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見返し |
江戸初期書写
金銀下絵和漢朗詠
もたひ ほとり はし しょう び
『甕頭竹葉經 春熟階底薔』 甕の頭の竹葉は春を経て熟す、階の底の薔(薇は夏に入って開く)
池の間近にある竹の葉は春を越してから黄葉する、階段の下の野ばらは夏になると(好い香りを放って)咲き出す。
(瓶の中の酒は春を越して熟成する、熟成した酒は夏の頃に芳香を放ち焼尾の祝宴が開かれる。)
焼尾;中国では進士及第の時に開く祝宴があり、新しく官職に就いた時に開く祝宴。
見返し料紙 上部金砂子 金描草木図に金泥霞架け(中央やや下側にも部分ぼかし状に金砂子が振られています。)
書出し金泥花木図部分(金泥雲界の上側には柳と下草、下側の花木の種類は不明或は野イバラか、その下は葦の葉か。) |
甕;酒や水を入れる器
竹葉;竹の葉。又、酒の異称・酒筒。 |
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江戸初期書写
金銀下絵和漢朗詠 第一紙
147
『甕頭竹葉經 春熟階底薔 薇入夏開』(白楽天) 甕の頭の竹葉は春を経て熟す、階の底の薔薇は夏に入って開く
149
『わが屋どのかき ねやはるを へだつらん (なつきにけりと みゆるうのはな)』
王可屋止乃加幾 禰也波留越 遍多川良无 奈川幾爾介利登 美由留宇乃者那
我が家の垣根は季節を隔てているのでしょうか、生垣の向こう側では如何やら夏が訪れているようですよ。真っ白な卯の花が咲いているのが見えますのでね。
吾が屋戸の垣根や春を隔つらん、夏来にけりと見ゆる卯の花(源順)
緩やかに大きく垂れさがる柳の枝と横に迫出した木の枝が金泥で描かれ二つの間に霞雲が横たわっています。左下側の霞は湖面の様にも見えます。
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江戸初期
巻子表紙 |
江戸初期書写
金銀下絵和漢朗詠 第二紙
(わが屋どのかき ねやはるを) へだつらん なつきにけりと みゆるう のはな
王可屋止乃加幾 禰也波留越 遍多川良无 奈川幾爾介利登 美由留宇 乃者那
我が家の垣根は季節を隔てているのでしょうか、生垣の向こう側では如何やら夏が訪れているようですよ。真っ白な卯の花が咲いているのが見えますのでね。
152
『空夜窓閑 蛍度 後 深更軒白(月明初)』(白楽天) 空夜窓閑にして蛍度って後、深更軒白し月の明らかなる初
巻子本-金銀下絵。金泥の濃淡で描かれているのが柳の木、その奥金銀の濃淡で描かれている小灌木は臭木でしょうか。左上側には藤の花も見えます。 |
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江戸初期書写
金銀下絵和漢朗詠 第三紙
『(空夜窓閑蛍度) 後 深更軒白 月明 初』(白楽天) 空夜窓閑にして蛍度って後、深更軒白し月の明らかなる初
154
『ほととぎす鳴や 五月のみじ か よも ひとりしぬれば あかしかねつも』
本止々幾寸鳴也 五月乃三之 可 與毛 悲止利之奴連波 安可之可年川毛
杜鵑鳴くや五月の短夜も、一人しぬれば明かし兼ねつも (柿本人麻呂)
時鳥が鳴くと、いくら(初夏)五月の短い夜だとしても、一人きりで寝るとなれば夜を明かすのを躊躇してしまうよ。(杜鵑の鳴声は古来より恋心を掻き立ててしまうので、とても一人だけでは夜を明かしきれませんよ。)
参考 ほととぎす来鳴くさつきの短夜も、・・・(万葉集)
右上に金泥の濃淡で描かれているのが藤の花、そして左下側に描かれているのが秋の草(藤袴他)また下側中央付近には水草なのかあるいは地這性の雑草なのか判別の難しいものも有ります。
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江戸初期書写
金銀下絵和漢朗詠 第四紙
164
『池冷水無 三伏夏 松高風有 一聲秋』(源英明)池冷ややかにして水に三伏の夏無し、松高うして風に一声の秋有り
166 ・ ・
『したくくる水に 秋こそかよふらし むすぶいづみの 手さへすずし き』
志多久々流水爾 秋己楚加與不良之 武寸不以川三乃 手左部寸々之 幾
したくくる水に秋こそ通うらし、掬ぶ泉の手さへ涼しき
大地の下を潜っている水には如何やら既に秋が通っているようですよ、掌ですくう泉の水はもうその冷たさを伝えてきますので。
参考 したくくる水に秋こそかよふなれ、むすぶいずみの手さへすずしき (中務)
三伏;夏の酷暑の期間のこと。夏至後の第三の庚の日を初伏、第四の庚の日を中伏、立秋後の第一の庚の日を末伏、合て三伏です。極暑の候を云う時候の挨拶。
右下には金泥で秋草の野原が、左上には葉の落ちた冬木立が描かれ、中央付近には枯跡でしょうか株立ちの様子が見てとれます。
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掬ぶ;水などを手ですくう |