元永古今(元永本古今和歌集)書見本             戻る 清書用紙 元永古今へ 戻る 練習用紙 元永古今へ

田中親美模作本 その2  
元永本古今和歌集の模作本です。元永本古今和歌集については、飯島春敬先生の解説と小松茂美先生の解説とで解釈に若干の差異が御座いますので、料紙制作の立場上加工につきましては、親美先生を含めた三者の解説を基に総合的な判断を行い独自の解釈を行っております。特に色の表現につきましては、現在の見た目と異なり臨書用紙ではやや新作感の残るものとなっております。以下に一部を掲載しておきますので参考にして下さい。

元々の料紙は表、具引唐紙・裏、装飾料紙(染金銀切箔砂子)で、白・紫・黄(黄茶系)・赤(赤茶系)・緑で15種類の唐紙模様が使われています。
1折には同柄5枚(小口10枚、項にして20項分)の唐紙料紙が使用されております。(但し上巻第10折のみ2柄使用)第1折実際の並び順へ

項=ページのことです。(解説中の項数は、それぞれの第○○折中での項数になります。)

元永古今集 上巻 第8折 紫ぼかし 金銀大小切箔ノゲ砂子 拡大へ 元永古今集 上巻 第8折 紫ぼかし 金銀大小切箔ノゲ砂子 拡大へ
元永古今集 上巻 第4折 具引唐紙(白雲母摺) 『花襷紋』 拡大へ 元永古今集 上巻 第1折 具引唐紙(具引空摺) 『二重唐草』 拡大へ
元永古今集 上巻 第3折 金銀大小切箔ノゲ砂子 拡大へ 元永古今集 上巻 第3折 金銀大小切箔砂子 拡大へ
元永古今集 上巻 第10折 具引唐紙(白雲母摺) 『小唐草』 拡大へ 元永古今集 上巻 第9折 具引唐紙(白雲母摺) 『菱唐草』 拡大へ
元永古今集 上巻 第12折 茶具引 金銀大小切箔ノゲ砂子 拡大へ 元永古今集 上巻 第10折 白具引 金銀大小切箔砂子 拡大へ
元永古今集 上巻 第16折 具引唐紙(白雲母摺) 『菱唐草』 拡大へ 元永古今集 上巻 第16折 具引唐紙(白雲母摺) 『菱唐草』 拡大へ
 上巻 第8折
花襷紋裏面 切箔砂子
上巻 第8折  第1折
 花襷紋  二重唐草
 上巻 第3折
  芥子唐草裏面
上巻第10折 上巻第9折
 小唐草   菱唐草
 上巻第12折 第10折
  金銀大小切箔
  上巻 第16折
    菱唐草
元永古今集 下巻 第2折 具引唐紙(具引空摺) 『芥子唐草裏面』 拡大へ 元永古今集 下巻 第1折 具引唐紙(具引空摺) 『花唐草』 拡大へ
元永古今集 下巻 第7折 具引唐紙 『丸獅子唐草裏面』 銀小切箔砂子 拡大へ 元永古今集 下巻 第3折 具引唐紙 『花襷紋裏面』 金銀小切箔 拡大へ
元永古今集 巻第廿 大歌所御歌 下巻 第20折 具引唐紙(具引空摺) 『花唐草裏面』 金銀小切箔 拡大  (戻る 一覧へ) 元永古今集 下巻 第7折 具引唐紙(白雲母摺) 『丸獅子唐草』 拡大へ
元永古今集 下巻 第18折 小唐草 拡大へ 元永古今集 下巻 第18折 小唐草 拡大へ
元永古今集 金銀大小切箔砂子振 拡大へ 元永古今集 上巻 第19折 具引唐紙(白雲母摺) 『丸獅子唐草』 拡大へ
元永古今集 上巻 第19折 染・薄茶(濃) 『金銀大小切箔振』(丸獅子唐草裏面) 拡大へ 元永古今集 上巻 第18折 具引唐紙(白雲母) 『丸唐草』 拡大へ
 下巻第2折 第1折
 金銀切箔  花唐草
 下巻第7折 第3折
  金銀小切箔砂子
 下巻第20折 第7折
 金銀切箔 丸獅子唐草
 下巻 第18折
     小唐草
        上巻第19折
        丸獅子唐草
 上巻第19折 第18折
丸獅子唐草裏 丸唐草



(解説中の項数は、それぞれの第○○折中での項数になります。)  上巻・第8折 紫ぼかし金銀大小切箔砂子ノゲ振 第一紙裏面
元永古今 上巻 第8折 金銀大小切箔ノゲ砂子 拡大  (戻る 一覧へ)
元永古今 上巻 第8折 金銀大小切箔ノゲ砂子 拡大  (戻る 一覧へ)

花襷紋裏面
具引ぼかし
金銀切箔砂子ノゲ

上巻
第8折(中切箔砂子)
第15折(中切箔砂子)   

下巻
第3折(小切箔)
第10折(小切箔)


解説及び使用字母へ


写真は第8折
第一紙裏面料紙

元永古今集 上巻第三十六紙裏面 染・紫ぼかし(濃) 金銀大小切箔砂子ノゲ 拡大へ
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左側1項目
右側20項目部分

 古今和歌集巻第四 秋歌上 上巻 第8折                     巻第二 春歌下 上巻 第8折、
     写真左側20項(第一紙料紙裏面の右側半分)              写真右側1項、(第一紙料紙裏面の左側半分、表面はこちら
175
 あきかぜの ふきにし日より ひさかた

 の、あまのかはなみ たたぬひはなし

176
 ひさかたの あまのかはらの わたしもり、

 きみわたりなば かぢかくしてよ

177
 あまのがは もみぢをはしに わたせばや、

 たなばたつめの 秋をしもまつ

178
 恋々て あふ夜は今夜 あまのがは、き

 りたちわたり あけずもあらなむ
   
くわんぴゃうのおんとき          さぶら
   寛平御時に七日のゆふべに候ふ男共


   へりけるをむなに

              躬恒
134
 とどむべき ものとはなしに はかな

 くも、ちる花ごとに たぐふ心か

   やよひのつごもりの日雨のふりける

   に藤花をりて人につかはす

   とて         業平

135
 ぬれつつぞ しゐてをりつる としの間に

 はるは今日をし かぎりと思ば
   
ていじいん
   亭子院の歌合にはるのはて

 
     使用字母
175
 安支可世乃 不支爾之日與利 飛左可太

 農、安末能可波奈三 太々奴比八奈之

176
 比左可堂能 安末能可波良乃 和多之毛利

 幾美和多利奈波 加知可久之天與

177
 安末能可波 毛美知遠者之爾 和多世波也、

 堂奈者多川女乃 秋遠之毛末川

178
 戀々天 安不夜者今夜 安末乃可波、幾

 利多知和多利 阿个須毛安良那武

   寛平御時爾七日乃由不部仁候男共


 
       使用字母

   部利个留遠武奈爾

              躬恒
134
 止々武部支 毛乃止波奈之爾 者可那

 久毛、知留花己止仁 多久不心歟

   也與比乃川己毛利乃日雨乃不利計留

   爾藤花遠利天人爾川可八春

   止天        業平
135
 奴礼川々曾 之為天遠利川留 止之乃内爾

 者留波今日遠之 加支利止思八

   亭子院乃哥合二者留乃波天



134
 止むべきものとはなしに儚くも、散る花毎に類ふ心か。
 押し留めておくべきものとはしないで、儚くも散ってゆく花毎に同じ様に儚い思いを感じ取ってしまうのでしょうか。

135
 濡れつつぞ強いて折つる年の内に、春は今日をし限りと思へば。
 雨に濡れながら無理を押して折り取ってきました(藤の花を)年の内にと、春は今日こそで最後と思いましたので。

175
 秋風の吹きにし日より久方の、天の川波立たぬ日は無し。
 秋風の吹いてしまったその日より、天の川面に立つ白波が立たない日は無い。

176
 久方の天の河原の渡し守、君渡りなば楫隠してよ。
 天上界にあると云う天の河原の渡し船の船頭様、愛しの君が渡って来たならば楫を隠して(帰れなくして)よ。

177
 天の川紅葉を橋に渡せばや、たなばたつ女の秋をしも待つ。
 天の川に紅葉を橋として渡したならば、機織姫は秋でさえも(逢える日を)待っているでしょうか。

178
 恋々て逢う夜は今夜天の川、霧立ち渡り明けずも在らなむ。
 心惹かれる相手に会いたいと心底願って逢える夜は今宵の天の川、霧が一面に立ち込めてきっと(視界の)明けないこともあるでしょう。

                                                                        ページトップ アイコン
(上巻通しでは141項、160項目)

濃紫花襷紋裏面 写真は具引隈ぼかし部分、金銀大小切箔砂子ノゲ振。

第8折のノゲ振は4項分(料紙としては2枚)

たぐ
類ふ;添い並ぶ。連立つ。似合う。

やよひ つごもり
弥生の晦の日;
陰暦三月末日








渡し守;渡し船の船頭。

ひさかた
久方の;枕詞。「天」にかかる

たなばた 
棚機つ女;機を織る女。織姫。


天の河原;日本神話で天上界に在るとされている河原。天の川の河原。
















 
  上巻・第8折中 18項目、 具引唐紙『花襷紋』                上巻・第1折中 11項目、空摺唐紙『二重唐草(重ね唐草)』
元永古今 上巻 第4折 具引唐紙(白雲母) 『花襷紋』 拡大  (戻る 一覧へ) 元永古今 上巻 第1折 具引唐紙(具引空摺) 『二重唐草』 拡大  (戻る 一覧へ)
 二重唐草
上巻
第1折(具引空摺
第2折(具引空摺
 花襷紋
上巻
第8折(具引唐紙)
第15折(具引唐紙)

下巻
第3折(具引唐紙)
第10折(具引唐紙)
解説及び使用字母へ

写真右側
第1折表面料紙

清書用 臨書用紙 元永古今集 白 具引唐紙(空摺唐紙) 『二重唐草』 拡大へ
この部分の臨書用紙へ
写真左側 第8折
第二紙表面料紙

元永古今集 紫(中) 具引唐紙 『花襷紋』 拡大へ
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  古今和歌集巻第四 秋歌上 上巻 第8折、                    古今和歌集巻第一 序 上巻 第1折
   写真左側18項目、花襷紋(中色紫具引唐紙)                    写真右側 11項目、二重唐草(重ね唐草)
                                                  (1〜4項目は欠如、5〜10項目は墨入れ無し。)

 古今和歌集巻第四

  秋上

   秋立つ日よめる

                 敏行朝臣
171
 あききぬと めにはさやかに みえねども、

 風のおとにぞ おどろかれぬる

   あきのたつ日うへのをのこどもの
           
せうえう
   かものかはらに逍遥にまかりけるに

   
ともにてよめる
 


  古今和歌集巻第一

  やまとうたは、ひとのこころを

  たねとして、よろづのことのはと

  ぞなれりける。よのなかにあ

  るひと、ことわざしげきものな

  れば、こころにおもふことをみる



     使用字母

 古今和哥集巻第四

  秋上

   秋立日與女留

              敏行朝臣
171
 悪支々奴止 免仁盤左也可仁 美江禰止毛

 風乃於止仁曾 於止呂可礼奴類

   安支乃太川日有部能遠能己止毛乃
                    
个留
   可毛可波良仁逍遥仁末可利天仁


 
     使用字母


 古今和哥集巻第一

 也万止宇太波、比止能己々呂遠

 多禰止之天、與呂川能己止乃者止

 曾奈礼利个留。與能奈可仁安

 留比止、己止和左之計支毛乃那

 礼者己々呂爾於无不己止遠美留


171
 秋来ぬと目には清かに見えねども、風の音にぞ驚かれぬる。  
 秋がやってきたと目にはハッキリとは見えないけれども、風の気配で(ハッと)気づかされてしまうものですよ。

  立秋の日に、殿上人たちが賀茂の河原で川遊びをしている時に、お供として出かけて詠んだ歌。


                                                                        ページトップ アイコン
(上巻通しでは11項目、158項目)

茶字は次項に有

花襷紋 写真は白雲母使用部分

ギラ打柄は白雲母及び黄雲母を使用、黄雲母は下巻のみで使用数計6枚


うへのをのこ てんじょうびと
上の男;殿上人

しょうよう
逍遥;
あちらこちらをぶらぶらと歩く事。散歩。
世俗を離れ心の欲するままに静かに暮らすのを楽しむ事。





















  上巻・第3折中 20項目、濃緑染・金銀大小切箔砂子ノゲ振       上巻・第3折中 12項目、白色具引・金銀大小切箔砂子振
元永古今 上巻 第3折 濃緑染 金銀大小切箔ノゲ砂子 拡大 (戻る 一覧へ) 元永古今 上巻 第3折 白具引 金銀大小切箔砂子 拡大 (戻る 一覧へ)
芥子唐草裏面
白具引
金銀大小切箔砂子
濃緑染
金銀大小切箔砂子ノゲ
上巻
第3折(
具引空摺)裏面
1枚のみ濃緑(渋草色)
第4折(
具引空摺)裏面

下巻
第2折(具引空摺)裏面
解説及び使用字母へ

写真右側 第3折
第五紙裏面料紙
清書用 臨書用紙 元永古今集 具引染・白 金銀大小切箔砂子 拡大へ
写真左側 第3折
第一紙裏面料紙
清書用 臨書用紙 元永古今集 染・草色(濃) 金銀大小切箔砂子ノゲ 拡大へ
この部分の臨書用紙へ

古今和歌集 序 上巻 第3折、
     写真左側 20項目、濃緑染・金銀大小切箔砂子ノゲ振         写真右側 12項目、白色具引・金銀大小切箔砂子振


 の花のかげにやすめるがごとし
30
 おもひいでて こひしきときは

 はつかりの、なきわたるとも 人

 のしらなむ
31
 かがみ山 いざたちよりて みて

 ゆかむ、としへぬるみは おいや

 しぬると


 
19
 なにめでて をれるばかりぞ を

 みなへし、われおちにきと 人に

 かたるな

 在原業平そのこころあまりて

 事あかず しぼめる花の色

 なくて にほゐのこれるがごとし
20
 月やあらぬ はるやむかしの はる

 
ならぬ、わがみひとつは もとの身にして
 
     使用字母

 乃花乃可个爾也数女留可己止之
30
 於无比意天々 己悲之支止支波

 者川可利乃、奈支王多留止毛 人

 能之良奈無
31
 可々美山 以左太知與利天 美天

 由可武、止之部奴留美者 於以也

 之奴留登



 
       使用字母
19
 奈仁女天々 遠礼留波可利所 乎

 美奈部之、和礼於知爾支止 人二

 加多留那

 在原業平曾能己々呂阿末利天、

 事安可須 之保女留花能色

 奈久天、二本為乃己礼留己止之
20
 月也安良奴 者留也武可之乃 者留

 
奈良奴和可美悲止川波 毛止乃身
 爾之弖
19
 なに愛でて折れるばかりぞ女郎花、我落ちにきと人に語るな。
 その名でもって賞美しようとして今ちょうど女郎花を折り取ろうとしていたところですよ、でもね私が馬から落ちてしまった事は人には言わないでおくれよ。
20
 月やあらぬ春や昔の春ならぬ、我身一つは元の身にして。
 月でさえ違っている、春にしても昔の春とは変っているというのに、私自身(の身の上)は何も変わらす元のままなのですよ。
  月はあの時の月では無いのだろうね、春もやはりあの時の春とはどこか違っている様に思われるよ。私ばかりが昔を引きずったままだったのだね。との意

30
 思い出でて恋しき時は初雁の、鳴き渡るとも人の知らなむ。
 思い出して、離れている人がどうしようもなく愛おしくて切ないほどに心惹かれる時は、たとい初雁の鳴き渡る声が響いたとしても人々の知るところとなってしまうでしょう。

31

 鏡山いざ立寄りて観て行かむ、年経ぬる身は老いやしぬると。
 よし決めた、自分の姿を映し出してくれると云う鏡山に立ち寄ってその姿を見て行くとしよう。年を重ねて来た我が身が年老いて見えるのかどうか、という事をね。
                                                                        ページトップ アイコン







(上巻通しでは52項、60項目)


芥子唐草裏面
白色の具引に金銀大小切箔砂子振部分。


芥子唐草裏面
濃緑色染に金銀大小切箔砂子ノゲ振部分。


ありわらのなりひら
在原業平;
平安初期の歌人。六歌仙、三十六歌仙の一人。阿保親王の第五子で在五中将ともいわれる。自身の歌が多用された伊勢物語の主人公と混同され、色好みの美男として伝説化された。



鏡山;歌枕。
滋賀県蒲生郡と野洲郡との境にある山。




茶字は次項に有






しぬると;様々な自動詞の代用となるサ変動詞「為」の連用形「し」に完了の助動詞「ぬ」の連体形「ぬる」、更に目的・状況・原因・理由などを示す格助詞「と」の付いたもの。

 
   上巻・第10折中 7項目、具引唐紙『小唐草』         上巻・第9折中 2項目、具引唐紙『菱唐草』
元永古今 上巻 第10折 具引唐紙(白雲母) 『小唐草』 拡大  (戻る 一覧へ) 元永古今 上巻 第9折 具引唐紙(白雲母) 『菱唐草』 拡大  (戻る 一覧へ)
菱唐草
上巻
第9折(具引唐紙)
第16折(具引唐紙)
下巻
第9折(具引唐紙)
第16折(具引唐紙)
小唐草
 ≪小重唐草≫
上巻
第10折(具引唐紙)
    ※但し料紙2枚分のみ
第17折(具引唐紙)
下巻
第11折(具引唐紙)
第18折(具引唐紙)
解説及び使用字母へ
写真右側 第9折
第一紙表面料紙

元永古今集 第四十一紙表面 薄茶(濃) 具引唐紙 『菱唐草』 拡大へ
写真左側 第10折
第四紙表面料紙

元永古今集 第四十九紙表面 白 具引唐紙 『小唐草』 拡大へ
この部分の臨書用紙へ
 古今和歌集巻第四 秋歌上  
     上巻 第10折、写真左側 7項目、小唐草           上巻 第9折、写真右側 2項目、菱唐草


   御ものがたりのついでによみて

   たてまつりける

           僧正遍照
249
 さとはあれて 人はふりにし やどなれや、

 にはもまがきも 秋ののらなる








 
181
 としごと    あふ       たなばた
 毎年に 遇とはすれど 織女の、ぬるよの
          
かり
 かずぞ すくな雁ける

182
        つる       はへ   とし 
 織女に 借り鶴糸の 打ち延て、歳の緒な

 がく 恋や渡らむ

   題しらず          素性

183
          あは
 今夜こむ 人には遇じ 織女の、ひさしき

 程に あえもこそすれ

   七日の夜のあかつきに読る


 
     使用字母

   御毛乃可堂利能川以天仁與美天

   太天末川利計留

             僧正遍照
249
 佐止波安連天 人波不利二之 也止奈礼也、

 仁盤毛末可幾毛 秋農々良奈留


 
       使用字母
181
 毎年爾 遇止波春礼□ 織女能、奴留與農

 加数曾 須久奈雁个類
182
 織女爾 借鶴糸能 打延弖、歳乃緒奈

 加久 戀也渡良武

   題之良数      素性
183
 今夜己無 人二波遇之 織女乃、飛左之支

 程爾 安盈毛古其春礼

   七日乃夜能安可川支二讀留

181
 年ごとに逢ふとはすれど七夕の、寝る夜の数ぞ少なかりける。
 毎年逢う事が出来るとはいえ、七夕の煉る夜の数はなんと少ないことでしょう。
182
 棚機に借りつる糸の打ち延へて、年の緒長く恋や渡らむ。
 棚機で借りてしまった糸は幾久しく、年の緒の如くにきっと永く恋い慕って年月を経ることでしょうね。
183
 今夜来む人には会わじ七夕の、久しき程に逢えもこそすれ。
 今夜来るであろう人には合わない心算だ、七夕には久し振りでこそ逢えるのだから。
249
 里は荒れて人は振りにし宿なれや、庭も籬も秋の野良なる
 里は荒れて馴染みでない客の宿だからであろうか、庭も籬も草木が野原の様に伸び放題に成って荒れ果てて、まるで秋の野良の様ですよ。

                                                                       ページトップ アイコン

(上巻通しでは162項、187項目)



打ち延て;
久しく。引き続いて。


年の緒;
年が永く続くことを緒に例えていう言葉。


恋や渡らむ
きっと恋い慕って年月を経るでしょう。


振り;
通りすがりで馴染みでないこと。
人が相手にしない。

まがき
籬;
竹、柴などを粗く編んで作った垣。


なれや;指定の助動詞「なり」の巳然形に疑問の係助詞「や」の付いたもの。
・・だからだろうか。


  上巻・第12折中  4項目、金銀大小切箔砂子ノゲ振              上巻・第10折中 8項目、金銀大小切箔砂子振
元永古今 上巻 第12折 茶染 金銀大小切箔ノゲ砂子 拡大 (戻る 一覧へ) 元永古今 上巻 第10折 白具引 金銀大小切箔砂子 拡大 (戻る 一覧へ)
小唐草 裏面
 ≪小重唐草≫
上巻
第10折(具引唐紙)裏面
※但し料紙2枚分のみ
第17折(具引唐紙)裏面
下巻
第11折(具引唐紙)裏面
第18折(具引唐紙)裏面

唐子唐草 裏面
≪大唐子唐草≫
上巻
第12折(
具引空摺)裏面
下巻
使用なし

解説及び使用字母へ

写真右側 第10折
第四紙裏面料紙

元永古今集 第四十九紙裏 白色・具引  『金銀大小切箔砂子』 拡大へ 
写真左側 第12折
元永古今集 第五十七紙裏面 染・黄茶(中) 『金銀大小切箔砂子ノゲ振』 拡大へ
この部分の料紙へ

 古今和歌集巻第五 秋歌下  
    上巻 第12折、写真左側 4項目、大唐子唐草裏面              上巻 第10折、写真右側 8項目、小唐草裏面
            黄茶染 金銀大小切箔砂子ノゲ振                      白具引 金銀大小切箔砂子振

313
 道知らば たづねも行む もみぢば

 を、ぬさにたむけて あきはいに

 けり









 

 古今和歌集巻第五

  秋下
    
これさだのみこ
   惟貞親王の家の歌合せの歌

                やすひで
250
 ふくからに のべのくさきの しほるれば、

 むべ山かぜを あらしと云とも
251
 くさもきも いろかはれども わだつうみ

 
も なみのはなにぞ あきなかりける

     使用字母
313
 道知者 太川年毛行無 毛美知八
       

 越、奴左止堂無个天 安支波以二

 遣理







 

 
       使用字母

 古今和歌集巻第五

  秋下

   惟貞親王乃家能哥合能哥

             也春比天
250
 不久可良仁 乃部能久左幾乃 之保留礼者

 武部山可世遠 安良之止云良无
251
 久左毛幾毛 以呂可八礼止毛 和多川宇三

 
毛 奈美乃者那爾所 安支奈可利个留


250
 吹くからに野辺の草木の萎るれば、むべ山風を嵐と云ふとも。
 吹くことによって野辺の草木が萎れるならば、なるほど、たとい山風を嵐と云ったとしても頷ける。
251
 草も木も色変れども海神も、波の花にぞあきなかりける。
 草も木も色づきその姿が変わるけれども、(波飛沫の)湧き立つ海も波の花だけには秋(の色)は無かったなあ。

313
 道知らば訪ねも行かむ紅葉を、幣に手向けて秋は往にけり。
 道を知っていたならば訪ねて行くことも出来たでしょうに、紅葉の葉を幣として御供ええして(峠の)秋は去ってしまいましたよ。
                                                                       ページトップ アイコン





(上巻通しでは188項、224項目)


むべ
宜;うべ
本当に。道理で。なるほど。など肯定する意で使う言葉。


わだつうみ;
海神のことか。






ぬさ

幣;
麻・木綿・紙などで作り、神に祈る時に供えたり、祓として捧げ持つもの。
御供え物。
旅の折道祖神に撒き散らし手向けとしたもの。

手向け;峠
幣をお供えする道祖神の有る所の意から。




茶字は次項に有


嵐;
麓の草木を荒らすので「荒らし」、なので山から麓に吹き下ろす風を「あらし」と呼び漢字に書起すと山の下に風が吹くので「嵐」となる。
「あらし」は「荒らし」と「嵐」との掛詞。

波の花;白波の白い泡や水飛沫を花に例えて言う語。
   上巻・第16折中  7項目、 具引唐紙(白色)『菱唐草』         上巻・第16折中  6項目、 具引唐紙(薄黄茶)『菱唐草』
元永古今 上巻 第16折 具引唐紙(白雲母) 『菱唐草』 拡大  (戻る 一覧へ) 元永古今 上巻 第16折 具引唐紙(白雲母) 『菱唐草』 拡大  (戻る 一覧へ)
 菱唐草

上巻
第9折(具引唐紙)
第16折(具引唐紙)

下巻
第9折(具引唐紙)
第16折(具引唐紙)


解説及び使用字母へ

写真右側 第16折
第三紙表面料紙
元永古今集 薄黄茶(淡) 具引唐紙 『菱唐草』 拡大へ
写真左側 第16折
第四紙表面料紙
元永古今集 白具引 具引唐紙 『菱唐草』 拡大へ 
この部分の料紙へ

 古今和歌集巻第八 離別歌  
     上巻 第16折、写真左側 7項目、菱唐草                  上巻 第16折、写真右側 6項目、菱唐草

      かざん
   人の花山にまうでて

   ゆふつかたかへらむと

   しけるに

              遍照


392

 夕暮れの まがきは
    山と なりななむ、
  よるはこえじと やどりとるべく


 

            中納言兼輔
391
   君が行く こしの

        白山しらね

     ども、雪のまにまに

    あとはたづねむ


     使用字母

   人乃華山仁万宇天々

   由不川可太加部良无止

   之个留爾

             遍照

392
 夕暮能 末可支波
     山止 奈利那々無、
  與留波己江之止 也止利止留部久


 
       使用字母

            中納言兼輔
391
   君可行 己之乃

       白山 之良年

     鞆、雪乃間二々々

    安登波多川禰無


391
 君が行く越の白山知らねども、雪の随意にあとは訪ねむ。
 君が行くという霊峰白山にはまだ行ったことはないけれども、雪の降るがままに(晴れ間を縫ってでもして)後で訪ねて行きましょう。
392
 夕暮れの籬は山と成りななむ、夜は越えじと宿り取るべく。
 夕暮れ時の籬は山と成ってしまって欲しいものだ、(危なくて)夜の山は越えられないからと、きっと宿を取るに違いないから。


(上巻通しでは306項、307項目)

しらやま はくさん
白山;白山の古称。
石川県・岐阜県にまたがる信仰の山。富士山・立山と共に日本三霊山の一つ。
標高2702m。
「越の白嶺』とも云う。


まにま
随意に;
物事の成り行きに任せるがままに。

かざん
花山;(花山院)
花山天皇の邸宅。
当時の東一条院辺り(今の京都御苑内)のことか

或は遍照の創建した元慶寺(がんぎょうじ、後に花山天皇が出家してからは花山寺とも)のことか。

ゆふ かた
夕つ方;夕方


ななむ;
・・してしまってほしい。
完了の助動詞「ぬ』の未然形に願望の助動詞「なむ」の付いたもの。

 
   下巻・第2折中 12項目、茶染・金銀小切箔振               下巻・第1折中 2項目、空摺唐紙『花唐草』
元永古今 下巻 第2折 具引唐紙(具引空摺) 『芥子唐草裏面』 金銀小切箔 拡大  (戻る 一覧へ) 元永古今 下巻 第1折 具引唐紙(具引空摺) 『花唐草』 拡大  (戻る 一覧へ)
 花唐草
上巻
第13折(
具引空摺
下巻
第1折(
具引空摺
第20折(
具引空摺

芥子唐草裏面
金銀小切箔
上巻
第3折(
具引空摺
1枚のみ濃緑(渋草色)
第4折(具引空摺
下巻
第2折(具引空摺
解説及び使用字母へ
写真右側 下巻第1折
第一紙表面料紙

元永古今集 下巻 第1折 第一紙表面 渋薄茶(濃) 空摺唐紙 『花唐草』へ
写真左側 下巻第2折
第五紙裏面料紙

元永古今集 下巻 第2折 第五紙裏面 染・素色(白色2) 『金銀小切箔振』 拡大へ
この部分の料紙へ

 古今和歌集巻第十二 恋二 下巻 第2折、                  古今和歌集巻第十一 恋一 下巻 第1折
     写真左側 12項目、茶染・金銀小切箔振                    写真右側 2項目、薄茶色具引空摺 花唐草 
                  芥子唐草裏面


 古今和歌集巻第十二

   恋二

    題しらず     小野小町
557
 おもひつつ ぬればや人の みえつらむ、夢と

 しりせば さめざらましを
558
 うたたねに 恋しき人を 見てしより、

 夢と云事は たのみそめてき

 

 古今和歌集巻第十一

   恋一

    題しらず     読人しらず
474
 ほととぎす 鳴くや五月の あやめ

 ぐさ、あやめもしらぬ こひもす

 るかな


 
     使用字母

 古今和歌集巻第十二

  戀二

   題不知    小野小町
557
 於无比川々奴礼者也人乃美衣川良无 夢止

 志利世八 散女左良末之遠
558
 宇太々年爾 戀之幾人遠 見天之與利、

 夢止云事者 憑曾女天支


 
       使用字母

 古今和歌集巻第十一

  戀一

   題不知     讀人不知
474                安也女
 本止々幾須 鳴也五月乃郭公

 久左、安也女毛之良奴 己比毛須

 類可奈


474
 時鳥鳴くや五月の菖蒲草、文目も知らぬ恋もするかな
 五月の水辺には菖蒲草も生い茂っている何処かで時鳥がけたたましく鳴いていて、菖蒲草の名の文目の様に理性で物事の善悪、道理を区別してわきまえる事なんて出来ない恋などもしてしまうかもしれないなあ。
557
 思ひつつ寝ればや人の見えつらむ、夢と知りせば覚めざらましを
 思いながら寝たならば人は見る事が出来るであろう、(とても叶わぬ事だが)もし夢と判っていたならば覚めないでいてほしいものだ。
558
 
転寝に恋しき人を見てしより、夢と云いしはたのみ染めてき
 転寝をして恋しい人を夢に見てしまった時より、夢と云うのは(そうなる事を)あてにして思い委ねてしまいましたよ。
 
                                                 ページトップ アイコン
(下巻通しでは2項、32項目)


花唐草 

表面は全て具引空摺


芥子唐草裏面
金銀小切箔

表面は全て具引空摺

あやめぐさ
菖蒲草;
ショウブの別名。水辺に生えるサトイモ科の多年草で葉には芳香があり、端午の節句には菖蒲湯とする習わしがある。

あやめ
文目;
物の筋。条理。分別。

たのみ
憑;あてにすること。


てき;
・・してしまった。
完了の助動詞「つ」の連用形に回想の助動詞「き」の付いたもの。


     下巻・第7折中 4項目、 銀小切箔砂子振                   下巻・第3折中 17項目、金銀小切箔振
元永古今 下巻 第7折 具引唐紙 『丸獅子唐草裏面』 銀小切箔砂子 拡大  (戻る 一覧へ) 元永古今 下巻 第3折 具引唐紙 『花襷紋裏面』 金銀小切箔 拡大  (戻る 一覧へ)

花襷紋裏面
金銀切箔
上巻
第8折(中切箔砂子)
第15折(中切箔砂子)
下巻
第3折(小切箔)
第10折(小切箔)

丸獅子唐草 
≪獅子二重丸紋唐草≫
上巻
第5折(具引唐紙)黄雲母1枚
第19折(具引唐紙)黄雲母1枚
下巻
第7折(具引唐紙)
第14折(具引唐紙


解説及び使用字母へ
写真右側 下巻第3折
第二紙裏面料紙

元永古今集 染・紫(中色) 『金銀小切箔振』 拡大へ
写真左側 下巻第7折
第二紙裏面料紙

元永古今集 下巻 第三十二紙裏面 染・薄黄茶(中) 『金銀小切箔砂子振』 拡大へ
この部分の料紙へ

 
古今和歌集巻第十五 恋歌五                          古今和歌集巻第十二 恋歌二
    下巻 第7折、写真左側 4項目、丸獅子唐草裏面              下巻 第3折、写真右側 17項目、花襷紋裏面
            薄茶具引 銀小切箔砂子振                      紫染 金銀小切箔振



 古今和歌集巻第十五


  恋五
       
きさいのみや
   五条の后宮の西のたいにす

   みけるひとに、ほにはあらで

   ものいひわたりけるを、正
           
ばかり
   月の十日あまり許になむ


 
619
 たのめつつ あはでとしふる いつわいに、こり

 ぬこころを 人はしらなむ

            友則
620
 いのちかは なにぞも露の あだものは、

 あふにしかへば をしからなくに





 
     使用字母

 古今和哥集巻第十五

  戀五

   五条能后宮乃西能多意仁春

   美个留比止仁、保爾波安良天

   毛乃以悲和多利希流乎、正

   月農十日安末利許爾奈無



       使用字母
619
 多乃女川々安波天止之不留以川和利二己利

 奴己々呂遠 人者之良奈无

                友則
620
 以乃知可波 奈爾曾毛露乃 安太毛能波、

 安不爾之可部者 遠之可良奈久爾




619
 「頼めつつ逢はで年経る偽りに、懲りぬ心を人は知らなむ」
 頼りにさせておきながら会わないようにして(心を隠して)年月を過ごす情の偽りに、懲りずに続ける心情をきっと人々は知ってしまうでしょう。
 (気を持たせておきながら己の心を偽って出来る限り合わない様にして年月を流していることをみて、未だにお慕い続けている想いに人々はきっと気付いてしまうのでしょうね。)との意。

620
 「命かは何ぞも露の徒物は、逢ふに仕替へば惜しからなくに」
 命とは何とまあ露のごとき儚いものでしょう、逢うことをやり直す事が出来るなら惜しくもないのでしょうけど。


 古今和歌集巻第十五
   恋歌五
(五条の后宮の西の対に住みける人に、穂には在らで物言い渡りけるを、正月の十日あまり許りになむ)
五条のお后様の西の御殿でお仕えしていた女御に、自分は表に現れる事無く恋心を言い続けて日を過ごしておったのですが、正月の十日過ぎ辺りになって…だろう。


(下巻通しでは57項、124項目)


七宝紋 具引唐紙(ギラ打唐紙)

ぞも;(旧は「そも』)
・・ぞまあ。
指定の助詞「ぞ」に詠嘆の助詞「も」を付けた言葉。


あだもの
徒物;
儚い物。もろい物




仕替え;
やり直す事


西の対;寝殿造りで寝殿の西側にある対の屋敷。二の対とも。寝殿とは渡り廊下で結ばれている。

たい
台;うてな
四方を観望できるように作った高台。高殿。


言い渡る;
言い続けて日を経過する。
永い間言い寄る。


五条の后宮;藤原順子
仁明天皇の女御で、文徳天皇の母親。

    下巻・第20折中 5項目、 金銀小切箔振                  下巻・第7折中 6項目、 具引唐紙『丸獅子唐草』
元永古今 下巻 第20折 具引唐紙(具引空摺) 『花唐草裏面』 金銀小切箔 拡大  (戻る 一覧へ) 元永古今 下巻 第7折 具引唐紙(白雲母) 『丸獅子唐草』 拡大  (戻る 一覧へ)
丸獅子唐草 
≪獅子二重丸紋唐草≫
上巻
第5折(具引唐紙)黄雲母1枚
第19折(具引唐紙)黄雲母1枚
下巻
第7折(具引唐紙)
第14折(具引唐紙


花唐草裏面
金銀小切箔
上巻
第13折(
具引空摺
下巻
第1折(
具引空摺
第20折(
具引空摺

解説及び使用字母へ
写真右側 下巻第7折
第三紙表面料紙

清書用 元永古今集 具引・極薄黄茶(淡) 具引唐紙 『丸獅子唐草』 拡大へ 
写真左側 下巻第20折
第三紙裏面料紙

元永古今集 下巻 第九十八紙裏面 具引・極淡茶(淡) 『金銀小切箔振』 拡大へ
この部分の料紙へ
古今和歌集巻第二十 大歌所御歌                         古今和歌集巻第十五 恋歌五
    下巻 第20折、写真左側 5項目、花唐草裏面               下巻 第7折、写真右側 6項目、丸獅子唐草
            薄茶染 金銀小切箔振                       淡(薄黄茶)具引 白雲母

1112
 ちはやぶる かもの

   まつりの ひめこまつ、


 よろづよまでに いろは

   かはらじ


 古今和歌集巻第廿



   しきにふせりてよめる

             在原業平朝臣
951
 月やあらぬ 春やむかしの 春なら
            
もと
 ぬ、我身ひとつは 本の身にして

   題しらず     藤原仲平朝臣

952
 はなすすき 我こそしたに 思しか

 穂にいでて人に 結ばれにけり


     使用字母
1112
 知者也不留 可无乃

   末川利農 比女己末川、


 與呂都與末天爾 以呂者

   駕者良之


 古今和歌集巻第廿


 
       使用字母

   志支爾布世利弖與免留

            在原業平朝臣
951
 月也安良奴 春也无可之乃 春那良

 奴、我身悲止川者 本能身二之天

            藤原仲平朝臣
952
 者那須々支 我己曾志堂仁 思之可

 穂爾以天々人爾 結者礼爾个理

751
 月やあらぬ春や昔の春ならぬ、我身一つは元の身にして。
 月はあの時の月では無いのだろうか、春も昔の春では無いのだろうか、私だけがあの時の私のままで!。
 (月でさえ違っている、春にしても昔の春とは変っているというのに、私自身(の身の上)は何も変わらす元のままなのですよ。)
752
 花薄我こそ下に思いしか、穂に出でて人に結ばれにけり。
 我こそはひそかに恋心を抱きたいものだ、さもないと表面に出てしまっては世の人々に結婚させられてしまう。(過去に有ったことを回想して、以前はそうだったから)
1112
 千早振る賀茂の祭りの姫小松、萬代までに色は変はらじ。
 勢い強く振舞いながら舞う葵祭の姫小松、この先ずっと万代までも(松の葉色の様に、祭のの趣も係わる人々も)その風情は変わらないであろう。

       
かもわけいかずちじんじゃ          かもみおやじんじゃ
賀茂神社;賀茂別雷神社(上賀茂神社)。賀茂御祖神社(下鴨神社)の総称。何れも官幣大社。

かんぺいたいしゃ                    へいはく
官幣大社;社格の一つで、古くは神祇官から幣帛を捧げた神社。(明治以降より、廃止sれる第二次大戦前までは宮内庁から) 大社、中社、小社、別格の区別があった。主に皇室尊崇の神社。天皇、皇族、功臣などを祀る神社。

おおうたどころおうた            かぐらうた  さいばら  ふぞくうた
大歌所御歌;日本古来の歌で神楽歌・催馬楽・風俗歌等の総称を大歌と呼び、これらの教習や管理を司った役所で採用されていた歌。平安時代初期に設置され、古今和歌集巻第二十にここで採集された歌32首が採録されている。大歌は9世紀ごろに雅楽とは切り離されて大歌所の管轄とされたもので、歌詞は古今集の他記紀歌謡や琴歌譜等に見られる。歌と舞と器楽からなる音楽で、現在でも天皇即位などの宮中式典に付随した行事などとして奏される。


                                                                       ページトップ アイコン

(下巻通しでは126項、385項目)


はなすすき
花薄;(花芒)枕詞
「穂にいづ』にかかる。

穂に出づ;
表面に出る。

下に思い;(下思い)
ひそかな恋心を抱く


しか;・・したい。
自分がそうしたいという願望を表す用語。



賀茂の祭り;
葵祭。賀茂神社の祭
京都の上賀茂神社・下鴨神社の祭り


姫小松;(五葉松)
短葉で五枚葉の背丈の低い松。枝ぶりが好い。
東遊歌に出てくる。
加茂の社の姫小松


唐紙文様名中の≪ ≫内の呼名は小松茂美先生の著書での呼称です。





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