十五番歌合　（昭和七年模写巻子本）

　　　　　　　　　　　　　　　　清書用　臨書用紙　　　　　　　　　　　　　　　　　

十五番歌合せ　昭和7年模写巻子本
伝藤原公任筆とされる『一番歌』の組み合わせで、歌人三〇名の歌各一首を組み合わせて十五番の歌合に仕立てた巻子本です。宮本竹頸氏は筆者をその性格と書風から世尊寺伊房であろうと類推しています。当時の仮名としては大きな文字で、力強さが残る書蹟です。
選者はもちろん藤原公任で、自身の評価基準によって撰ばれた和歌に対する解釈を歌合の形によって示したものと想像されます（当時の能書きと称される者たちの間で競い合っていたのではないかと思われます）。
国宝の『十五番歌合』（尊経閣文庫蔵）一巻が有りますが、平安時代の古筆で八首のみで残りは欠本です。残りは数点の断簡として在ったり、欠損したりしています（何処かの蔵に眠っているのかも知れません）。
別本の料紙には梅折枝文様、花菱文様、紅葉文様、波文様の四種類の文様を雲母引きした上に、金銀の砂子、切箔、野毛を霞状に散らす装飾料紙が用いられており、裏にも霞引（飛雲）銀箔散がみえ、華麗な料紙となります。また伝本がいくつも存在しており、写真の模写本もその中の一点前田家本に関戸家、藤田家、松方家所蔵の各一首計三葉を加えて模倣したものです。


昭和７年模写巻子本


十番・九番	二番・一番	九番・八番	七番	七番・四番

十一番

ハクビ製　清書用　臨書用紙　『十五番歌合』　（10色10柄22枚入り）　

1色目　2枚	２色目　2枚	３色目　2枚	４色目　半葉2枚	５色目　2枚	６色目　2枚
ｺｹﾞ茶色丸獅子唐草（具引唐紙）	淡茶色菱唐草（具引唐紙）	緑ｸﾞﾚｰ色丸獅子唐草（具引唐紙）	古代茶色蓮唐草（具引唐紙）	蜜柑茶色大丸唐草（ローセン）	緑ｸﾞﾚｰ色丸獅子唐草（ローセン）
７色目　片葉2枚	８色目　2枚	９色目　2枚	１０色目　2枚	１１色目　2枚
渋ｵｰﾄﾞ色蓮唐草（具引唐紙）	香色丸獅子唐草（具引唐紙）	ｵｰﾄﾞ色菱唐草（具引唐紙）	丁字色蓮唐草（具引唐紙）	蜜柑茶色大丸唐草（ローセン）

清書用臨書用紙の写真をＵＰしました。

清書用臨書用紙『十五番歌合』

練習用臨書用紙『十五番歌合』

　正規品２２枚入になります

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十五番歌合

　清書用１冊１３６４０円（税込）

　正規品４４枚入になります

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十五番歌合

　練習用１冊４６２０円（税込）

資料館限定販売となりますが、一部やや難ありの品・清書用２２枚入り６，８００円（税込）。練習用の場合は44枚入り２，3００円（税込）。色柄には偏りが御座います。
数に限りが御座いますので、お越しの祭には予め御問合わせ頂く事をお勧め致します。
正規品の清書用・練習用については､お近くの書道用品店でお求めになれます｡
正規品の価格についてはこちら

前十五番歌合	十五番歌合使用字母茶字は本巻子本記載　　　□は脱字と思われる部分。	前十五番歌合・解釈
一番　　　　　紀貫之　さくら散る　木のした風は　寒からで　　　　　　空に知られぬ　雪ぞ降りける　　　　　　　　　凡河内躬恒　わが宿の　花見がてらに　来る人は　　　　　　散りなむのちぞ　恋しかるべき＊2 　　二番　　　　　素性　今こむと　言ひしばかりに　ながつきの　　　　　　ありあけの月を　待でつるかな＊3 　　　　　　　　　伊勢　散り散らず　きかまほしきを　ふるさとの　　　　　　　　花見てかへる　人もあはなむ　　三番　　　　　在原業平　世のなかに　絶えて桜の　なかりせば　　　　　　春のこゝろは　のどけからまし　　　　　　　　　　僧正遍昭　末の露　もとの雫や　世のなかの　　　　　　遅れ先だつ　ためしなるらむ　　四番　　　　　壬生忠岑　春たつと　いふばかりにや　み吉野の　　　　　　山もかすみて　今朝は見ゆらむ　　　　　　　　　大中臣能宣　千歳まで　ちぎりし松も　けふよりは　　　　　　君にひかれて　よろづ代やへむ＊4 　　五番　　　　　源公忠　行きやらで　山路暮らしつ　ほとゝぎす　　　　　　　　いまひと声の　聞かまほしさに　　　　　　　　　壬生忠見　さ夜ふけて　寝覚めざりせば　ほとゝぎす　　　　　　　　　人づてにこそ　聞くべかりけれ	一番　　　　　　貫之　散久良遅留　故能之多閑勢波　左武可良亭　　　　　　所羅爾志良禮奴　遊幾曾布李気留　　　　　　　　躬恒　和可也止乃　者那美可天良耳　久留比止波　　　　　　　知利奈武乃知曾　己比之可留部幾　二番　　　　　　素性　以末己武止　伊比之者可利耳　奈可徒幾乃　　　　　　安梨阿計能川幾遠　末知天川留可那　　　　　　　　　伊勢　遅利知羅春　幾可満保之喜遠　不留散止能　　　　　　　者難美天閑部流　比登裳安者奈牟　　三番　　　　　業平　與能奈可耳　堂盈轉佐久良乃　難可李勢波　　　　　　　者留農己々呂盤　能登希閑良末之　　　　　　　　　遍昭　春衛能川由　毛登乃之都久也　餘能奈駕能　　　　　　　遠具禮佐幾多津　堂面志難留良牟　四番　　　　　　忠岑　者留堂川登　以布者閑里爾也　美與之能々　　　　　　　也萬毛可須見天　気左頗美遊良無　　　　　　　　　能宣　知止世末天　知幾梨之末徒毛　計不與利波　　　　　　　幾見爾比可禮天　與呂徒與也部武　五番　　　　　　公忠　遊幾也良天　夜末知久羅之川　報登々幾春　　　　　　　移萬比止故恵乃　幾閑末寳之乍爾　　　　　　　　　忠見　散與布気天　禰左女左里世波　保登度幾數　　　　　　　悲度都天爾故所　幾久弊可利希禮	一番桜の花が散っているよ、木の下を吹く風は冷たいのだろうね、空には知られることの無い雪が降っているよ。（桜の木の下では花吹雪が舞っていますよ！）我が家に花見を兼ねて訪れる人は、花の時期だけではなく散った後ににこそ訪ねて来るのが当然ですよねえ。二番今から行きますよと（貴方が）言ったばかりに、陰暦九月の長い長い夜を待ち明かして、（私は貴方の代わりに）明け方の月の出を待ってしまいましたよ。何か月も男性が訪れるのを待っていて秋も暮れて長月になり、然も月下旬の有明の月の頃に成って終いましたよ！。とのつれない待ちぼうけの意も込められている。散っているのだろうかまだ散っていないのだろうかと聞きたかったのに、（如何した事か）故郷の花見をして帰る人にも逢うことも無いのですよ。三番世の中に全く桜が無かったとしたら、春を過ごす人の心はのんびりとして落ち着いていられたでしょうにね！。草木の葉末の露と根元にある雫、遅速はあるが遅かれ早かれ何れは無くなって終う儚い物ですよ（人の命は）！と云う世の中の例えなのですよ。四番春になったとでもいうのだろうか、吉野の山も今朝では霞んで見えることよ。千年までもと約束した松も今日からは、君に心惹かれて何時までも続く世を過ごそうと思いますよ。子日の行事「小松引」を念頭に置いた歌。五番思い切って行くことも出来ないで、山中に暮らしておりますよ。もう一度ホトトギスの鳴く声を聞きたいがゆえにね夜も深まって寝覚めることも無ければホトトギスの鳴く声は間接的にこそ聞き及ぶべきだったのですよ。
六番　　　　　　藤原兼輔　人の親の　こゝろは闇に　あらねども　　　　　　　子をおもふ路に　惑ひぬるかな　　　　　　　　　藤原朝臣　逢ふことの　絶えてしなくば　なかなかに　　　　　　　　人をも身をも　うらみざらまし　七番　　　　　　紀友則　夕されば　佐保の川原の　川霧に　　　　　　　友まどはせる　千鳥なくなり　　　　　　　　　藤原清正　天つ風　ふけ井の浦に　ゐる田鶴の　　　　　　などか雲ゐに　帰らざるべき　八番　　　　　　小野小町　色見えで　うつろふものは　世の中の　　　　　　　人のこゝろの　花にざりける　　　　　　　　　清原元輔　秋の野の　萩のにしきを　わが宿に　　　　　　　鹿の音ながら　うつしてしがな　九番　　　　　　坂上惟則　み吉野の　山のしら雪　積もるらし　　　　　　　ふるさと寒く　なりまさるなり　　　　　　　　　藤原元真　年ごとの　春の別れを　あはれとも　　　　　　　人におくるゝ　人ぞ知りける　十番　　　　　　藤原仲文　ありあけの　月の光を　待つほどに　　　　　　　わが夜のいたく　更けにけるかな　　　　　　　　　菅原輔昭　まだ知らぬ　ふるさと人は　けふまでに　　　　　　　　来むと頼めし　われを待つらむ	六番　　　　　　兼輔　悲登能於也乃　故々呂波也微爾　亜良年止毛　　　　　　　　許遠於毛布美遅耳　末度飛奴留閑那　　　　　　　　　朝臣　安婦故度能　當要天之奈久頗　難可々々耳　　　　　　　　悲止遠毛美遠母　有良微左羅末之　七番　　　　　　友則　　　　　　　　遊不散禮波　散保乃可□良乃　可者幾里耳　　　　　　　　止裳末止波世留　知止利奈久那里　　　　　　　　　清正　安末徒可世　布計為乃宇良仁　為留多川乃　　　　　　　　奈止可久毛為仁　可部良佐留部幾　八番　　　　　　小野小町　以呂美盈天　宇川呂布毛能波　與能奈可能　　　　　　　　比東乃己々呂乃　者那耳散里介留　　　　　　　　　元輔　安幾能々乃　者喜能爾之起遠　和可夜徒兒　　　　　　　　志可農年難可羅　宇都之天事閑奈　九番　　　　　　惟則　美與之乃々也末能之良由幾　川裳留良之　　　　　　　　不留佐止散無久　奈里末左流奈里　　　　　　　　　元真　東之己止乃　者留乃和可禮遠　安者禮止毛　　　　　　　　比止ニ於久流々　悲登曾之利介留　十番　　　　　　仲文　安里阿介乃　徒幾乃比加李遠　末徒保登耳　　　　　　　　和可與能以多久　布計爾計留可那　　　　　　　　　輔昭　末堂之良奴　布留佐登比止波　計不末天爾　　　　　　　　己武止太乃女之　和禮遠末川良無	六番人の親として心が闇の中に有るわけではないのだが、子を思うあまりに理性を失って戸惑ってしまいましたよ。この世に逢うという事が全く無かったならば、却ってあの人の事をも自分自身をも恨まないのでしょうにね。（つれないそぶりを続けて逢ってはくれない人も、それを辛く感じてしまう自分をも、恨みに思うやるせなさ）（天徳四年内裏歌合の歌、未逢恋）七番夕方になると佐保川の河原に霧が立ち込めて、友の心を動揺（ざわつかせる）させるかの様に多くの千鳥が鳴いているよ。（佐保の河原に川霧が立ち込めて姿は見えぬのに多くの千鳥がざわざわと鳴くものだから、共に心がざわついてしまって動揺してしまいましたよ。）との意。天上の風よ噴井の浦にいる鶴は、どうして空の彼方に帰らないのだろうか（いや帰るべきであるよ。）八番色に現れないで変わりゆくものとしては、世の中の人の心に咲く花であったのだなあ！秋の野に咲く萩の花の彩を我が家の庭にも、鹿の鳴声と共に移したいものだなあ！。九番吉野山に白雪が降り積もるようですよ、麓の里ではいよいよ寒さが増してくるのでしょうね。年毎の春の別れをしみじみと深く心を惹かれるように感じようとも、去り行く人に対して惜しみながら見送る人だけが経験できる感情なのですよ。十番（我が世の）夜明け時の月の輝きを待っている間に、私の代は随分と盛りを過ぎててしまったものよ。まだ知らないであろう。故郷の人は今日までに来るであろうとあてにさせていた私を、（今も）待っているのだろう。
十一番　　　　　斎宮女御　琴の音に　峰の松風　かよふなり　　　　　　　いづれの尾より　しらべそめけむ　　　　　　　　　小大君　岩ばしの　夜の契りも　絶えぬべし　　　　　　　あくるわびしき　かつらぎの神＊1 　十二番　　　　　傅殿母上　なげきつつ　ひとりぬるよの　あくるまは　　　　　　　いかにひさしき　ものとかはしる　　　　　　　　　師殿母上　わすれじの　ゆくすゑまでは　かたければ　　　　　　　けふをかぎりの　いのちともがな　十三番　　　　　重之　やかずとも　くさはもえなむ　かすがのを　　　　　　　ただはるのひに　まかせたらなむ　　　　　　　　　順　みづのおもに　てるつきなみを　かぞふれば　　　　　　　　こよひぞあきの　もなかなりける　十四番　　　　　兼盛　かぞふれば　わがみにつもる　としつきを　　　　　　　をくりむかふと　なにいそぐらむ　　　　　　　　　中務　うぐひすの　こゑなかりせば　ゆききえぬ　　　　　　　やまざといかで　はるをしらまし　十五番　　　　　人麿　ほのぼのと　あかしのうらの　あさぎりに　　　　　　　しまがくれゆく　ふねをしぞおもふ　　　　　　　　　赤人　わかのうらに　しほみちくれば　かたをなみ　　　　　　　　あしべをさして　たづなきわたる	十一番　　　　斎宮女御　古登乃禰耳　美禰乃末川加聲　駕與布奈里　　　　　　　以都禮能遠夜里　志良部曾女介無　　　　　　　　小大君　以者々之能　與留乃遅幾里毛　當要奴弊之　　　　　　　亜久流王比之幾　可川羅喜能我微　十二番　　　　傅殿母上　奈気幾川々　悲止里奴留與能　安具留末波　　　　　　　意可耳比斜之喜　毛能登加者志流　　　　　　　　師殿母上　和春禮之乃　遊久寸衛末亭波　我堂気麗者　　　　　　　希不遠可幾里能　移乃知止毛閑那　十三番　　　　重之　耶閑数登母　久散盤裳要奈武　可春賀能乎　　　　　　　當々者留乃比耳　萬可世堂良難無　　　　　　　　順　美都能於毛爾　轉留川幾那見遠　可處布禮者　　　　　　　　己餘飛曾亜幾能　毛難可那利気留　十四番　　　　兼盛　閑所不禮者　和可美耳川毛留　登之都幾遠　　　　　　　遠久理武可婦止　難耳以處具良無　　　　　　　　中務　雲久悲春乃　故衛奈可里勢波　遊幾々要奴　　　　　　　也末散登以閑天　波留遠之羅末之　十五番　　　　人麿　保能保能登　安可之乃有良乃　阿斜幾里耳　　　　　　　志萬可久禮遊久　不禰乎之所於毛布　　　　　　　　赤人　和駕能有羅爾　之保美地具禮波　可多遠難見　　　　　　　　安之弊乎左之亭　多都奈幾王堂留	十一番琴の音色に峰を吹き抜ける松風の音が調和しているようだ、どこの山の尾根から奏で始めたのだろう。岩橋の夜の約束もきっと絶えてしまうに違いないでしょう、翌日の如何にも辛く苦しそうに見える様子はまるで葛城の神でしょうね。（葛城山と吉野金峰山の間に岩橋を架けようとしたが、容姿の醜さを恥じて夜だけ動いたため完成しなかった。という逸話）十二番悲しみと共に一人で寝ている夜の明ける間での間は、どんなにか長い時間であるという事かは知って居る心算ですよ。忘れまいとおっしゃるその言葉の将来のことまでは、当てに出来そうにもありませんので今日を最後の命であってほしいものですね。〔儀同三司の母〕十三番（わざわざ火をつけて）焼かなくても草はちゃんと燃え（萌え）ますよ、春日野をただ春の火（陽）に任せておいたら良いのですよ。（野焼きをしなくともちゃんと新芽は生えてきますよ。ただお天道様の火に任せておけば。）〔壬生忠岑〕水面に映る月の姿を眺めながら月齢をかぞえてみると、今夜はちょうど中秋の名月（十五夜の満月）であることよ。十四番指折り数えてみると私自身が重ねてきた長い歳月を過ごし、これから先を待ち受ける時、何を急ぐことが有ろうか。仮に鶯のさえずりが無かったならば、まだ雪の残っている山里でどうして春を知る事が出来ましょうか。十五番ほんのりと明けて行く明石の浦の朝霧の中に島陰に隠れるように見えなくなって往く舟の事をしみじみと考えてしまいましたよ。和歌の浦に潮が満ちて来れば干潟が無くなって終うので、蘆辺を目指して鶴が鳴きながら飛んでゆきましたよ。

此処に記載の字母は、茶字は本巻子本より、黒字のものは本巻子本と共に収められていた、中院通村による江戸時代初期の補筆によるものです。（尚、前田家の８首は通村の補筆２２首を加えて、完本に仕立てられています。）
以下の３首は通村による補筆よりのもの。

前十五番歌合別本	十五番歌合別本使用字母
一番　　　　　　　　　凡河内躬恒　わが宿の　花見がてらに　来る人は　　　　　　散りなむのちぞ　恋しかるべき＊2-1 　　二番　　　　　素性　今こむと　言ひしばかりに　ながつきの　　　　　　ありあけの月を　待出でつるかな＊3-1 　　四番　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　能宣　千歳まで　限れる松も　けふよりは　　　　　　君にひかれて　よろづ代やへむ＊4-1	一番　　　　　　　　躬恒　和可也登乃　者那美可天羅爾　久留悲止波　　　　　　　知里奈無能遅所　許悲之駕留弊起　二番　　　　　　素性　以末故無止　意比之者閑利爾　難可都幾能　　　　　　安里阿気乃川幾乎　萬知移天津留可那　四番　　　　　　　　　能宣　知止世萬天　可幾麗留末津毛　希不餘利波　　　　　　　幾美爾比閑禮亭　與呂都餘也邊無	「まちてつるかな」の文字を脳内処理する際、「て」を意味の通じる漢字「出」と置き換え、再び使用字母を選ぶ仮名に変換する際に意図せずして「いで」と読み違え筆の動きが「移天」となってしまったものか。数え尽せないほどの年までと期限を定められた松も今日からは、君に心惹かれて何時までも続く世を過ごそうと思いますよ。子日の行事「小松引」を念頭に置いた歌。

＊１　　　　　　　かづらきのかみ　　　　　　　　　　　ひとことぬしのかみ　えんのおづの
かつらぎの神（葛城神）；葛城山にいた一言主神。役小角(役行者)の命により葛城山と吉野金峰山の間に岩橋を架けようとしたが、醜い容貌を恥じて夜中のみ働いたために完成を見なかった。

＊2
関戸家蔵　＊2-1、通村補筆分とは字母が異なる。

＊3
藤田家蔵　類従本と同じ　＊3-1、彰考館本に同じ

＊4
松方家蔵　深窓秘抄と同じ　＊4-1、彰考館本、類従本他諸本に同じ

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