思われる。残っている墨蹟ははるかに少ないものの、使用時母もほぼ同じことからも同門の書と窺える。




                かな                                水色文字は使用時母

寸松庵色紙 秋下 『ゆふづくよ』 (薄渋黄土色) 拡大
12.7cmx13.0cm

    つらゆき

  ゆふづくよ をぐら

  の山に なくしかの、

  こゑのうちにや 秋

    は く る ら ん


      
使用時母

      川良由支

  遊不川久與 遠久良

  乃山爾 那久之可乃、

  己恵乃宇知爾也 秋

     盤 久 留 良 无

                           紀貫之
312
 夕月夜小倉の山に鳴く鹿の、声のうちにや秋は来るらん。

夕月の見える日暮れ頃に小倉山の方で鹿の鳴く声が聞こえてくると、その内に秋は遣って来るでしょう。



小倉山;紅葉の名所で、京都市の嵯峨西部に位置する山、保津川を隔てて嵐山を見る。
或は奈良県桜井市にある山。古来より鹿が和歌に詠まれる。





薄渋黄土色具引唐紙・白雲母『抱鶴唐草』(全面)

 漢字の意味の通じるものは漢字で表記
 一行は一行に、繰返しは仮名で表記
 「與」は「与」とすることも。

参考;元永古今集に納まる詞書
「九月つごもりに大井にて」

指すと思われる地域
「大井川;丹波山地から亀岡盆地を経て京都盆地北西部の保津峡を通って嵐山に流れる川」(大堰川)


歌313と続きで同柄の為元は一枚の料紙であったと思われる。


写真では確認し辛いが、抱鶴が施されている。

薄渋黄土色;白(素色)・薄茶などとすることも。
 右の写真はこの箇所に該当する清書用臨書用紙(左が上製)
これまでの清書用には入れられていない柄(上製のみ)
(普通清書用では薄渋黄土色柄無の物を利用してください、右側)
     上製       普通清書用
 寸松庵色紙 具剥奪唐紙(薄渋黄土色)『抱鶴唐草』 清書用 臨書用紙 拡大へ 寸松庵色紙 具剥奪紙(薄渋黄土色) 清書用 臨書用紙 拡大へ
清書用 薄渋黄土色具剥奪唐紙
白雲母『抱鶴唐草』
 



当初の粘葉本として書かれていた状態

 
寸松庵色紙 秋下 『道しらば』 (薄渋黄土色) 拡大へ寸松庵色紙 秋下 『ゆふづくよ』 (薄渋黄土色) 拡大
 当初の粘葉本として書かれていた状態

古今和歌集としての歌の続きから
元は一枚の料紙としてこの状態に
なっていたと思われる。


同様に他の左右一紙と思われる部分
       歌313                 歌312     唐紙は共に「抱鶴唐草」
色の違いは保存状態による経年変化の差
と思われる。


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