伊勢集 具引唐紙『変り小菊唐草』(清書用臨書用紙)    戻る 『三十六人集』 粘葉本 一覧へ 戻る 『伊勢集』  一覧へ

伊勢集第二十二紙料紙、具引唐紙『変り小菊唐草』の部分の清書用臨書用紙になります。伊勢集そのものには裏面にも歌が書かれておりますが、表面のみの加工ですので表面のみの使用と御承知おきください。裏面にも墨入れをすることは可能ですが、裏面を使用するには力量が必要となります。裏面の歌の臨書をご希望の場合には同じ柄をご用意ください。

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                たんぽぽからくさ
具引唐紙 変り小菊唐草(蒲公英唐草)
  伊勢集 書



伊勢集 具引唐紙 『小菊唐草』拡大 具引唐紙
『変り小菊唐草』
(蒲公英唐草)

花鳥折枝金銀袷型打
 
 菊花部分 具引唐紙 花鳥折枝金銀袷型打  
小菊の花を包込む様に茎葉で唐草を描いてあるので、小菊唐草と言われております。光の当たり具合で柄の見え方が変化します。
 伊勢集臨書用紙


伊勢集 具引唐紙 『小菊唐草』拡大
 具引唐紙
『変り小菊唐草』
(蒲公英唐草)

花鳥折枝金銀袷型打
 左上陰部分 陰に為り光の反射の少ない様子
金銀袷型打も光を失い鈍い色合いです。
 


伊勢集 『具引唐紙』(小菊唐草) 解説及び使用字母 
 伊勢集 書  左側が変り小菊唐草の項(第十二紙)、右側の項は破り継『山』(第五紙)の裏側です。
《前項参照》  写真では左右両項で歌は続いておりません。
 両面加工の料紙を使用して綴じた帖です。
                  田中審美氏模写本

歌番号は伊勢集での通し番号                              青色文字は
使用字母          解釈(現代語訳)

   よろこびけりつかうまつる。みやすど
   ころも后にゐたまひぬ宮をかつら
   といふ所におきたてまつりてみづから
   はきさいの宮にさぶらふあめのふ
   る日うちながめておもひやりたるを
   みや御覧しておほせらる

22
 月のうちに かつらの人を おもふとや
 あめになみだの そゐてふるらむ

   御かへし



82
 (みそぎつつ おもふことをぞ いのりつる)*1
 やをよろづよの 神のまにまに

   七月七日たらゐにみづいれて影
   みるところ

83
 めづらしく あふたなばたは よそ人も
 影みまほしき 物にざりける

   まつのすゑにつるたてり
84
 あらはなる かたにしもすむ あしたづは
 ちよみむことの 心なるべし

   これもおなし宮の御賀大きおとどの

  (まつりたまふすみのえの松みる所)



     與路己比希利川可宇末川留美也須止
     己呂毛后爾為多万比奴宮遠可川良
     止以不所爾於支多天末川利天美川可良
     者支左以乃宮爾左不良婦安免乃不
     類日宇知奈可女天於毛比也利多類遠
     美也御覧之天於保世良流

22
 月乃宇遅爾 可川良能人乎 於毛布止也
 安免爾那美多能 所為天不留良无

     御可部之



82
 (美所支川々 於毛婦己止遠楚 以乃利川類)
 也乎夜路徒與乃 神能万爾々々

     七月七日太良為爾美徒以礼天影
     美類止己呂
83
 女川良之倶 安不堂那者太者 與楚人毛
 影美末保之支 物爾左利計留

     末川能春恵爾川類多天利
84
 安良者那類 可堂爾之毛春武 安之太川者
 千與美武己止能 心奈留部之

     己礼毛於奈之宮乃御賀大支於止々能

    (末川利太末婦春美乃衣能松美留所) 


「礼」は「禮」とすることも。
「與」は「与」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。
( )*1は本来の前項にあり
( )は次項にあり


          現代語訳                     解釈

   お喜び申し上げ為されていた。御息所も
   后の御所にお住まいになられていない宮を桂
   と云う所にお預け申し上げ為されて、自らは
   后の宮にお仕えする雨の降る日
   物思いに耽りながらぼんやりと見やって遠くに思いを馳せていると
   宮様がご覧になられておっしゃられた

22
「月の内に桂の人を思ふとや、雨に涙の添いて降るらむ」
今月中ずっと桂に居る人のことを案じていると云うのですか、まるで雨と一緒に貴方の涙も寄り添って降っているようですよ。


   お返し

   この間削除されております。

82
「禊つつ思ふ事をぞ祈りつる、八百万代の神のまにまに」
心身を清めながら願い事を祈っておりました、何時までも続く時代として神様の思し召しのままに。


   七月七日、たらいに水を入れて(月の)影を
   見る処

83
「珍しく逢ふ七夕は他所人も、影みまほしき物にざりける」
珍しく見る事が出来る七夕は他所の人も、その姿に会いたいと思うものであったのだなあ。


   松の梢(枝先)に鶴が立っている
84
「顕なる方にしも住む葦田鶴は、千代見むことの心なるべし」
よりによって良く見える方に住んでいる鶴は、千年も見ていられる事の意味(証)であるに違いない。


   これも同じ宮のお祝いの賀に太政大臣の
   (お差し上げなさった住江の松を見る所)









22
(今月中ずっと桂に置いて来た人のことを心配しているお心算ですか、まるで雨までもが貴方の涙の様に止めどなく降っているように思われますよ。)との意を添えて詠んだ歌。


実際にはこの間も存在しております。


82
(皇后、五十の賀の祝に長寿を祝って歌った歌)

まにま
随に;事の成り行きに任せる様。

七夕に空を見上げてばかりだと首が痛いのでたらいに水を張って天の川の様子を写し込んだもの(水鏡)。

83
(曇りで見えないことも多い七夕ではあるが、今宵は良く見える。たらいに他所の人の影が見えたのか、或は遠くにもたらいが見えたのか。皆同じなのだなあ!)とハッと気づいて詠んだ歌。


84
(あのように目につく様に姿を現している鶴は、千年もの長きに渡って目にする事への証であるのだろう。)との意を詠んだ歌。

しも;よりによって。…に限って。特にその事項を取り立てて示す意を表す。強意の副助詞「し」に係助詞「も」の付いた語。

なるべし;…であるに違いない。断定の助動詞「なり」の連体形「なる」に推量の助動詞「べし」の付いた形。

おおきおとど
太政大臣;律令制での太政官の最高位にある官職。




みやすどころ
御息所;元の意味は天皇の御休息所。天皇の御寝に侍した女御・更衣その他の女官のことを云う。

おおきおとど
太政大臣;律令制での太政官の最高位にある官で、職掌はなくある種名誉職。適任が無ければ欠員。
おおきおおいどの、おおいもうちぎみ、おおきおおいもうちぎみ、おおいまつりごとのおおまえつぎみ、などとも呼ぶ。


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伊勢集 手本用

伊勢集 『具引唐紙』(小菊唐草)  解説及び使用字母 
 伊勢集 書  右側が変り小菊唐草の項(前項の裏側)、左側の項は破り継『天の川』の裏側です。
 両面加工の料紙を使用して綴じた帖です。          
次項参照   田中審美氏模写本

歌番号は伊勢集での通し番号                             青色文字は使用字母           解釈(現代語訳)

   まつりたまふすみのえの松みる所

85
 すみのえの はまのまさごを ふむつるは
 ひさしきあとを とむるなりけり

   紅葉あるいへにあるじさけのみし
   たるところ
86
 まとゐする みにちりかかる もみぢばは
 風のかつくる にしきなりけり

   やうぜい院のみかどの七十の御賀の

   うちみだりのはこにつるかめ
   きくなどまじりたり


87

 露かかる きくのなかなる あしたづは
 いまいくたびの ちよかそふらむ

   式部卿宮の前栽あはせに草の
   かう

88
 草のかそ いろかはりぬる しらつゆは
 こころおきても おもふべきかな

   りむたう



     末川利太末婦春美乃衣能松美留所

85
 寸美乃衣能 者万能末佐己遠 不武川類盤
 飛左之支安止乎 止武類奈利希利

     紅葉安留以部爾安流之左計乃三之
     太類止己呂

86
 末止為春類 美爾知利可々流 毛美遅波々
 風乃可川久流 爾之幾奈利気里

     也宇世以院能美可止能七十能御賀能

     宇遅美太利能者己爾川留可免
     支久奈止末之里多利
87
 露可々類 幾久能奈可那類 安之太川者
 以末以久多比乃 知與可楚不良无

     式部卿宮能前栽安者世仁草能
     可宇

88
 草能可曾 以呂可者利奴類 之良川遊者
 己々呂於支天毛 於毛婦部支可那

     利武堂宇


「礼」は「禮」とすることも。
「與」は「与」とすることも。
「爾」は「尓」とすることも。
( )は次項にあり

            現代語訳                   解釈


   お差し上げなさった住江の松を見る所

85
「住江の浜の真砂を踏む鶴は、久しき跡を尋むるなりけり」
住吉の浜の細やかな砂を踏む鶴は、長い間ずっと足跡を尋ね求めていたという事ですよ。


   紅葉が見頃である家で主が酒を飲んでいた場面で、

86
「円居する身に散り掛る紅葉葉は、風の被くる錦なりけり」
車座になって座っている私の体に散り掛って来る紅葉は、風の被せてくれる錦のようですね。


   陽成院の帝の七十のお祝いの賀で
   打ち乱りの箱に縁起物としての飾りの鶴と亀
   菊などが入り混じっていて、

87
「露かかる菊の中為る葦田鶴は、今幾度の千代数ふらむ」
露のかかった菊の中にいる鶴は、いったいどれだけの千代の寿命を数えているのでしょう。


   式部卿の宮の前栽合の遊戯の草の香
88
「草の香ぞ色変はりぬる白露は、心置きても思ふべきかな」
草の香りがしますよ、色が変わってしまったのですね。白露のせいで、気兼ねをしてでも思うべきだったのかな。

    
りんどう
   竜胆


85
(住吉の砂浜の細やかな砂を踏み歩く鶴は、まるで私の様に長い間ずっと筆跡(手紙)を探し求めていたという事ですよ。)との意を詠んだ歌。

なりけり;…であったという事だ。過去の助動詞「けり」は伝聞の意を表す。
86
(丸く輪になって座って紅葉観賞の宴をしていると、風によって頭の上からはらはらと紅葉が舞い散り、まるで風の織りなす錦の衣を被る心地ですこと。)との感動の意を詠んだ歌

なりけり;…であるなあ。「けり」は詠嘆の意を表す。


打ち乱りの筥;婦人が櫛で梳いた髪の毛を受けたり、夜寝る時髪文字(添え髪)を入れたりするのに用いた蓋つきの浅い箱。

87
(菊の花に置いた露は飲むと長生きするとされていた。その中にいる鶴はきっと随分と長生きであるでしょうから、何千年もの寿命を勘定しているのでしょうね。)との意で祝った歌。

せんざいあわせ
前栽合;左右に組を分けて自然の風景を模して作った前栽やそれを詠んだ歌の優劣を競う遊び。
      
うん
草の香;「芸」という名の香草を書物に挟んで虫よけとした。

88       
たきもの
(いつもと違う薫物の香りがしますよ。秋冷ごとに露によって草木の葉色が変るように貴方も心変わりして終われたのですね。少しは気持ちが伝わるように、遠慮がちにでも愛するべきだったのかなあ。)との意を匂わせた歌。

ようぜいいん
陽成院;平安前期の天皇で在位は876年〜884年。882年頃より母上の兄で、摂政でもある藤原基経と対立するようになり、翌々年には退位して二条院(陽成院)に移り住んだ。天皇としての在位は短かったが、人生は81歳と大往生を遂げ、この退位の際には陽成院に皇位継承の象徴である三種の神器を持ち出したとの逸話も残されている。



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