元永古今(元永本古今和歌集) 書見本           戻る 清書用紙 元永古今へ 戻る 練習用紙 元永古今へ

田中親美模作本  
元永本古今和歌集の模作本です。元永本古今和歌集については、飯島春敬先生の解説と小松茂美先生の解説とで解釈に若干の差異が御座いますので、料紙制作の立場上加工につきましては、親美先生を含めた三者の解説を基に総合的な判断を行い独自の解釈を行っております。特に色の表現につきましては、現在の見た目と異なり臨書用紙ではやや新作感の残るものとなっております。以下に一部を掲載しておきますので参考にして下さい。

元々の料紙は表、具引唐紙・裏、装飾料紙(染金銀切箔砂子)で、白・紫・黄(黄茶系)・赤(赤茶系)・緑で15種類の唐紙模様が使われています。
1折には同柄5枚(小口10枚、項にして20項分)の唐紙料紙が使用されております。(但し上巻第10折のみ2柄使用)第1折実際の並び順へ

項=ページのことです。(解説中の項数は、それぞれの第○○折中での項数になります。)

元永古今 下巻 第3折 拡大へ 元永古今 下巻 第3折 拡大へ
元永古今 下巻 第10折 拡大へ 元永古今 下巻 第10折 拡大へ
元永古今 上巻 第13折 花唐草 拡大へ 元永古今 上巻 第12折 唐子唐草 拡大へ
元永古今 芥子唐草 拡大へ 元永古今 芥子唐草 拡大へ
元永古今集 下巻 第10折(濃) 巻第十六 哀傷歌 『金銀小切箔振』 拡大へ 元永古今 下巻 第13折 拡大へ
獅子唐草 拡大へ
 下巻 第3折
     花襷紋
下巻第10折 上巻 第8折
    花襷紋
 上巻第12折 唐子唐草
 上巻第13折 花唐草
 下巻 第2折
    芥子唐草
 下巻10折   第13折
金銀小切箔 二重亀甲
 獅子唐草
元永古今集 巻第十九 短歌 下巻 第19折 具引唐紙 『丸唐草』 拡大へ 元永古今集 巻第十九 短歌 下巻 第19折 具引唐紙 『丸唐草』 拡大へ
元永古今 上巻 第20折 七宝 拡大へ 元永古今 上巻 第20折 七宝 拡大へ
元永古今 上巻 第16折 拡大へ 元永古今 下巻 第9折 拡大へ
元永古今 下巻 第18折 小唐草 拡大へ 元永古今 下巻 第18折 小唐草 拡大へ
元永古今 上巻 第6折 具引唐紙(白雲母) 『孔雀唐草』 拡大へ 元永古今 下巻 第5折 具引唐紙(白雲母) 『孔雀唐草』 拡大へ
元永古今 上巻 芥子唐草裏面 緑染 金銀切箔 拡大へ 元永古今 上巻 芥子唐草裏面 白具引 金銀切箔 拡大へ
 下巻 第19折
     丸唐草
 上巻 第20折 第2紙
  裏面 七宝紋 表面
 上巻第16折下巻第9折
    菱唐草
 下巻 第18折
     小唐草
上巻 第6折 下巻 第5折
     孔雀唐草
上巻第3折緑  白
 金銀大小切箔砂子 
元永古今 上巻 第14折 七宝 拡大へ 元永古今 上巻 第14折 七宝 拡大へ
元永古今 下巻 第15折 七宝 拡大へ 元永古今 下巻 第15折 七宝 拡大へ
元永古今 下巻 第17折 七宝 拡大へ 元永古今 下巻 第17折 七宝 拡大へ
元永古今集 巻第十八 雑歌下 下巻 第14折 『金銀小切箔砂子』 拡大へ 元永古今 上巻 第8折 拡大へ
元永古今 下巻 第7折 具引唐紙(白雲母) 『丸獅子唐草』 拡大へ 元永古今 下巻 第4折 鉄線唐草 拡大へ
元永古今 上巻 孔雀唐草裏 金銀散し 拡大へ 元永古今 下巻 第5折 金銀小切箔  拡大へ
 上巻 第14折
     七宝紋
 下巻 第15折
     七宝紋
下巻 第17折
     七宝紋
下巻第14折 上巻第8折
 金銀切箔  紫ボカシ
 下巻第7折 第4折
丸獅子唐草 鉄線唐草
 上巻第6折 下巻第5折
金銀大小切箔砂子振



解説中の項数は、それぞれの第○○折中での項数になります。 下巻・第3折中 19項紫ぼかし『花襷紋』 下巻・第3折中 18項紫中色『花襷紋』
元永古今 下巻 第3折 拡大  戻る 一覧へ
元永古今 下巻 第3折 拡大  戻る 一覧へ

花襷紋(黄雲母摺)

上巻
第8折(具引唐紙)
第15折(具引唐紙)

下巻
第3折(具引唐紙)
第10折(具引唐紙)


解説及び使用字母へ

写真左、第3折中
第一紙(濃色ぼかし)
元永古今集 第一紙表面 紫ぼかし(濃色) 具引唐紙(黄雲母摺) 『花襷紋』 拡大へ
写真右、第二紙
紫(中色)の表面

元永古今集 第二紙表面 紫(中色) 具引唐紙(黄雲母摺) 『花襷紋』 拡大へ
この部分の臨書用紙へ
 古今和歌集巻第十三 恋歌三      下巻 第3折、(黄雲母摺)
     写真左側19項(下巻第十一紙・濃色料紙表面・左項)     写真右側18項(下巻第十二紙・中色料紙表面・右項)  使用字母へ

              業平朝臣
621
 おきもせず ねもせでよるを あ

 かしては、春のものとて ながめくらし

 つ

   業平朝臣家なりける女のも

   とによみてつかはしける

              藤原敏行朝臣
622
 つれづれの ながめにまさる なみだ

 
がは、そでのみひぢて あふよしもなし
 

 古今和歌集巻第十三

  恋三

   やよひのついたちころに、しのび

   に人にものいひてのの

   ち雨そぼふりければ、よ

   みてつかはしける






 
      使用字母         使用字母                かなへ


              業平朝臣
621
 於支毛世須 禰毛世弖夜留遠 阿

 加之天八、春能毛能止弖 奈可女久良之

 津

   業平朝臣家奈利个留女乃毛

   止爾與美天川可波之个留

              藤原敏行朝臣
622
 徒礼々々乃 奈可免爾末左留 奈美多

 
可者、曾弖乃美比知天 安不與之毛
 奈之
 


 古今和歌集巻第十三

  戀三

   也與比乃川以多知己呂爾、之乃比

   仁人爾毛乃意悲弖能々

   知雨曾保不利个礼者、與

   美天川可八之个類









 古今和歌集 恋三 3月の初め頃に、お忍びであのお方と情を通じてから雨がしとしとと降り続くので、詠んで届けた歌、


421

 「起きもせず寝もせで夜を明かしては、春の物とて眺め暮しつ」
 起きることもなく寝ることもしないでぼんやりと夜を明かしては、春の風物詩として(しとしとと降る雨を見て)物思いに耽り乍ら日々を過ごしているのですよ。

422
 「徒然の眺めに勝る涙河、袖のみ漬ぢて逢う由も無し」
 することもなく退屈な様子にも勝る涙の河、涙を拭う袖が濡れてしまうだけで逢う手立てさえもありません。
  折からの長雨で水嵩が増した川の様に、止めどなく流れる涙の川も袖を濡らすばかりであの人にお会いする手段さへも御座いませんよ。との意。
                                                                        ページトップ アイコン
(下巻通しでは58項、59項目)

花襷紋 写真は黄雲母使用部分

ギラ打柄は白雲母及び黄雲母を使用、黄雲母は下巻のみで使用数計6枚

やよひ
弥生;陰暦の3月

そぼ降る;雨がしとしとと降る。
「濡つ(そぼつ)」はしっとりと濡れる。







徒然;為すこともなく物寂しい様子。


漬づ;濡れる。














      
 ながめ
「眺め」は「長雨」との掛詞



茶字は次項に有

 
    下巻 第10折中 10項目 具引唐紙(白色)『花襷紋』          上巻 第8折中 2項目、 具引唐紙(紫濃色)『花襷紋』 
元永古今 下巻 第10折 拡大  戻る 一覧へ 元永古今 下巻 第10折 拡大  戻る 一覧へ
 花襷紋

上巻
第8折(具引唐紙)
第15折(具引唐紙)

下巻
第3折(具引唐紙)
第10折(具引唐紙)



解説及び使用字母へ


写真右側
第8折表面料紙

元永古今集 紫(濃) 具引唐紙 『花襷紋』 拡大へ
写真左側 下巻
第10折表面料紙

元永古今集 白具引 具引唐紙(白雲母摺) 『花襷紋』 拡大へ 
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  古今和歌集巻第十六 哀傷歌  部分 下巻 第10折、         古今和歌集巻第二 春歌下 上巻 第8折
     写真左側10項目、花襷紋(白具引・白雲母摺)           写真右側 2項目、花襷紋(濃紫具引・白雲母摺)  使用字母へ

   京にもてまかりては、わにみせよ

   といひて人につけける歌

                 在原滋春
869
 かりそめの ゆきかよひぢに おもひこし、

 いまはかぎりの かどでなりけり


 

   
亭子院の歌合せにはるのはて

                 みつね
136
 けふのみと はるをおもはぬ 時だに

 も、たつことやすき 花のかげかは



      使用字母       使用字母                   かなへ


   京爾毛天末可利天八、和爾美世與

   止以比弖人二徒个々留哥

              在原滋春
869
 可利曾免乃 由支可與比知爾 於毛比己之

 以末波可支利乃 加止天奈利个利


 


   
亭子院乃哥合二者留乃波天

              美川年
136
 計不乃美止 者流遠於毛波奴 時谷

 毛、堂川己止也数支 花乃可計可波






   
ていじいん                                おおしこうちのみつね
   亭子院の歌合せに今まさに春の終ろうとする頃を詠んだ歌   凡河内躬恒

136

 「今日のみと春を思はぬ時だにも、立つ事易き花の陰かは」  
 今日ぐらいはと春(花見)を思わぬ時でさへ、思いがけずに木の下陰に立ってしまうものですねえ。
(充分に満ち足りた春の花見であるので今日ぐらいは、わざわざ花見をしようとも思わない時であっても、何の抵抗も無く桜の木の下の花陰にやって来てしまうものだことですよ。)との意で、裏返しに行く春への名残惜しさがにじみ出ている歌。


   甲斐の国へお互いに知り合っていた人の元に訪ねて行こうと参上しておったのですが、道中急に患って今になってしまったので、
   都に持参致しては、私がお見せしましょうと言うので人に託けた歌

869

 「仮初の行き通い路に思ひ越し、今は限りの門出成りけり」        
あのよ
 その場限りの行き交う道にあれこれと先の事を考えてみても、今ではもう黄泉の国への門出になるだけですね。
 (一度きりの通り道で後先のことに思いを巡らせてみても、甲斐の無い事ですよ。後はもう天国への旅立ちになるだけですからねえ。)との意。
参考;
 「仮初の行き交ひ路とぞ思ひ越し、今は限りの門出成りけり」(公任本古今和歌集)
 その場限りの行き交う道だからこそあれこれと先の事を考えてみても、今ではもう儚い旅立ちになるだけですね(死期の近いことを憂う歌)

                                                                        ページトップ アイコン
(上巻通しでは142項、下巻通しでは190項目)

茶字は前項に有

花襷紋 写真は白雲母使用部分


ギラ打柄は白雲母及び黄雲母を使用、黄雲母は下巻のみで使用数計6枚


花の陰;
花の咲いている木の下陰





ありはらのしげはる
在原滋春;
生没年不明、平安時代前期の歌人。在原業平の次男で「大和物語」の作者では都の声も。

思い越す;
先の事をあれこれと考える。










    上巻・第13折中 6項目、 具引唐紙(淡焦茶)『花唐草』       上巻・第12折中 7項目、 具引唐紙(白色)『唐子唐草』
元永古今 上巻 第13折 花唐草  戻る 一覧へ 元永古今 上巻 第12折 唐子唐草  戻る 一覧へ
唐子唐草 ≪大唐子唐草≫
上巻
第12折(
具引空摺
下巻
使用なし
 

 花唐草
上巻
第13折(
具引空摺
下巻
第1折(
具引空摺
第20折(
具引空摺

解説及び使用字母へ

写真右側
第12折表面料紙
元永古今集 第五十九紙 白 具引空摺 『唐子唐草』 拡大へ
写真左側
第13折表面料紙
元永古今集 第六十三紙 赤茶(淡) 具引空摺 『花唐草』 拡大へ 
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古今和歌集巻第六 冬歌
   上巻 第13折、写真左側 6項目、花唐草(薄焦茶具引)     上巻 第12折、写真右側 7項目、唐子唐草(白具引)  使用字母へ


342
 行としの 惜くもあるかな

 ますかがみ、みるかげさへに く

 れぬとおもへば





 

 古今和歌集巻第六

  冬
   
 だいしらず
   題不知         読人しらず
314      にしきおり か          しぐれ
 龍田山 錦織懸く かみなづき、時雨の雨を た

 てぬきにして

   冬の歌とてよめる



 
      使用字母         使用字母                   かなへ


342
 行止之乃 惜久裳安流可奈

 末数可々見、々類加計散部爾 九

 禮奴止於毛部者








 

 



 古今和歌集巻第六

  冬

   題不知       読人之良須
314              
 龍田山 錦織懸 十月、雨乃雨遠多

 天奴支爾事戻る 清書用紙 元永古今へ

   冬乃哥止天與女類




314
 「龍田山錦織り懸く神無月、時雨の雨を経緯にして」                       
たていと      ぬきいと
 十月ともなると龍田山は紅葉で錦を織り成してくる。降ったり止んだりを繰り返す通り雨を縦糸(経糸)、横糸(緯糸)にして
 (断続的に降る時雨の冷たい雨が、まるで経糸や横糸の様に竜田山の木の葉を色とりどりに鮮やかに織り込んで行くようですね。)との意。

342
 「行く年の惜しくもあるかな真澄鏡、見る影さへに暮れぬと思へば」
 過行く年には惜しく思われてならないものですよ、澄んだ鏡に映るこの姿までもがまた一つ年の瀬を刻んでいくのかと思うとですね。
 (暮れ行く年には愛着を感じるものである、鏡を見るたび写る姿に理性を失い惑い悩む事になるので。)と寄る年波に行く年を我身に重ねて惜しむ歌

                                                                        ページトップ アイコン

(上巻通しでは227項、246項目)


唐子唐草
淡黄茶色の具引に唐摺唐紙部分。


花唐草
茶色具引に空摺唐紙部分。



たてぬき
経緯;機織の際の経糸と緯糸


ますかがみ
真澄鏡;枕詞
真澄の鏡。よく澄んで明らかな鏡。
「見る」にかかる。


惜し;掛替えの無いものとして愛着を感じる様。
心を惹かれて手放し難く思う。





















 
    下巻・第2折中 10項目、空摺唐紙(白2)『芥子唐草』        下巻・第2折中 7項目、空摺唐紙(白1)『芥子唐草』
芥子唐草 拡大  戻る 一覧へ 芥子唐草 拡大  戻る 一覧へ
芥子唐草

上巻
第3折(
具引空摺
1枚のみ濃緑(渋草色)
第4折(
具引空摺

下巻
第2折(
具引空摺


解説及び使用字母へ

下巻第2折表面料紙
元永古今集 下巻・第九紙 清書用臨書用紙 具引(白色1) 具引空摺 『芥子唐草』 拡大へ
      写真右側
写真左側
元永古今集 下巻・第十紙 清書用臨書用紙 具引(白色2) 具引空摺 『芥子唐草』 拡大へ
この部分の臨書用紙へ

 古今和歌集巻第十一 恋歌一  芥子唐草
   下巻 第2折、写真左側 10項目、芥子唐草              下巻 第2折、写真右側 7項目、芥子唐草     使用字母へ


556
 おく山の すがのねしげく ふる雪

 の、けぬとかいはむ 恋のしげきに


















 
545
 こころがへ するものにもが かたこひは、くるし

 きものと 人にしらせむ

546
 よそにして こふればくるし いれひもの、

 おなし心に いざむすびてむ

547
 はるたてば きゆるこほりの のこりなく、君が

 心を われにとけなむ

548
 あけたてば せみのをりはへ なきくら

 し、夜はほたるの もえこそわたれ


 
      使用字母       使用字母                      かなへ


556
 於久山能 春可能子之个久 不留雪

 能、个奴止可以者武 戀能之个支爾










 

 

545                    
 己々
部 須留毛乃仁毛可 太比者、九留之

 紀毛乃止 人爾之良世無

546
 與曾爾之弖 己不礼盤久留之 以礼比毛能、

 於奈之心爾 以左武須比天無

547              
 波留太天波 幾由留己本乃 々己利奈久


 心遠和礼爾止計南


548
 安个多弖波 世三能遠利波部 奈支久良
                     
和多
 之、夜留八本多留乃 毛衣己曾




545
 「心替へする者にもが片恋は、苦しきものと人に知らせむ」
 例え心を入れ替えた者であろうとも片思いと云う物は、辛いものなのだと他人に悟られてしまうのでしょう。
546
 「余所にして恋ふれば苦し入紐の、同じ心にいざ結びてむ」
 別の場所に居てもどうしようもなく恋い慕う思いは心苦しくて、入紐の如く同じ思いとして一つに結んでしまいたいものですね。
547
 「春経てば消ゆる氷の残りなく、君が心を我に溶けなむ」
 春を過ぎてしまったならば溶けてなくなる氷の残りも無いがごとくに、凍てついた君の心を私の心と同じようにきっと溶かしてくれるでしょう。
548
 「明け立てばせみの折り延へ泣き暮らし、夜は蛍の燃えこそ渡れ」
 夜が明けてくれば蝉が何時も長々と鳴いている様に、しがな一日中泣き過ごし、夜には蛍が乱舞するがごとく絶えずもだえ苦しむことだろうね。
556
 「奥山の菅の根しげく降る雪の、けぬとか云はむ恋の繁きに」
 人里離れた奥深い山に菅の根の深くまで頻りに降り積もる雪の中、来てくださいよ!とか言いましょうか恋する思いが募るばかりに。
                                                                       ページトップ アイコン

(下巻通しでは27項、30項目)



余所にして;いい加減にして顧みないで。なおざりにして。

入紐の;枕詞
「同じ」「結ぶ」などにかかる。


もが;願望を表す助詞。・・でありたい。

    
ほう のうし かりぎぬ
入紐;袍、直衣、狩衣などの頸上の紐で一方を結び玉にして、(雄紐)もう一方を輪にして(雌紐)差し入れて掛けておくもの。







折り延ふ;時を長く伸ばす。継続する。



  下巻・第10折中 1項目 菱唐草(濃紫色)裏面『金銀小切箔振』    下巻・第13折中 2項目 空摺唐紙(薄赤茶色)『米亀甲紋』
元永古今集 下巻 巻十六 哀傷歌 染・紫(濃) 『金銀中小切箔振』 拡大  戻る 一覧へ 元永古今 下巻 第13折 拡大  戻る 一覧へ
 二重亀甲(米亀甲)
    ≪亀甲紋≫

上巻
使用なし

下巻
第13折(
具引空摺


解説及び使用字母へ
写真右側
下巻第13折表面料紙

元永古今集 下巻 薄赤茶(濃) 具引唐紙(空摺唐紙) 『二重亀甲紋』 拡大へ
写真左側
下巻第10折裏面料紙
第一紙(濃紫)

元永古今集 染・紫(濃) 『金銀中小切箔振』 拡大へ
この部分の臨書用紙へ
  古今和歌集巻第十六 哀傷歌 下巻 第10折、             古今和歌集巻第十八 雑歌下 下巻 第13折、
   写真左側 1項目(第一紙) 染紙(紫濃色)『金銀小切箔振』      写真右側2項目 具引空摺(薄赤茶色)      使用字母へ
859
 
きみまさで けぶりたえにし し

 ほがまの、うらさびしくも みえわたる哉


  藤原のとしもとの朝臣右近

  中将にてすみ侍りけるざう

  しの身まかりてのち、人も

  すまずなりにけるに秋のよ

  ふけて、ものよりまうできけ

  るついでにみいれければ


 

 古今和歌集巻第十八

  雑下

   題不知         読人しらず
941
 よのなかは なにかつねなる あすか

 河、きのふのふちぞ けふはせになる
942
 いくよしも あらじわがみは なぞもか

 
く、あまのかるもに おもひみだるる




 
      使用字母         使用字母                 かなへ

859
 幾美末左轉 个不里多盈爾之□

 本可末能 宇良左悲之久无 美衣和多留哉


  藤原乃止之毛止乃朝臣右近

  中将爾天寸美侍利个留左宇

  之身末可利天能知、人毛

  寸末須奈利仁个留爾秋乃與

  不計天、毛乃與利末宇天支个

  留川以天爾美意禮个礼者




 古今和歌集巻第十八

  雑下

   題不知       読人之良須
941             
 與乃奈可波 奈爾可川禰奈留 安須可

 河、幾乃不能不知曾 計不者世爾奈留
942
 以久與之毛 安良之和可美波 奈所毛可

 
久、安末乃可留毛爾 於毛比三多留々





   
ざふかげ(ぞうかげ)                            きりょ  もののな
   雑歌下(春・夏・秋・冬・恋以外のもの。狭義には賀・離別・羈旅・物名・哀傷などの部立ての分類にも属さない雑多な歌)


941

 「世の中は何か常なる飛鳥川、昨日の淵ぞ今日は瀬になる」
 世の中には変わらないことがあるだろうか。飛鳥川にしてもそうだ、昨日は渕だった所が今日は瀬になることもある。
 (世の中は何が不変であるのだろうか、明日との名を持つ明日香川も、昨日の淵が今日は浅瀬と化けているのに。)との意で世の無常を詠んだ歌。
942
 「幾代しも非じ我が身は何ぞもかく、海人の刈藻に思ひ乱るる」
 どれ程の時代が過ぎようとも私の情は如何してこの(海人の刈り取った藻草の)様に思い乱れるのだろうか


859
「君在さで煙絶えにし塩釜の、うら淋しくも見え渡るかな」
貴方様がいらっしゃらないので煙も絶えてしまった塩釜の浦の様に、何だか寂しく見え渡っていることですねえ。
(左大臣がお亡くなりになって、塩を焼く塩屋の煙も消えてしまった塩釜の浜の様に、何となく寂しく感じる心持ちに庭全体が見え広がっている様ですよ。)との意。

                                                                       ページトップ アイコン

(下巻通しでは242項、243項目)

二重亀甲(米亀甲)≪亀甲紋≫

ふち
淵;水が淀んで深い所。川、沼、湖などの深み。
又、浮かび上がることのできない境遇。


瀬;水辺の浅くて徒歩で渡れる所。浅瀬
又、自身の足で立てる場所。事に出会う折。




海人の刈藻;
海人の刈り取る海藻。「乱る」の序詞として使う。

















明日香川(=飛鳥川)
明日香村を流れる明日に希望を持たせるような名を持つ川。







こころ
情;物事に感じて起こる心の動き。



茶字は前項又は次項に有

 
獅子唐草 拡大元永古今集 下巻 第6折 巻第十四 恋歌四 『獅子唐草』 拡大へ
  獅子唐草

上巻
使用なし

下巻
第6折(具引唐紙)

元永古今集 下巻 淡薄赤(中) 具引唐紙 『獅子唐草』 拡大へ
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 獅子唐草                                                下巻・第6折 巻第十四 恋歌四『獅子唐草』
 ギラ打柄は白雲母及び黄雲母を使用、黄雲母は下巻のみで使用数計3枚                                黄雲母摺
 
    下巻・第19折中 7項目、 具引唐紙(白1)『丸唐草』         下巻・第19折中 6項目、 具引唐紙(淡黄茶色)『丸唐草』
元永古今 下巻 第19折 拡大  戻る 一覧へ 元永古今 下巻 第19折 拡大  戻る 一覧へ
 丸唐草 ≪二重複丸唐草≫

上巻
第10折(具引唐紙)
 ※但し料紙3枚分のみ
第11折(具引唐紙)
第18折(具引唐紙)

下巻
第19折(具引唐紙)

解説及び使用字母へ
写真右側 下巻
第18折表面料紙
元永古今集 下巻 第九十三紙表面 淡黄土(淡) 具引唐紙 『丸唐草』 拡大へ
写真左側 下巻
第19折表面料紙

元永古今集 下巻 第九十四紙表面 白1 具引唐紙 『丸唐草』 拡大へ
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 古今和歌集巻第十九 短歌 下巻 第19折、
 写真左側7項目、白(極薄黄茶)具引に白雲母使用部分。     写真右側6項目、淡黄茶色の具引に白雲母使用部分。  使用字母へ

 草葉にかかる 露の命を

                  よみ人しらず
1079
 いかにして こひをかくさむ くれな

 ゐの、やしほの衣 まくりでにして

                  躬恒
1080
 てるつきを ゆみはりとしも いふことは、

 山のはさして いればなりけり




 

   題不知         読人しらず
1077
 よをいとひ このもとごとに たちよりて、う

 つぶしぞめの あさのきぬなり

   人のうしをつかひけるが、しにけ

   ればそのうしのぬしのもとに、よ

   みてつかはしける
                源宗岳娘
1078
 わがのりし 事をうしとや おもひけむ、



 
     使用字母         使用字母                  かなへ


 草葉爾加々留 露乃命遠

               與美人之良須
1079
 以可爾之轉 己飛遠可九左無 久禮奈

 為能、也之本乃衣 末久利天二之弖

               三恒
1080
 天留川支遠 遊美波利止之毛 以婦
己止八

 山能葉左之天 以禮者奈利个里


 


   題不知       読人之良須
1077             
與遠以止比 古乃毛止己止仁 多知與利天、宇

 徒布之曾免乃 悪左能支奴奈利

   人乃宇之遠川可比希留可、之爾个

   禮波楚乃宇之乃奴之乃毛止仁、與

   美天川可八之个留
               源宗岳娘
1078
 和可能利之 事遠宇之止也 於毛比个無


1077
 「世を厭ひ木の下毎に立寄りて、空五倍子染の麻の衣なり」
 世間から遠ざかり木陰ごとに一休みしてはまた歩き、(身に纏っているのは)空附子染の麻衣であると聞いている。
(世の中が辛いからと出家して木陰で一休みしてはまた歩きを繰り返していたので、身にまとっていた衣がまるで喪服の様でございましたよ。)との意。

  知合いの牛を用立てていたのですが、死んでしまったのでその牛の飼主の元へ詠んで贈った歌、
1078
 「吾が告し事(言)を憂しとや思ひけむ、草葉にかかる露の命を」
 (先日借りた牛が死んでしまったことを)私が告げようとしているのを気にくわないと思っていることでしょう、草葉に降りた露の様に儚い命であったと。(言葉にして言い訳がましく言う事を!)

1079
 「如何にして恋(濃い)を隠さむ紅の、八入の衣捲り手にして」
 どのようにしてこの高ぶる恋心を隠しましょうか。八入に染めた真っ赤な衣の袖を腕捲りして(威勢の良さで)偽装しましょうか。

1080
 「照月を弓張としも言ふ事は、山の端差していればなりけり」
 照月を提灯の代りとし乍らも言う事は、あの山の稜線の下を目指して居れば好かったのだよなあ。
                                                 ページトップ アイコン
下巻通しでは366項、367項目)


丸唐草 ≪二重複丸唐草≫

ギラ打柄は白雲母及び黄雲母を使用、黄雲母は上巻のみで使用数計2枚

いと
厭う;嫌がる。
好まないで避ける。
(嫌な相手を避けて身を引く意)

うつぶしぞめ
空五倍子染;
付子(五倍子)で染めた薄黒い色。鈍色。喪服などに用いる。
あさぎぬ
麻衣;麻布で作った着物。特に喪中に着る麻布の着物。

憂し;心外な事ばかりで、疲れて心が閉ざされる様に感じられること。
気にくわない。思うに任せない。


やしほ
八入;何度も何度も染液に浸けて濃く色を染めること。

まくりで
捲り手;袖をまくって半袖の状態。腕まくり。


ゆみはり
弓張;弓張提灯の略
鯨の髭や竹を使い弓のように曲げて、その上下に火袋をひっかけて張り開く様に作られた提灯。弓の部分を持ち灯とする。

なりけり;指定の助動詞に回想・詠嘆の助動詞の付いたもの。以前はそうであったと回想する意を表す。

古代では緋色や濃紫は禁色とされていたので一般人は着る事を許されていなかった。
 
  上巻・第20折中 4項目、 染(茶中色)金銀大小切箔砂子ノゲ振    上巻・第20折中 3項目、具引唐紙(茶中色)『七宝紋』
元永古今 上巻 第20折 拡大  戻る 一覧へ 元永古今 上巻 第20折 拡大  戻る 一覧へ
 唐子唐草 ≪大唐子唐草≫

上巻
第12折(
具引空摺

下巻
使用なし


解説及び使用字母へ

写真は第九十七紙の表裏です。(欠損部分っを含む通しの項で383項・384項)

写真右側
第20折表面料紙

元永古今集 第九十七紙表面 薄茶(中) 具引唐紙 『七宝紋』 拡大へ
写真左側
第20折表面料紙

元永古今集 第九十七紙裏 染・渋茶(中) 『金銀大小切箔砂子ノゲ振』 拡大へ
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古今和歌集巻第上 上巻 第20折、古今和歌集巻第十 物名歌             (上巻通しで第九十七紙)
  写真左側4項目、『奥書』(第九十七紙裏面・右項)       写真右側3項目(第九十七紙表面・左項) 



 古今和歌集巻第上





    
げんえいさんねんなながつにじゅうよっか
   元永三年七月廿四日





 


473
 花の中 目にあくやとて

 わけゆけば、情ぞ共に

 ちりぬべらなる









 
     使用字母



 古今和哥集巻第上




   元永三年七月廿四日




 
       使用字母



473             
 花乃中 目爾安久也止天

 和个由个波、情曾共□

 知利奴部良奈留





詞書;「は」を始めにて「る」を果てにて眺めを懸けて時の歌読めよと人の云ひければ (「ながめ」は「なかめ」との掛詞)   


473

 「
中目に飽くやとて分け行けば、心ぞ共に散りぬべらな」 遍照
 一面に咲き乱れる花畑の中、もう充分堪能したと思って掻き分けて行くのなら、きっと私の心も同じく散ってしまいますでしょう。
(花畑とは桜の園、貴方がもう見飽きてしまったという事でこの場(私の元)を去って行くのなら、気持ちをまとめられずに、きっと私の心は散り落ちてしまう事に成るのでしょうね。)との意を詠んだもの。


 元永三年七月二十四日 古今和歌集を書写し終えた日付(1120年7月24日)、ここから元永本古今和歌集と呼ぶ。

 元永;鳥羽天皇朝の年号、1118年4月3日〜1120年4月10日。(7月24日は既に保安元年に入っているのであるが書き始めた年号としたものか、或はもしかして鳥羽天皇が勅宣した為敢てそうしたものか)
                                                                       ページトップ アイコン

上巻通しでは383項、384項目)


七宝紋 具引唐紙(ギラ打唐紙)

写真右側3項目、淡茶色の具引に白雲母使用部分(左写真奥書の表側)。

写真左側4項目、『奥書』 中色茶染に金銀大小切箔ノゲ使用部分。












□は不明か所
「共」からの連綿からすると「爾」と思われる。




ぬべし;完了の助動詞「ぬ」に推量の助動詞「べし」の付いたもの。
確信をもって事態の実現を予測する。
そうなる事が可能と判断する。

べらなる;
助動詞「べし」の語幹「べ」に接尾語「ら」が接し更に助動詞「なり」の接続した活用形。平安時代のみに見られる。
・・する様子である。

   下巻・第14折 20項目、 染(黄茶濃色)金銀小切箔砂子振      下巻・第9折 2項目、 具引唐紙(薄黄茶・濃)『菱唐草』
元永古今 下巻 第14折 丸獅子唐草の裏面 拡大  戻る 一覧へ 元永古今 下巻 第9折 拡大  戻る 一覧へ
 菱唐草

上巻
第9折(具引唐紙)
第16折(具引唐紙)

下巻
第9折(具引唐紙)
第16折(具引唐紙)


解説及び使用字母へ

写真右側 下巻
第9折表面料紙

元永古今集 下巻 薄黄茶(濃) 具引唐紙 『菱唐草』 拡大へ
写真左側 下巻
第14折裏面料紙
元永古今集 下巻 第六十六紙裏 染・薄黄土(濃) 『金銀小切箔砂子振』 拡大へ
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下巻第14折、古今和歌集巻第十八 雑歌下                 下巻第9折、古今和歌集巻第十六 哀傷歌
     写真左側20項目 金銀小切箔砂子                       写真右側2項目 菱唐草(白雲母摺)

989

 いざここに わがよは

   へなむ すがはらや、

        ふしみのさとの

     あ れ ま く も を し

990
 我いほは みわの山もと 

   こひしくは、

  とぶらひきませ
         
かど
   すぎたてる門


 

 古今和歌集巻第十六

  哀傷

   いもうとの身まかりにける時

   よめる

              小野篁朝臣

836
 なくなみだ あめとふらなむ わたり

 
がは、水まさりなば かえりくるがに


     使用字母
989
 以左己々爾 王可與八

   部奈無 須可八良也、

         不之三能佐止乃

     悪 礼 末 久 毛 越 之

990
 我以本者 美和乃山毛止

   己悲之久波

  止不良比幾末世

  
寸支多天留門


 
       使用字母

 古今倭歌集巻第十六

  哀傷

   以毛宇止乃身末可利二个留時

   與女留

              小野篁朝臣

836             
 奈久那美堂 安免止不良奈無 和多里

 
可者、水末左利奈波 可部利久留可仁


  哀傷歌(悲しみに悼む歌、特に人の死を悲しんで心を痛めた時の歌)

   妹が亡くなって終った時詠んだ歌

836

 「泣く涙雨と降らなむ渡川、水勝りなば帰り来るがに」
 悲しみに暮れる涙がまるで雨の様に、三途の川に降り落ちて水かさが増したなら、(渡る瀬が無くなって、妹も)帰って来るだろうに。
 (流れる涙がまるで雨の様に落ち続けて、あの世へと渡るための三途の川に降り注ぐように水かさが増したなら、渡る瀬が無くなるので妹も生き帰って来るだろうに。)との意で、渡る瀬が無くなるほどの悲しみですよと詠んだ歌。


989
 「いざここに我が世は経なむ菅原や、伏見の里の荒れ枕くも惜し」
 さあ今ここに我が世が刻まれている。菅の生えている野原である伏見の里の荒れ宿であるが捨て難くもあり愛着を感じる。
或は「まく」を推量の助動詞「む」のク用法と見て
 さて今ここに我が世が刻まれている。菅の生えている野原の伏見の里(の我が家)であるが、荒れて行くだろうことを思うと惜しいとも感じられるよ。

990
 「我庵は三輪の山もと恋しくは、訪い来ませ杉立てる門」
 我が庵は三輪山の麓に在りますので恋しくなったら訪ねていらっしゃいな、庵の門に目標の杉を立てておりますので。

                                                                       ページトップ アイコン



下巻通しでは162項、280項目)

菱唐草
写真右側2項目 薄黄茶色の具引に白雲母柄、裏面は茶染に金銀切箔


丸獅子唐草裏面
写真左側20項目 薄黄茶色の染に金銀切箔、表面は白雲母使用の丸獅子唐草

みまか
身罷る;死ぬ


渡川;三途の川。
冥土の途中にある川。死後七日目に渡るという。生前の行いによって渡る瀬が異なる。

がに;願望を表す助詞。動詞、助動詞の連体形に付く。
・・・するように。


小野篁;平安前期の貴族、文人。遣唐副使に任ぜられたが、大使の横暴に嫌気がさして、病と偽り命を脱して隠岐に流された。小野小町は孫にあたる。




茶字は其々の次項に有





渡り川;三途の川。葬頭川。人が死んで7日目に渡ると云われ、冥途への途中にある川。
川中に三つの瀬が有り生前の業によって渡る処が異なる。


我が庵;粗末な我が家
(多くは僧侶や世捨て人などの質素な住まい)

   下巻・第18折中 15項目、具引唐紙(薄黄茶淡)『小唐草』         下巻・第18折中 10項目、 具引唐紙(白2)『小唐草』
元永古今 下巻 第18折 小唐草  戻る 一覧へ 元永古今 下巻 第18折 小唐草  戻る 一覧へ
 小唐草 ≪小重唐草≫

上巻
第10折(具引唐紙)
  ※但し料紙2枚分のみ
第17折(具引唐紙)

下巻
第11折(具引唐紙)
第18折(具引唐紙)

解説及び使用字母へ
写真右側 下巻
第18折表面料紙
元永古今集 下巻 第九十紙表面 白2 具引唐紙(白雲母摺) 『小唐草』 拡大へ
写真左側 下巻
第18折裏面料紙
元永古今集 下巻 第八十八紙表面 極薄黄(淡) 具引唐紙 『小唐草』 拡大へ
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 古今和歌集巻第十九 短歌 下巻 第18折、
     写真左側15項目、                             写真右側10項目、


1057

 あふことの いまははつかに

   なりぬれば、

  夜ふかからでは

        月なかる

        べ し




 
1050
 われをおもふ 

 人をおもはぬ

   むくいにや、

   わがおもふ人は

   われをおもはぬ

           ふかやぶ



     使用字母

1057
 安不己止乃 以末波々川可爾

   奈利奴礼者、

  夜不可々良天波

         月奈可留

        部新

 

 
       使用字母
1050
 ()禮遠於无不

 人遠於无波奴

   无久意爾也

   ()加於无不人者

   ()禮遠於无波奴

             不可也布


 

1050

 「我を思う人を思わぬ報いにや、吾が思う人は我を思わぬ」
                    
こころくばり
 自分の事をいつくしみ他人の事は心配しなかった報いとして、私の慕う人は私を慕ってはくれない。
 (私を思ってくれる人を気にも留めないでいた報いとして、私の思い人は私の事を気にも留めてはくれない。)との意。


1057
 「逢うことの今は僅かになりぬれば、夜深からでは月無かるべし」
 逢うことさへ今では僅ばかりとなってしまいましたが、夜も深くなってしまわないと都合よく寄り付ける場所もありませんよ。
 (人目が気になるのであの方に会う事だけでも今では随分と少なくなってしまったのですが、夜も遅くなってしまってからでないと月明かりも無く、頼りとする手段すら御座いませんよ。)との意。= 月の二十日ともなり、月の出も遅くなるので夜更けにならないと月(付き)が無い。と詠んだもの。

                                                                       ページトップ アイコン

(下巻通しでは350項、355項目)

小唐草 ≪小重唐草≫

写真右側10項目、白具引に白雲母使用部分。

写真左側15項目、黄茶色の具引に白雲母使用部分。

ギラ打柄は白雲母及び黄雲母を使用、黄雲母は上巻のみで使用数計4枚


はつか
僅か;いささか。わずか。
「僅か」と「二十日」の掛詞

月無かり;
=付無かり。寄り付く便宜がない。頼りとする手掛かりもない。
「月」と「付き」との掛詞










   上巻・第6折中 7項目、 具引唐紙(白1)『孔雀唐草』           下巻・第5折中 10項目、 具引唐紙(白2)『孔雀唐草』
元永古今 上巻 第6折 孔雀唐草  戻る 一覧へ 元永古今 下巻 第5折 孔雀唐草  戻る 一覧へ
  孔雀唐草

上巻(写真左側)
第6折(具引唐紙)

下巻
第5折(具引唐紙・写真右側)

第12折(具引唐紙)

解説及び使用字母へ

写真右側
下巻第5折表面料紙
元永古今集 下巻 白具引 具引唐紙 『孔雀唐草』 拡大へ 
写真左側
第6折表面料紙

元永古今集 上巻 第二十九紙表面 白 具引唐紙 『孔雀唐草』 拡大へ
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 古今和歌集巻第一 春歌上                           古今和歌集巻第十四 恋歌四 
    上巻 第6折、写真左側 7項目、                        下巻 第5折、写真右側10項目、

              素性


56

 みわたせば 柳桜を こきまぜて、

 みやこぞはるの にしきな

 りける

   さくらの花のもとにて、としの

   おいぬることをなげきて

              友則
57
 いろもかも おなじむかしに さくらめど、

 としふる人ぞ あらたまりける


 

 古今和歌集巻第十四

  恋四

   題不知          読人しらず

683

 みちのくの あさかのぬまの はなかつ

 み、かつみる人の こひしきやなそ



     使用字母

              素性
56
 美和多世八 柳桜遠 古支末勢天、

 見也己曾波留乃 耳之支奈

 李个流

   左久良乃花能无止仁天、止之乃

   於意奴留己止遠那計支天

              友則
57
         
於奈之無可之      所安良太
 以呂毛加无        志不留人
         
仁左久良女止々     末利个留
 


 
       使用字母



 古今倭歌集巻第十四

  戀四


683
 美知乃久能 阿左可乃奴末能 者那可徒

 三、加川美留人乃 己悲之紀也奈曾








 
683
 「陸奥の安積の沼の花勝見、かつ見る人の恋しきやなそ」
 陸奥の安積の沼の花勝見、既に見たことのある人にはたいそう懐かしいものですなあ。
 (以前会ったことのある人はどうしてこんなにも懐かしいものなのでしょうかねえ。)との意。第三句までは「且つ」を導き出すための序詞。

56
 「見渡せば柳桜を扱き混ぜて、都ぞ春の錦なりける」
 見渡せば柳の青白色や桜の様々なピンク色を織り交ぜて、都はまるで春の錦となっているようですよ。
57
 「色も香も同じ昔に咲らめど、年経る人ぞ改まりける」
 花の色も香りも今でも昔と同じに咲いているけれど、歳を重ねた人(私)こそが変って往く(老いる)のだなあ。
                                                                       ページトップ アイコン
(上巻通しでは107項、下巻通しでは90項目)

写真右側10項目、
白具引に白雲母使用部分。

写真左側 7項目、淡紫色の具引に白雲母使用部分。





安積の沼;歌枕
安積山の麓に有ったと云われる沼。


花勝見;水辺の草名
「かつ」「かつて」にかかる序詞。

やなぞ;どうして…なのかなあ。感動・詠嘆の意を表す間接助詞「や」に疑問の意を表す副詞「何ぞ」。



柳;柳色。
白味を帯びた若芽の色又、織色の名で萌葱色の経糸と白色の緯糸とで織りなしたもの。
或は、
「柳桜」で糸桜の事を指していたとも考えられる


扱き混ぜて;
混ぜ合わせて。織り交ぜて。


春の錦;春の時節、一斉に多くの花々が咲き乱れる様子を、まるで錦を織ったように美しく咲く様に見立てたもの。

錦;金銀糸や種々の絵緯(緯糸)を用いて美麗な文様を織り出した紋織物の類。











   上巻・第6折中 12項目、 白具引 金銀大小切箔砂子振         下巻・第5折中 9項目、 素色 銀砂子振
元永古今 上巻 第6折 孔雀唐紙裏  戻る 一覧へ 元永古今 下巻 第5折 孔雀唐草裏 銀小切箔  戻る 一覧へ

写真右側下巻第5折
銀極小切箔振り 
 ≪銀砂子≫
上記写真具引唐紙・孔雀唐草の裏面です。

写真左側上巻第6折
金銀大小切箔砂子振り

解説及び使用字母へ

写真右側
下巻第5折表面料紙
元永古今集 下巻 素色(白色2) 『銀砂子振』 拡大へ
写真左側
第6折裏面料紙
元永古今集 上巻 第二十九紙裏面 白 『金銀大小切箔砂子』 拡大へ
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古今和歌集巻第一 春歌上                          古今和歌集巻第十三 恋歌三 
    上巻 第6折、 写真左側12項目、金銀大小切箔砂子振        下巻 第5折、 写真右側9項目、素色(経年変化による褐変)

   しける      みつね

67

 わがやどの 花みがてらに くるひとは、ちり

 なむのちぞ こひしかるべき
   
ていじいん
   亭子院の歌合に

            いせ
68
 みるひとも なきおく山の さくらばな、

 ほかのちりなむ のちぞさかまし

      なきやまざとのとも

 
681
 きみにより わがなはまだき 春霞、のに

 も山にも たちみちにけり

              いせ
682
 しるといへば まくらだにせで ねしも

 のを、きりならぬなの そらにたつらん





     使用字母

   志計留       美川年
67
 和也止乃 花美天良仁 久留比止波、知利

 奈無能知所 己飛之可留部支

   亭子院乃哥合爾

              以世
68
 美留比止毛 奈支於久山乃 左久良波奈、

 保可乃千里奈無 能知所左可末之

     奈支也末左止乃止毛


 
       使用字母
681
 幾美爾與里 和可奈八末多支 春霞、乃爾

 毛山爾毛 太知美知爾个里

            以世
682
 志累止以部波 末久良太爾世天 禰之毛

 能遠、幾利那良奴奈乃 曾良爾太川良无

 





 

681

 「君により我が名はまだき春霞、野にも山にも立ち満ちにけり」
 君により我が名はまだその時ではないのに、まるで春霞が立つように野にも山にもそこら中に広まってしまいましたよ。
682
 「領るといへば枕だにせで寝しものを、霧ならぬ名の空に立つらん」
 恋人の世話をするといっても枕すらしないで寝ることを、霧ではないが不名誉なこことして世間に立ち広まるだろうな。

67
 「我宿の花見がてらに来る人は、散りなむ後ぞ恋しかるべき」
 我が家に花見を兼ねて訪れる人は、散ってしまった後にこそ恋しがるべきですよ。(一面に敷き詰められた桜色の絨毯に満開の頃の余韻を懐かしみ乍)
68
 「見る人も無き奥山の櫻花、他の散りなむ後ぞ咲かまし」
 愛でる人も来ない人里離れた奥深い山に咲く櫻の花、せめて里(他所)で咲く桜の散った後に咲くのがよいですよ。

  亡き山里の友
  亡き山里の友へ

                                                                       ページトップ アイコン
(上巻通しでは112項、下巻通しでは89項目)

写真右側9項目、白具引孔雀唐草裏、染 銀極小切箔振部分。
(小松茂美氏解説では素紙に銀砂子振り)

写真左側 12項目、白具引孔雀唐草裏、染金銀大小切箔砂子振部分。



まだき
夙;早くから。
まだその時期にならないのに。


領る;統治する。
領有する。
占有して管理する。
世話をする。(妻・愛人などの場合)





 
   上巻・第14折中 7項目、 具引唐紙(白1)『七宝紋』           上巻・第14折中 6項目、 具引唐紙(薄赤茶淡)『七宝紋』
元永古今 上巻 第14折 七宝  戻る 一覧へ 元永古今 上巻 第14折 七宝  戻る 一覧へ
七宝紋

上巻
第14折(具引唐紙)
第20折(具引唐紙)

下巻
第15折(具引唐紙)
第17折(
具引空摺


解説及び使用字母へ
写真右側
第14折表面料紙
元永古今集 第六十八紙 薄赤茶(淡) 具引唐紙 『七宝紋』 拡大へ
写真左側
第14折表面料紙
元永古今集 第六十九紙 白 具引唐紙 『七宝紋』 拡大へ 
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 古今和歌集巻第七 新歌 上巻 第14折、
     写真左側7項目、七宝紋                              写真右側6項目、七宝紋

   冬

363

 しらゆきの

    ふりしくときは

  みよしのの、やましたかぜに

   花ぞちりける



 
362
 あきくれど

   いろもかはらぬ

 常葉山、ほかの

        もみぢを

    風ぞかしける



     使用字母

   冬
363
 之良由支乃

    布利志久止支八

  美與之乃々、也末之太可世爾

   花曾千利个留


 
       使用字母
362
 安支九礼止

   以呂裳可波良奴

 常葉山、保可乃

        毛美知越

    風曾可之希流


 

362

 「秋来れど色も変はらぬ常葉山、他の紅葉を風ぞかしける」
 秋が来たというのに木々の葉の色も変わらぬ常盤山、他所の紅葉を風が畏れ多くて恐縮させている(=他所の紅葉ばかりが寒風に縮こまっている)のですね。
或は
 秋が来たというのに青葉のままの常盤山、他の所の紅葉ばかりを風が萎れさせているのですね。

363
 「白雪の降り頻くときは御吉野の、山下風に花ぞ散りける」
 雪の頻りに降り続くときには、吉野の山から吹き下ろす風にきっと梅の花も散ってしまう事でしょう。山下風=嵐。

                                                 ページトップ アイコン

(上巻通しでは266
項、267項目)

写真右側6項目、淡赤茶色の具引に白雲母使用部分。


写真左側7項目、白(極薄赤茶)具引に白雲母使用部分。
ギラ打柄は白雲母、具引空摺は紫系及び白具に未晒し素紙を使用


白雪;雪の美称。

御吉野;吉野の美称。

山下風;山から吹き下ろす風。


   下巻・第15折中 19項目、 具引唐紙(渋薄茶・濃)『七宝紋』      下巻・第15折中 18項目、 具引唐紙(薄茶・中)『七宝紋』
元永古今 下巻 第15折 七宝  戻る 一覧へ 元永古今 下巻 第15折 七宝  戻る 一覧へ
 七宝紋

上巻
第14折(具引唐紙)
第20折(具引唐紙)

下巻
第15折(具引唐紙)
第17折(
具引空摺



解説及び使用字母へ

写真右側 下巻
第15折表面料紙
元永古今集 下巻 第七十二紙表面 渋薄茶(中) 具引唐紙 『七宝紋』 拡大へ
写真左側 下巻
第15折表面料紙
元永古今集 下巻 第七十一紙表面 渋薄茶(濃) 具引唐紙 『七宝紋』 拡大へ
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 古今和歌集巻第十八 雑歌下 下巻 第15折、
     写真左側19項目、                             写真右側18項目、

 身をはやながら

     みるよしもがな











 

   歌めしける時に

   献れとて、おくにかき

   つけてたてまつりける

            伊勢

1008

 山河の 音にのみ

          きくもも敷を


     使用字母

 身遠波也奈可良

   美留與之毛可那









 
       使用字母

   歌免之遣類時爾

   献礼止轉、於久爾加支

   川个帝多天万川利个留

               伊勢
1008
 山河能 音爾乃三

           紀倶毛々敷遠

 

   歌を詠んでいる時に一つ献上成されということで、奥に書き付けてさしあげたもの


1008

 「山河の音にのみ聞く百敷を、身を早ながら見る由もがな」 伊勢
 山川の音(噂)にのみ聞く禁裏の中をじっとしてられないくらいに気が逸るのだけれど、何とか見る方法が有れば良いのだがなあ。
(噂で耳にするだけの宮中での出来事をうずうずとして気持ちが昂るのですが、以前の様に如何にかして目にする機会が有ればいいなあ。何とかして頂けませんかねえ!。)との意を詠んだ歌。「身を早ながら」で身分を以前の状態に戻して頂けないかしらとの意があるとされる。

いせ
伊勢;平安中期の歌人で三十六歌仙の一人。伊勢守藤原継蔭の女(娘)で宇多天皇の子供(行明親王)を産んで伊勢の御とも称されたが、皇子は早くに亡くなってしまう。同じく三十六歌仙の一人である中務の母でもある。元々は宇多天皇の中宮温子に仕えていたが、やがて天皇の寵愛を得る事となった。更に後には敦慶親王と親しくなり生れたのが中務となる。古今集時代の代表的な女流歌人で、上品で優美な歌を得意として古今和歌集以下の勅撰集に約180首もの歌が残る。生没年不詳、877年頃〜938年頃。


                                                 ページトップ アイコン

(下巻通しでは298
項、299項目)

写真右側18項目、白具引に白雲母使用部分。


写真左側19項目、淡赤茶色の具引に白雲母使用部分。
ギラ打柄は白雲母、具引空摺は紫系及び白具に未晒し素紙を使用

やまがは
山河の;枕詞。「音」に掛る。

百敷;百磯城
内裏。皇居。禁中


もがな;平安時代に使われた願望の意を表す終助詞。…があるといいなあ。…であるといいなあ。体言及び活用語の連用形に付く。

  下巻・第17折中 5項目、 染淡色紫 金銀切箔振            下巻・第17折中 4項目、 染中色紫 金銀切箔振
元永古今 下巻 第17折 七宝の裏面  戻る 一覧へ 元永古今 下巻 第17折 七宝の裏面  戻る 一覧へ
七宝紋

上巻
第14折(具引唐紙)
第20折(具引唐紙)

下巻
第15折(具引唐紙)
第17折(
具引空摺


解説及び使用字母へ
写真右側 下巻
第17折裏面料紙
元永古今集 下巻 第八十二紙裏 染・紫(中) 『金銀中小切箔振』 拡大へ
写真左側 下巻
第17折裏面料紙
元永古今集 下巻 第八十三紙裏 染・紫(淡) 『金銀小切箔振』 拡大へ
この部分の臨書用紙へ
古今和歌集巻第十八 雑歌下 下巻 第17折、
  写真左側5項目、紫淡色(空摺唐紙)七宝紋裏面 金銀切箔振    写真右側4項目、紫中色(空摺唐紙)七宝紋裏面 金銀切箔振
七宝紋の柄が薄っすらと見られるのは表面に施された空摺りの跡です。

 の、人く人くと いとひしもをる
           
そせい
1021
         素性
 
やまぶき
 款冬の 花色衣 主や誰、問ども

 こたへず 口なしにして

           
ふじはらのとしゆきあそん
           藤原敏行朝臣






 
1019
 ますかがみ そこなるかげに むかゐ

 ゐて、みる時にこそ しらぬおき

 なに あふ心地すれ
 
はいかいか
 俳諧歌

   題しらず

1020

 むめの花 みにこそきつれ うぐひす




     使用字母

 能、人久々々止 以止比之毛越留

                素性
1021
 款冬乃 花色衣 主也誰、問止无

 己多部須 奈可良

   美留與之毛可那





 
       使用字母
1019
 末須可々美 曾己那留可計爾 無可為

 井天、美留時二己曾 志良奴於支

 奈爾 安不心地寸礼

 俳諧哥

   題之良須

1020
 武免乃花 美爾己曾幾川礼 宇久比寸


 
1019
 「真澄鏡其所なる影に向かひ居て、見る時にこそ知らぬ翁に逢ふ心地すれ」
 真澄の鏡の前でそこに見える姿に相向かって佇んでいると、見る度毎にまるで知らない翁に遭っている心地がする


1020

 「梅の花見にこそ来つれ鶯の、人来人来と厭ひしもをる」
 梅の花は見にこそ来るのが好いですよ、鶯の人が来る人が来ると嫌がり乍らもその場に留まって居りますので。
1021
 「山吹の花色衣主や誰、問へども答へず梔子にして」
 山吹色の花色衣の主は誰でしょう、主の名を聞いても一向に応えてくれません。それもそのはず、(梔子は)口無しですから。
                                                 ページトップ アイコン
茶字は前項に有


(下巻通しでは324
項、325項目)

写真右側4項目、
薄紫の具引空摺『七宝』裏中紫染金銀切箔部分。


写真左側5項目、
薄紫の具引空摺『七宝』裏紫染金銀切箔部分。
具引空摺は紫系及び白具に未晒し素紙を使用(経時変化による脱色と褐変化により彩色の判別不能)


ますかがみ
真澄鏡;枕詞
真澄の鏡。よく澄んで明らかな鏡。
「むかふ」にかかる。


はいかいか ざれごとうた
俳諧歌;戯言歌
滑稽味を帯びた和歌の類。万葉集の戯笑歌の系統を引くもの。

ひとくひとく
人来人来;
ホーホケキョ
鶯の鳴き声の擬声語。人の来るのを懸けていう。

花色衣;咲いた花を衣に見立てて云う言葉。又特に、
露草で染めた衣。
縹色の衣。

くちなし
梔子;芳香白花
赤黄色の染料としての実は熟しても口を開かない。

  下巻・第7折中 2項目、 具引唐紙(黄茶・濃)『丸獅子唐草』       下巻・第4折中 2項目、 具引唐紙(薄赤茶・濃)『鉄線唐草』
元永古今 下巻 第7折 丸獅子唐草  戻る 一覧へ 元永古今 下巻 第4折 鉄線唐草  戻る 一覧へ
 写真右側
鉄線唐草≪大花唐草≫
上巻
使用無し
下巻
第4折(具引唐紙)
写真左側
丸獅子唐草 
≪獅子二重丸紋唐草≫
上巻
第5折(具引唐紙)黄雲母1枚
第19折(具引唐紙)黄雲母1枚
下巻
第7折(具引唐紙)
第14折(具引唐紙

解説及び使用字母へ
写真右側 下巻
第4折表面料紙
元永古今集 薄赤茶(濃) 具引唐紙 『鉄線唐草』 拡大へ
写真左側 下巻
第14折表面料紙
清書用 元永古今集 黄茶(濃) 具引唐紙 『丸獅子唐草』 拡大へ
この部分の臨書用紙へ
古今和歌集巻第十八 雑歌下 下巻 第7折、               古今和歌集巻第十三 恋歌三 下巻 第4折、
 丸獅子唐草 ≪獅子二重丸紋唐草≫                      鉄線唐草 ≪大花唐草≫
          写真左側2項目、                           写真右側2項目、

   題不知         読人しらず

          

750

 かたみこそ いまはあだなれ これな

 くば、わするるときも あらましものを









 

               業平朝臣

627

 あきののに ささわけしあさの そ

 でよりも、あはでこしよぞ ひぢまさりける

               小野小町

628

 みるめなき わが身をうらと

 しらねばや、かれなで海人の あした

 ゆくくる


     使用字母

   題不知    読人之良須

750
 加多美己所 以末波安堂奈礼 己禮奈

 久波、王須留々止支毛 安良万之毛乃遠









 
       使用字母

            業平朝臣
627
 安支能々爾 佐々和个之悪散能 曾
                   
比知万左利
 天與利毛、安波天己之與所 
計類

            小野小町
628
 美流免奈幾 王可身乎宇良止

 新羅年波也、加禮奈天海人 安之多
 
 遊久々類


 
627
 「秋の野に笹分けし朝(麻)の袖よりも、逢はで越し夜(余)ぞ漬ぢ勝りける」
 秋の野で朝露に濡れた笹原を手で掻き分けながら進んだ時の(麻の衣の)袖よりも、(愛しい人に)逢わないで過ごす夜(の私の袖)こそより多く濡れておりますよ。
628
 「見る目無き我が身を浦と知らねばや、離れなで海人の足たゆく来る」
 みすぼらしい我が身を浦と知らなかったからこそ、海女の足もだるくても来ていたのでしょう。
750
 「形見こそ今は仇なれこれ無くば、忘るる時もあらましものを」
 形見こそ今は恨み事になってしまう、若しこれさえ無かったならば、忘れてしまう時も有ったでしょうに。
                                                 ページトップ アイコン


写真右側2項目、淡赤茶色の具引に白雲母使用部分。


写真左側2項目、茶具引に白雲母使用部分。
ギラ打柄は白雲母及び黄雲母を使用、黄雲母は上巻のみで使用数計2枚

ささわけ
笹分;笹原を分けて行くこと


離れなで;
途絶えてしまわないで。

たゆ
弛し;疲れ弛んで元気がない。だるい。


「朝」は「麻」との
「夜」は「余(自分)」との掛詞

唐紙文様名中の≪ ≫内の呼名は小松茂美先生の著書での呼称です。





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