第1折模作本 序(構成)1
元永本古今和歌集の模作本です。元永本古今和歌集については、飯島春敬先生の解説と小松茂美先生の解説とで解釈に若干の差異が御座いますので、料紙制作の立場上加工につきましては、親美先生を含めた三者の解説を基に総合的な判断を行い独自の解釈を行っております。特に色の表現につきましては、現在の見た目と異なり臨書用紙ではやや新作感の残るものとなっております。以下に第1折(両面加工料紙五枚分)の都合20項分を掲載しておきますので参考にして下さい。
元々の料紙は表・具引唐紙、裏・装飾料紙(染金銀切箔砂子)で、白・紫・黄(黄茶系)・赤(赤茶系)・緑で15種類の唐紙模様が使われています。
1折には同柄5枚(小口10枚、項にして20項分)の唐紙料紙が使用されております。(但し上巻第10折のみ2柄使用)
項=ページのことです。(解説中の項数は、それぞれの第○○折中での項数になります。)
第一紙濃紫色染紙(二重唐草裏面) 古筆実物には切取られて実在していないが、本来は存在していたものと思われる部分 (欠損部分) 上巻 裏面料紙 第1折(濃・中・淡・白1・白2の内濃 左項) 第1折中の1項目 解説及び使用字母へ 表面は 二重唐草・空摺唐紙(具引空摺)の濃色 上巻第1折第一紙清書用臨書用紙 この部分の料紙へ 第一紙裏面 見返し(左側が第1項) (1項) |
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上巻第1折 第1項 第一紙 濃紫色具引空摺 裏面染紙 『金銀大小切箔ノゲ』 古今和歌集 序 (料紙欠損部分)=第一紙裏面料紙左側 |
上巻通しで第一紙裏面、欠損部分の1項目(現存していない項) |
かな |
使用字母 解釈(現代語訳)へ |
欠損部分 |
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現代語訳 |
解釈 解説及び使用字母へ |
本来は存在していたと思われる部分。 |
きのつらゆき 紀貫之;平安時代前期の歌人で歌学者でもあり、三十六歌仙の一人でもある。歌風は理知的で修辞技巧を駆使した、繊細優美な古今調を代表している。醍醐・朱雀両天皇に仕え、御書所預から土佐守を経て従四位下木工権頭に至る。紀友則らと共に古今和歌集を撰進する。家集に「貫之集」の他、「古今和歌集仮名序」、「大堰川行幸和歌序」、「土佐日記」、「新撰和歌(撰)」などがある。生年868年〜没年945年頃。 きのとものり 紀友則;平安時代前期の歌人で、三十六歌仙の一人。宇多・醍醐両天皇に仕え、従兄弟の紀貫之らと共に古今和歌集撰者の一人であるが、集の完成を見ずに亡くなる。格調高い流麗な歌風で、古今集をはじめ勅撰集に64首入集。家集に友則集が有る。生年845年頃〜没年905年。 おおしこうちのみつね うだ・だいごりょうてんのう 凡河内躬恒;平安前期の歌人で、三十六歌仙の一人。宇多・醍醐両天皇に仕え、紀貫之・壬生忠岑・紀友則らと共に古今和歌集撰者の一人。卑官ながら歌歴は華々しく即興での叙景歌の吟詠に長けていたとさる。家集に躬恒集があり、古今集以下の勅撰集にも194首入集している。官位は従五位、淡路権掾。生没年未詳(860年前後〜920年代半頃)。 みぶのただみね 壬生忠岑;平安時代前期の歌人で、三十六歌仙の一人。下級官吏でありながらも和歌に優れ、師である紀貫之らと共に古今和歌集を撰した。温和で澄明な叙景歌が多い事で知られ、古今集以下の勅撰集に81首が入集する。歌論書に和歌体十種(忠岑十体)、家集に忠岑集が有る。生没年不詳。 ページ |
第一紙表面(紫濃色具引唐紙) 空摺唐紙『二重唐草』 古筆実物には切取られて実在していないが、本来は存在していたものと思われる部分 (欠損部分) 上巻 表面料紙 第1折(濃・中・淡・白1・白2の内濃 右項) 第1折中の2項目 解説及び使用字母へ 二重唐草・空摺唐紙(具引空摺)の濃色 上巻第1折第一紙清書用臨書用紙 この部分の料紙へ 第二紙表面 第一紙表面(見開きの並び) (3項) (2項) |
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上巻第1折 第2項 第一紙 濃紫色具引 空摺唐紙表面 『二重唐草』 古今和歌集 序 (料紙欠損部分)=第一紙表面料紙右側 |
上巻通しで第一紙表面、欠損部分の2項目(現存していない項) |
かな |
使用字母 解釈(現代語訳)へ |
欠損部分 |
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現代語訳 | 解釈 解説及び使用字母へ |
本来は存在していたと思われる部分。 |
ページ |
第二紙表面(紫中色具引唐紙) 空摺唐紙『二重唐草』 古筆実物には切取られて実在していないが、本来は存在していたものと思われる部分 (欠損部分) 上巻 表面料紙 第1折(濃・中・淡・白1・白2の内中 左項) 第1折中の3項目 解説及び使用字母へ 二重唐草・空摺唐紙(具引空摺)の中色 上巻第1折第二紙清書用臨書用紙 この部分の料紙へ 第二紙表面 第一紙表面(見開きの並び) (3項) (2項) |
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上巻第1折 第3項 第二紙 紫色中色具引 空摺唐紙 表面 『二重唐草』 古今和歌集 序 (料紙欠損部分)=第二紙表面料紙左側 |
上巻通しで第二紙表面、欠損部分の3項目(現存していない項) |
かな |
使用字母 解釈(現代語訳)へ |
欠損部分 |
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現代語訳 | 解釈 解説及び使用字母へ |
本来は存在していたと思われる部分。 |
ページ |
第二紙中紫色染紙(二重唐草裏面) 古筆実物には切取られて実在していないが、本来は存在していたものと思われる部分 (欠損部分) 上巻 裏面料紙 第1折(濃・中・淡・白1・白2の内中 右項) 第1折中の4項目 解説及び使用字母へ 表面は 二重唐草・空摺唐紙(具引空摺)の中色 上巻第1折第二紙清書用臨書用紙 この部分の料紙へ 第三紙裏面 第二紙裏面(見開きの並び) (5項) (4項) |
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上巻第1折 第4項 第二紙 紫色中色具引空摺 裏面料紙 『金銀大小切箔砂子ノゲ』 古今和歌集 序 (料紙欠損部分)=第二紙裏面料紙右側 |
上巻通しで第二紙裏面、欠損部分の4項目(現存してない項) |
かな |
使用字母 解釈(現代語訳)へ |
欠損部分 |
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現代語訳 |
解釈 解説及び使用字母へ |
本来は存在していたと思われる部分。 |
ページ |
第三紙淡紫色染紙(二重唐草裏面) 古筆実物には切取られて実在していないが、本来は存在していたものと思われる部分 (欠損部分) 上巻 裏面料紙 第1折(濃・中・淡・白1・白2の内淡 左項) 第1折中の5項目 解説及び使用字母へ 表面は 二重唐草・空摺唐紙(具引空摺)の淡色 上巻第1折第三紙清書用臨書用紙 この部分の料紙へ 第三紙裏面 第二紙裏面(見開きの並び) (5項) (4項) |
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上巻第1折 第5項 第三紙 紫色淡色具引空摺 裏面料紙 『金銀大小切箔砂子ノゲ』 古今和歌集 序 (現存第1項)=第三紙裏面料紙左側 |
上巻通しで第三紙裏面、欠損部分を含む5項目(現存の1項) |
かな |
使用字母 解釈(現代語訳)へ |
墨入れ 無し |
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現代語訳 |
解釈 解説及び使用字母へ |
墨入れ無し |
この部分は当初、前書を入れる為の部分であったと思われるが、 墨入れされておらずその儘になってしまったもの。 |
ページ |
第三紙表面(紫淡色具引唐紙) 空摺唐紙『二重唐草』 茶味が強いのは経年変化による褐変の為 上巻 第1折(濃・中・淡・白1・白2の内淡 右項) 第1折中の6項目 解説及び使用字母へ 二重唐草・空摺唐紙(具引空摺)の淡色 上巻第1折第三紙清書用臨書用紙 この部分の料紙へ(写真部分は料紙の右側) 第四紙表面 第三紙表面(見開きの並び) (7項) (6項) |
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上巻第1折 第6項 第三紙 紫色淡色具引 空摺唐紙 表面 『二重唐草』 古今和歌集 序 (第三紙表面料紙右側) |
上巻通しで第三紙表面、欠損部分を含む6項目(現存の2項) |
かな |
使用字母 解釈(現代語訳)へ |
墨入れ 無し |
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現代語訳 |
解釈 解説及び使用字母へ |
墨入れ無し |
この部分は当初、前書を入れる為の部分であったと思われるが、 墨入れされておらずその儘になってしまったもの。 |
ページ |
第四紙表面(紫淡色具引唐紙) 空摺唐紙『二重唐草』 茶味が強いのは経年変化による褐変の為 上巻 第1折(濃・中・淡・白1・白2の内白1 左項) 第1折中の7項目 解説及び使用字母へ 二重唐草・空摺唐紙(具引空摺)の白色 上巻第1折第四紙清書用臨書用紙 この部分の料紙へ(写真部分は料紙の左側) 第四紙表面 第三紙表面(見開きの並び) (7項) (6項) |
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上巻第1折 第7項 第四紙 白色具引(白1) 空摺唐紙 表面 『二重唐草』 古今和歌集 序 (第四紙表面料紙左側) |
上巻通しで第四紙表面、欠損部分を含む7項目(現存の3項) |
かな |
使用字母 |
墨入れ 無し |
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墨入れ無し |
この部分は当初、前書を入れる為の部分であったと思われるが、 墨入れされておらずその儘になってしまったもの。 |
ページ |
第四紙白色具引紙(二重唐草裏面) 金銀大小切箔砂子振 茶味が強いのは経年変化による褐変の為 上巻 裏面料紙 第1折(濃・中・淡・白1・白2の内白1 右項) 第1折中の8項目 解説及び使用字母へ 表面は 二重唐草・空摺唐紙(具引空摺)の白色1 上巻第1折第四紙裏面清書用臨書用紙 この部分の料紙へ(写真部分は料紙の右側) 第五紙裏面 第四紙裏面(見開きの並び) (9項) (8項) |
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上巻第1折 第8項 第四紙 白色具引空摺 裏面料紙 『金銀大小切箔砂子』 古今和歌集 序 (現存第4項)=第四紙裏面料紙右側 |
上巻通しで第四紙裏面、欠損部分を含む8項目(現存の4項) |
かな |
使用字母 |
墨入れ 無し |
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墨入れ無し |
この部分は当初、前書を入れる為の部分であったと思われるが、 墨入れされておらずその儘になってしまったもの。 |
ページ |
第五紙白色具引紙(二重唐草裏面) 金銀大小切箔砂子振 茶味が強いのは経年変化による褐変の為 上巻 裏面料紙 第1折(濃・中・淡・白1・白2の内白2 左項) 第1折中の9項目 解説及び使用字母へ 表面は 二重唐草・空摺唐紙(具引空摺)の白色2 上巻第1折第五紙裏面清書用臨書用紙 この部分の料紙へ(写真部分は料紙の左側) 第五紙裏面 第四紙裏面(見開きの並び) (9項) (8項) |
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上巻第1折 第9項 第五紙 白色具引空摺 裏面料紙 『金銀大小切箔砂子』 古今和歌集 序 (現存第5項)=第五紙裏面料紙左側 |
上巻通しで第五紙、欠損部分を含む9項目(現存の5項) |
かな |
使用字母 解釈(現代語訳)へ |
墨入れ 無し |
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現代語訳 |
解釈 解説及び使用字母へ |
墨入れ無し |
この部分は当初、前書を入れる為の部分であったと思われるが、 墨入れされておらずその儘になってしまったもの。 |
ページ |
第五紙表面(白色具引唐紙) 空摺唐紙『二重唐草』 茶味が現れているのは経年変化による褐変の為 上巻 第1折(濃・中・淡・白1・白2の内白2 左項) 第1折中の10項目 解説及び使用字母へ 二重唐草・空摺唐紙(具引空摺)の白色 上巻第1折第五紙清書用臨書用紙 この部分の料紙へ(写真部分は料紙の右側) 第五紙表面 第五紙表面(見開きの並び) (11項) (10項) (この部分は1枚の料紙、1折帖の中での一番上) |
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上巻第1折 第10項 第五紙 白色具引(白2) 空摺唐紙 表面 『二重唐草』 古今和歌集 序 (第五紙表面料紙右側) |
上巻通しで第五紙表面、欠損部分を含む10項目(現存の6項) |
かな |
使用字母 解釈(現代語訳)へ |
墨入れ 無し |
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現代語訳 |
解釈 解説及び使用字母へ |
墨入れ無し |
この部分は当初より意図的空間の白紙部分。 |
ページ |
第五紙表面(白色具引唐紙) 空摺唐紙『二重唐草』 茶味が現れているのは経年変化による褐変の為 上巻 第1折(濃・中・淡・白1・白2の内白2 左項) 第1折中の11項目 解説及び使用字母へ 二重唐草・空摺唐紙(具引空摺)の白色 上巻第1折第五紙清書用臨書用紙 この部分の料紙へ(使用は料紙の左側) 第五紙表面 第五紙表面(見開きの並び) (11項) (10項) (この部分は1枚の料紙、1折帖の中での一番上) |
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上巻第1折 第11項 第五紙 白色具引(白2) 空摺唐紙 表面 『二重唐草』 古今和歌集 序 (第五紙表面料紙左側) |
上巻通しで第五紙表面、欠損部分を含む11項目(現存の7項) |
かな |
使用字母 解釈(現代語訳)へ |
古今和歌集巻第一 やまとうたは、ひとのこころを たねとして、よろづのことのはと ぞなれりける。よのなかにあ るひと、ことわざしげきものな れば、こころにおもふことをみる |
古今和哥集巻第一 也万止宇太波、比止能己々呂遠 多禰止之天、與呂川能己止乃者止 曾奈礼利个留。與能奈可仁安 留比止、己止和左之計支毛乃那 礼者己々呂爾於无不己止遠美留 |
現代語訳 |
解釈 解説及び使用字母へ |
古今和歌集巻第一 大和歌は人の心を種として、万の言の葉となれるのであった。 世の中に存在している人は事業が大いにあるので、 心に思う事を見る物、聞くものに付いて口に出して言うのだ。 |
和歌は人々の心を元にして、色々な和歌と成るのであった。世の中に生きている人々は仕事がたくさんあるので、其々が心に思っていることを見る物、聞くものに付いて何かと口に出して言うのである。 ける;以前から現在まで続いている事柄や伝承を回想する意を表す「けり」が強意の係助詞「ぞ」を受けて連体形となったもの。 |
古今和歌集巻第一;古の和歌と今の和歌を集めた物の内、括りのその一。 ことのは 言の葉;和歌。心の種から育った木々が、色々な言葉の枝葉を広げるのであるから様々な「和歌」となる意。 ことわざ 事業;仕事。職としてする事。 ことわざ 言技;言葉の技法。韻・縁語・掛詞などを用いた言葉のテクニック。 この様にとると『世の中で生活している人々は、しばしば言葉巧みに使いこなしてしまうものなので、其々が心に思っていることを見る物聞くものに付けて何かと口に出して言うのである。』とも取れる。貫之自身は後程言葉の技法に走る嫌いを批判している処もあるので、或は本心はこちらで有ったのかも。 こきんわかしゅう 古今和歌集;八代集或は二十一代集の最初となるもので、勅撰和歌集の始まりとなるもの。平安時代前期の905年醍醐天皇(在位9年目若干21歳の時)の勅命、紀友則・紀貫之・凡河内躬恒・壬生忠岑が撰者となり編纂、但し紀友則は大方の歌を撰出した後間もなく没、その後約9年かかって漸く914年頃完成かと思われる歌集。収蔵は約1100首全20巻、前後に序を置くものも有り、その場合巻頭には仮名序巻末には真名序が有る。分類は、春・夏・秋・冬・賀・離別・羈旅・物名・恋・哀傷・雑・雑体の12に加えてこの時に初めて作られたと思われる大歌所御歌。長歌・旋頭歌の他は全て五七五・七七調(三十一文字)の短歌で、縁語・掛詞などを用いた繊細で優美な歌風の物が多い。 完本として在る最も古い書写となる元永本古今和歌集には本文の歌1112首及び仮名序に導入歌31首(三十一文字になぞらえた物と思われる)が有り、合わせて1143首(但し重複歌も含む)となっている。万の言の葉を集めていたため、当初は「続万葉集」ともしていた。古今集とも。 紀貫之の仮名序と漢文で書かれた紀淑望の真名序とがあり、貫之の書いたこの仮名序は日本で最初の歌論としての価値がある。 ページ |