升色紙１（深養父集歌12～歌18）∞∞ようこそ美術料紙の世界へ∞∞

臨書用紙

升色紙　伝藤原行成筆　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

深養父集　断簡　（11世紀中頃～１２世紀初頭の頃の書写と考えられる）

多くの料紙が長方形の形をしているのに対して、真上より見た升の形をしている処からその名が付けられた升色紙は、清原深養父の家集を書写したもの。元は鳥の子紙を使用した大和綴じの冊子本と思われる。然し乍ら冊子の原型はなく全て断簡となってしまっている為、憶測ではあるが二項に歌三首を書いたと思われる部分もあるため、元の形は桝形二つ分のやはり長方形の料紙ではあるまいか。冊子にした時には色紙の形になる為、色紙形を意識した墨蹟になっている。墨の濃淡、墨継ぎの位置、行間、或いは行を絡ませてと実に動きの多彩な色紙に仕立ててある。伝藤原行成筆とされているが、行成の筆に因るものではない。寸松庵色紙（伝紀貫之筆）、継色紙（伝小野道風筆）と共に平安の三色紙と称される。

現存する三十三葉の内、七葉については部分的に継紙を行ったと思われる個所が存在する（歌11、歌23、歌24、歌26、歌27、歌29、歌39）。即ち美しい散らし書きの部分に倣って後の世の人が、左右の余白を作ったり、或いはまた行間の余白を作ったりして一葉の色紙に仕立てたものである。恐らくは当時流行っていた茶の席での鑑賞で自慢する為のものであったのかも知れない。それだけ当時の色紙の散らしの評価が高かったということになる。

料紙は白の鳥の子紙で全面に雲母砂子を撒いたものと、薄く藍染にして同様に雲母を撒いたものとが在り、現存するものの中に薄茶の物と趣の異なる茶系の物とが在り、或は別の薄色に染められたものが存在していたのかも知れない。元の料紙は恐らく縦4寸6分×横8寸程の物で、それらを谷折りにした冊子本と思われる。升色紙に使われている白は繊維の塵をよく取り除き、水に十分さらして余分な色味を洗い流し、清楚な素色に漉上げたもので、手間暇のかかる非常に貴重なもので当時の書き手によく好まれていた。白には他に具引きをしたものもある。

臨書用紙はこちら


なつのよは	うちはへて	さきにけり	杏花と云題を	三月つごもりがた	山櫻見て	はるゆきのふるひ

ふゆながら春	おほぞらに	さよふけて	はなすすき	かみなゐの	きえかへり	いくよへて

こころをぞ	みつしほの	いまははや	ひとをおもふ	むしのごと	かはなぐさといふ	ふゆながら空

ともすれば	おもひけむ	なみたかく	むかしみし	うつせみの	ひかりなき	うらみても

かな書　歌番号は宮内庁書陵部本（桂宮本）「深養父集」による

４寸３分×４寸	いくよへてのちかわすれむちりぬべきのべのあきはぎ　　　　　　みがくつき　　　　　　　　　　をば使用字母以久與部弖乃知可和春礼武知利奴部支乃部能安支波幾　　　　　　　美可久川支　　　　　　　　　　　　　　遠八
歌１２　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　、　いく夜経て後か忘れむ散りぬべき、野辺の秋萩みがく月をば　　　幾日かの夜を過ぎた後なら忘れていよう、いずれ散ってしまうだろう野辺の秋萩を美しく見せていたあの月のことも	参考（桂宮本）「いく夜へて後か忘れん散りぬべき、野辺の秋萩みがく月夜を」月夜を；秋萩を美しく照らしていたあの月の夜の出来事を中秋の名月、独りで月見をしていたのか、或いはたれかと花を愛でていたのか
４寸４分×３寸７分	みぢなりけれきえかへりものおもふあきのころもこそ　　　　　なみだのかわの　　　　　　　　　　も使用字母　　　　　　　三知奈利計礼支衣可部利毛乃於毛不　安支乃己呂毛己曾　　　　　　　　　那三太乃可者乃　　　　　　　　　　　　　　　　毛
ヽ　；藤原定家の校合と集付け歌１４　　消かへり物思う秋のころもこそ、涙の川のもみぢなりけれ　　　　思い詰めて心が消え入りそうになる程の思いにふける時の秋の衣こそまるで涙の川を流れる紅葉のようであるということだ。	参考（桂宮本）「消かへり物思う秋の心こそ、涙の川のいずちなりけれ」秋の心；秋の哀れを感じ取り物悲しく思う心いずち　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　、何方；何れの方角。どちらか。　　　　　　、衣；心を覆い隠す衣服　　　　　　　　　　、川底が見えない程に川面を流れるモミジは、まるで私の心を包み隠す秋の衣のようだ。
４寸４分×３寸７分	かみなゐのやますぎてたつたがはをわたるにもみぢのながるるを　　　　　　　　　みてかみなゐのやまをすぎゆくあきなればたつたがはに　　　　　　ぞぬさはかづ　　　　　　　　　　　　ける使用字母　　可三奈為乃也万春支弖　　、　　太川多可者遠和多留二　　、　毛美知乃奈可留々遠　、　　　　　　　　　　　　美天可美那為乃也万遠春支由久安支奈礼盤太川多可者二　　　　　　　曾奴左波可川　　　　　　　　　　　　　　　　个留
神南備の山過ぎて立田川を渡るに、紅葉の流るるを見て歌１５　　神なゐの山を過ぎゆく秋なれば、立田川にぞ幣は被ける　　　　神南備の山を過ぎて立田川を渡る時に、紅葉の流れるのを見て。神南備の山を季節が移り過ぎてゆく秋であるからこそ、立田川の水面にあたかも幣を奉納しているかのようですよ。	参考（桂宮本）神なび山をまうてきて立田川を渡るとて、紅葉の流れけるを見て「神なびの山を過行く秋なれば、たつた川にぞぬさはたむくる」　神南備；神の鎮座する森や山。神社の森。　幣；布や紙などで作ってあり、神に祈る時や祓に奉る物。
４寸４分×３寸７分	はなすすきかぜに　　　　なびきてみだるるは　　　　　　むすびおきてしつゆや　　　　　　とくらん使用字母者那春々支可世二　　　　　奈比幾天美多留々盤　　　　　　　武春比於支天之川由也　　　　　　　　　　止久良无
歌１６　　花薄風になびきて乱るるは、結び置きてし露や解くらん　　　　　花穂を出して開いた薄が風になびいて乱れる様は、天から降りきた湿気が結ばれて水滴となった露でさへ振り解いてしまう様ですよ。	参考（桂宮本）「花薄風になびきて乱るるは、結び置きてし露や解くらん」
４寸３分×３寸６分	さよふけてくもゐ　　　　はるかになくしかのこゑきくよしも　かぜの　　はげしき使用字母左與不計天久毛為　　　　　者留可耳奈久之可乃　己恵支久與之毛　加世乃　　　波計之支
歌〇〇　小夜更けて雲井はるかに鳴く鹿の、声聞く由も風の激しき　　　夜が更けてはるか遠くの空の下で鳴く鹿の声が、ここまで聞こえてくる理由も風の勢いが強いことによるものか書陵部本「深養父集」には記載なし、名家集には記載有。
４寸５分×３寸７分	おほぞらにくきなき　　　花ぞちりまがふくものあなたにはるや　　　　　きぬらん使用字母　於保曾良耳久支那支　　　　花曾知利末可不久毛乃安那多耳者留也　　　　　　　　　幾奴良无
歌１７　　大空にくきなき花ぞ散りまごう、雲のあなたに春や来ぬらん　　　（湖面に映った）大空に梅の花びらが散り乱れている、雲の遥か向こうには春がもうそこまで来ているのですね。	参考（桂宮本）「みなそこにくきなき花ぞ散まがふ、雲のあなたに春やきぬ覧」らん；疑念を持ちつつも推量を表す助動詞
４寸３分×３寸７分	ふゆながらはるの　　　　となりのちかければ　　　　　　　　なかがき　　　　　よりぞはなはみ　　　　　　　　　　えける使用字母不由奈可良者留乃　　　　　止那利乃知可遣礼盤　　　　　　　　　　奈可々支　　　　　　與利曾者那八三　　　　　　　　　　　　衣計留
歌１８　　冬ながら春の隣の近ければ、中垣よりぞ花は見えける　　　　　まだ冬なのですがもう直そこまで春は訪れていますよ、（ほれほれよう見てみなされ）中垣の隙間から隣の花もほころび始めておるのが見えますよ。	中垣；両者の中の隔ての垣根。（冬と春との間の垣根）春の隣；晩冬。春が近づいていることに使う空間的譬喩。

臨書用紙

正規品２８枚入になります

ネットショップへ

升色紙

　清書用１冊６２７０円（税込）

清書用　雲母紙１

朽葉色

清書用　雲母紙２

薄藍色

清書用　雲母紙３
しろいろ　　　　　
素色（ﾍﾞｰｼﾞｭ）

　ページ

練習用　30枚入

練習用臨書用紙へ

ハクビ製清書用臨書用紙として制作している本品は、刷毛にてボカシを入れたもので、雲紙風にあつらえたものです。
手作り製品の為、製作途中で発生する色むら､刷毛むら、汚れ、キズ等僅かの違いで規格外となったものを特価提供しております。程度はピンからキリまで御座いますが､中には見た目殆ど変わらないものも含まれている場合も御座います｡
溪雨資料館にて”一部やや難あり”のものを　３１９０円（税込）でお分け致しております。数に限りが御座いますのでご了承ください。
正規品の清書用については､お近くの書道用品店でお求めになれます｡
正規品の価格についてはこちら
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ご注文は　ＴＥＬ（086‐943‐8727）、又はにて

４寸３分×４寸	いくよへてのちかわすれむちりぬべきのべのあきはぎ　　　　　　みがくつき　　　　　　　　　　をば使用字母以久與部弖乃知可和春礼武知利奴部支乃部能安支波幾　　　　　　　美可久川支　　　　　　　　　　　　　　遠八
歌１２　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　、　いく夜経て後か忘れむ散りぬべき、野辺の秋萩みがく月をば　　　幾日かの夜を過ぎた後なら忘れていよう、いずれ散ってしまうだろう野辺の秋萩を美しく見せていたあの月のことも	参考（桂宮本）「いく夜へて後か忘れん散りぬべき、野辺の秋萩みがく月夜を」月夜を；秋萩を美しく照らしていたあの月の夜の出来事を中秋の名月、独りで月見をしていたのか、或いはたれかと花を愛でていたのか
４寸４分×３寸７分	みぢなりけれきえかへりものおもふあきのころもこそ　　　　　なみだのかわの　　　　　　　　　　も使用字母　　　　　　　三知奈利計礼支衣可部利毛乃於毛不　安支乃己呂毛己曾　　　　　　　　　那三太乃可者乃　　　　　　　　　　　　　　　　毛
ヽ　；藤原定家の校合と集付け歌１４　　消かへり物思う秋のころもこそ、涙の川のもみぢなりけれ　　　　思い詰めて心が消え入りそうになる程の思いにふける時の秋の衣こそまるで涙の川を流れる紅葉のようであるということだ。	参考（桂宮本）「消かへり物思う秋の心こそ、涙の川のいずちなりけれ」秋の心；秋の哀れを感じ取り物悲しく思う心いずち　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　、何方；何れの方角。どちらか。　　　　　　、衣；心を覆い隠す衣服　　　　　　　　　　、川底が見えない程に川面を流れるモミジは、まるで私の心を包み隠す秋の衣のようだ。
４寸４分×３寸７分	かみなゐのやますぎてたつたがはをわたるにもみぢのながるるを　　　　　　　　　みてかみなゐのやまをすぎゆくあきなればたつたがはに　　　　　　ぞぬさはかづ　　　　　　　　　　　　ける使用字母　　可三奈為乃也万春支弖　　、　　太川多可者遠和多留二　　、　毛美知乃奈可留々遠　、　　　　　　　　　　　　美天可美那為乃也万遠春支由久安支奈礼盤太川多可者二　　　　　　　曾奴左波可川　　　　　　　　　　　　　　　　个留
神南備の山過ぎて立田川を渡るに、紅葉の流るるを見て歌１５　　神なゐの山を過ぎゆく秋なれば、立田川にぞ幣は被ける　　　　神南備の山を過ぎて立田川を渡る時に、紅葉の流れるのを見て。神南備の山を季節が移り過ぎてゆく秋であるからこそ、立田川の水面にあたかも幣を奉納しているかのようですよ。	参考（桂宮本）神なび山をまうてきて立田川を渡るとて、紅葉の流れけるを見て「神なびの山を過行く秋なれば、たつた川にぞぬさはたむくる」　神南備；神の鎮座する森や山。神社の森。　幣；布や紙などで作ってあり、神に祈る時や祓に奉る物。
４寸４分×３寸７分	はなすすきかぜに　　　　なびきてみだるるは　　　　　　むすびおきてしつゆや　　　　　　とくらん使用字母者那春々支可世二　　　　　奈比幾天美多留々盤　　　　　　　武春比於支天之川由也　　　　　　　　　　止久良无
歌１６　　花薄風になびきて乱るるは、結び置きてし露や解くらん　　　　　花穂を出して開いた薄が風になびいて乱れる様は、天から降りきた湿気が結ばれて水滴となった露でさへ振り解いてしまう様ですよ。	参考（桂宮本）「花薄風になびきて乱るるは、結び置きてし露や解くらん」
４寸３分×３寸６分	さよふけてくもゐ　　　　はるかになくしかのこゑきくよしも　かぜの　　はげしき使用字母左與不計天久毛為　　　　　者留可耳奈久之可乃　己恵支久與之毛　加世乃　　　波計之支
歌〇〇　小夜更けて雲井はるかに鳴く鹿の、声聞く由も風の激しき　　　夜が更けてはるか遠くの空の下で鳴く鹿の声が、ここまで聞こえてくる理由も風の勢いが強いことによるものか書陵部本「深養父集」には記載なし、名家集には記載有。
４寸５分×３寸７分	おほぞらにくきなき　　　花ぞちりまがふくものあなたにはるや　　　　　きぬらん使用字母　於保曾良耳久支那支　　　　花曾知利末可不久毛乃安那多耳者留也　　　　　　　　　幾奴良无
歌１７　　大空にくきなき花ぞ散りまごう、雲のあなたに春や来ぬらん　　　（湖面に映った）大空に梅の花びらが散り乱れている、雲の遥か向こうには春がもうそこまで来ているのですね。	参考（桂宮本）「みなそこにくきなき花ぞ散まがふ、雲のあなたに春やきぬ覧」らん；疑念を持ちつつも推量を表す助動詞
４寸３分×３寸７分	ふゆながらはるの　　　　となりのちかければ　　　　　　　　なかがき　　　　　よりぞはなはみ　　　　　　　　　　えける使用字母不由奈可良者留乃　　　　　止那利乃知可遣礼盤　　　　　　　　　　奈可々支　　　　　　與利曾者那八三　　　　　　　　　　　　衣計留
歌１８　　冬ながら春の隣の近ければ、中垣よりぞ花は見えける　　　　　まだ冬なのですがもう直そこまで春は訪れていますよ、（ほれほれよう見てみなされ）中垣の隙間から隣の花もほころび始めておるのが見えますよ。	中垣；両者の中の隔ての垣根。（冬と春との間の垣根）春の隣；晩冬。春が近づいていることに使う空間的譬喩。