古筆 臨書(仮名序)

古今和歌集 序 (江戸初期書写)金銀泥下絵巻子本        戻る 資料館へ

醍醐天皇の勅撰の詔を受け、全20巻の古今和歌集の撰進を行うにあたり、前後に1巻ずつ付けた序文の内の前巻の「仮名序」。奏上の為、紀貫之が草稿した序文(原本は紀貫之筆)。こちらは何代か書写を繰り返されたもので、書写人は不明。
仮名序という呼び名は後で附けられたもの。『序』とのみ記されている。そもそも序とは『前書き』であり、和歌が如何云うものであるのかなど、その成立の由来を解説したものであり、本来後に付すべきものではない。漢詩ではなく巷で楽しまれている和歌とは何ぞやと云うことを解説する為のもの。真名で書くより仮名で書くほうがその心を良く伝えられて好とした。と思われ、敢て仮名で『序』を記したものと推察される。
この頃の正式文書は漢文に倣って真名書とされていた為、天皇も幼少の頃より読み書及び文法は真名で習われ身に付いていたと思われ、仮名及び和歌の方が新たに習うべき対象であったのではないかと思われる。

一部、使用時母を追加掲載しました。(第一紙〜第十七紙)
解説中の[1〜31]の番号は仮名序の中に収められている歌番号。この仮名序の中ではこれ等の導入歌は省略されているが、貫之自筆の「序」の中では31首収められており、これは三十一文字になぞらえて導入したものと思われる。

古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第四紙
古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第三紙
古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第二紙
古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)
古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)
古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)
 第四紙  第三紙 第二紙 第一紙  下絵巻子見返し  巻子表紙 
古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第十紙 古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第九紙 古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第八紙 古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第七紙 古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第六紙 古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第五紙
 第十紙 第九紙   第八紙 第七紙   第六紙 第五紙 
古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第十六紙 古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第十五紙 古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第十四紙 古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第十三紙 古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第十二紙 古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第十一紙
 第十六紙 第十五紙  第十四紙   第十三紙  第十二紙  第十一紙
 参考色紙『すずりのことぶき』 (江戸初期書)池田光政筆  拡大へ 参考『筋切』 古今和歌集・序(真名序)  全文へ    古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写) 外箱 古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第十八紙 古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第十七紙
 参考・池田光政墨蹟 真名序(全文へ)     外箱  第十八紙  第十七紙

古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写) 第一紙

江戸初期書写
金銀下絵古今和歌集 序


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江戸初期書写 第一紙

かな 現代語訳(解釈)                   使用時母      


 大和歌は人の心を種として

 よろづのことのはとぞなれりける。
            
しげ
 よの中にある人ことわざ繁き

 ものなれば心におもふ事を、みる
  
き く       いひゐだ
 物聞ものにつけて云出せるなり。

      
うぐひす     かはず
 はなになく鶯、水にすむ蛙の

 こゑをきけば生としいけるもの

 いずれか歌をよまざりける。力をも
     
あめつち
 入ずして天地をも動し目に見ゑぬ
 
おにがみ           をとこをむな
 鬼神をもあはれとおもはせ男女


 
 

 
大和哥波人農心越種止之天

 與呂川乃古止乃者止楚奈礼利个留。

 与乃中耳安留人古止王左繁幾

 毛能奈礼八心耳於毛不事遠、美留

 物聞毛乃耳徒希弖云出世留奈利。

 者那爾奈久鶯、水耳春武蛙農

 己恵越幾希八生登之以計留毛乃

 以徒連可哥遠与万佐利个留。力遠毛

 入春之弖天地遠毛動之目爾見恵奴

 鬼神遠毛安者礼止於毛者世男女


 
濁音には判り易いように濁点をつけております。
「礼」は「禮」とすることも、「與」は「与」とすることも、「个」は「介」とすることも

」は「天」との見分けがつかぬ場合も、「爾」は「尓」とすることも

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古今和歌集 序 第二紙
古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第二紙
江戸初期書写
金銀下絵古今和歌集 序

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 江戸初期書写 第二紙

かな  現代語訳(解釈)へ                   使用時母      
  鬼神をもあはれとおもはせ男女
         
たけ  もののふ
 の中をもやはらげ猛き武士の心

 をもなぐさむるは歌なり。この歌
 
あめつち
 天地の開けはじまりけるときより

 *1いくよにけりしかあれども、よに
 
つた
 傳はる事は久堅のあめにしては

 したてる姫にはじまり
*2あらがね

 のつちにしてはすさのをの
             
ちはやぶる
 みことよりぞおこりける。千早振

 神代には歌の文字もさだまらず
   

 すなほにしてことの心わきがた

 かりけらし。いま人のよとなりて

  鬼神遠毛安者礼止於毛者世男女

 乃中越毛也八良希猛幾武士能心

 遠毛奈久左武留八歌奈利。古乃哥

 天地乃開希波之末利个留止幾與利

 
*1以久夜耳希利志可安礼止毛、與爾

 傳八留事波久堅能阿免耳志弖八

 志多天留姫耳者之満利
*2安良加禰

 農徒知耳之弖八春左能遠能

 美古止與利楚於古利个留。千早振

 神代耳八哥能文字毛佐多末良須

 春那本耳之弖古止乃心王幾加多

 閑利个良之。以万人農與登奈利弖

 
□は文章欠落部分(或は削除か)       

*1「あまのうきはしのしたにて、女がみをとこがみとなりたまへることをいへる歌なり。」

*2「したてるひめとは、あめわかみこのめなり。せうとのかみのかたちをかたににうつりて、かがやくをよめるえびすの歌なるべし。
これらはもじのかずもさだまらず、歌のやうにもあらぬことどもなり。」
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*1
天の浮橋の下にて、女神男神と成り給へる事を言へる歌なり。

*2
下照姫とは、天稚彦の女なり。兄人の神の形丘谷に映りて、輝くを詠める夷歌なるべし。
これ等は文字の数も定まらず、歌の様にもあらぬ言どもなり。

         
濁音には判り易いように濁点をつけております。
「礼」は「禮」とすることも、「與」は「与」とすることも、「个」は「介」とすることも

」は「天」との見分けがつかぬ場合も、「爾」は「尓」とすることも

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古今和歌集 序 第三紙 
古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第三紙
江戸初期書写
金銀下絵古今和歌集 序

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 江戸初期書写 第三紙

かな  現代語訳(解釈)へ                  使用時母      .

 すさのをのみことよりぞ三十文字

 あまり一文字によみける
*3かくてぞ
            
かすみ
 花をめでとりをうらやみ霞を
     
つゆ
 あわれび露を悲しぶ心ごとは(
或は心ことば)

 おほくさまざまに成にける。とをき
   
ゐで
 所も出たつ足もとよりはじまりて

 とし月をわたり、たかきやまも
 
ふもと            あまのくも
 麓のちりひぢよりなりて天雲

 たなびくまでおひのぼれるごと
   
このうた
 くに此歌もかくのごとくなる
             
おほむはじめ
 べし。なにはずの歌は帝の御始
               
うねめ
 なり
*4あさか山のことの葉は采女の

 
  寸左乃遠農美古止與利楚三十文字

 安末利一文字仁與美計留
*3加久弖曾

 花遠女弖登利遠宇良也三霞越

 阿者連比露遠悲之婦心古登波

 於保具佐万々々耳成爾个留。止越幾

 所毛出堂川足毛止與利者之満利弖

 登之月遠王多利、堂可幾也万毛

 麓乃知梨比知與利奈利弖天雲

 堂那飛久末弖於比乃本連留古登

 久耳此哥毛閑久能己止久奈留

 遍之。奈爾者川農歌八帝農御始

 奈利
*4安左可山農古止乃葉八采女乃


□は文章欠落部分(或は削除か)       

*3「すさのをのみことは、あまてるおほむの神のこのかみなり。女とすみたまはむとて、いづものくににみやづくりしたまふときにそのところに、やいろのくものたつをみて、よみたまへるなり。
[1]やくもたつ いづもやへがき つまごめに やへがきつくる そのやへがきを」

*4「おほさざきのみかどのなにはづにて、みこときこえけるときとう宮をたがひにゆづりてくらゐにつきたまはで、みとせになりにければ王仁といふ人のいぶかりおもひて、よみてたてまつりける歌なり。このはなは、むめの花をいふなるべし。」
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*3
須佐之男命は、天照大御神の子の神なり。女と住み給はむとて、出雲の國に宮造りし給ふ時にその処に、八色の雲の立つを見て、詠み給へるなり。
歌〔1〕
八雲立つ出雲八重垣妻籠めに、八重垣造るその八重垣を

*4
大鷦鷯の帝の難波津にて、御言聞こえけるとき東宮を互ひに譲りて位に就き給はで、三年になりにければ王仁と云ふ人の訝り思ひて、詠みて奉りける歌なり。この花は梅の花を言ふなるべし。


濁音には判り易いように濁点をつけております。
「與」は「与」とすることも、「个」は「介」とすることも

「弖」は「天」との見分けがつかぬ場合も、「爾」は「尓」とすることも

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古今和歌集 序 第四紙
古筆 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)第四紙 
江戸初期書写
金銀下絵古今和歌集 序

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 江戸初期書写 第四紙

かな  現代語訳(解釈)へ                 使用時母       
             このふたつのうた
 たわぶれよりよみて
*5此二歌は

 歌の父母のやうにてぞ、てならふ
            
そもそも
 人のはじめにもしける。抑々歌の
   
むつ
 さま六なり。からの歌にもかくぞ

 あるべき、そのむくさのひとつには

 そへ歌おほさざきの帝をそへた

 てまつれる歌

 
[2]なにはづに さくやこの花 冬ごもり

    いまははるべと さくやこのはな

 といへるなるべし。二にはかぞへ歌

 [3]咲花に おもひつく身の あぢきなさ

    身にいたづきの いるもしらずて

 堂王不連與利與美弖*5此二哥波

 歌農父母能也宇爾弖楚、手奈良婦

 人農者之免爾毛之个類。抑々哥能

 佐万六奈利。閑良能哥爾毛加久楚

 安留部幾、曾乃武久左乃比止川爾八

 曾部哥於本佐々幾農帝遠曾部堂

 弖満川連留哥

 
[2]奈爾者川耳 佐久也古乃花 冬古毛利

    以万八者留部止 左久也己能者那

 止以遍留奈留部之。二爾八加曾部哥

 
[3]咲花耳 於毛比川久身能 安知幾那左

    身爾以堂徒幾能 以留毛志良寸弖



□は文章欠落部分(或は削除か)

*5「かづらきのおほきみをみちのくににつかはしたりけるに、くにのつかさことおろそかなりとて、まうけなどしたりけれどすさまじかりければ、
さきのうねめなりける女のかはらけとりてよめるなり。これになむおほきみこころとけにける。」


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歌の様六つなり=六義(詩経大序の詩の6分類)
    こう ふう  しょう
賦、比、興、風、雅、頌の6種類
賦;感想をそのまま述べたもの。
比;喩えを以って感想を述べたもの。
興;外物に触れて感想を述べたもの。
風;民衆の間で行われている歌謡。
雅;
朝廷で詠われる王政に関する正楽の詞藻(詩文の才物)。
頌;
宗廟頌徳(天子の祖先を祭り、功徳を褒め称える歌を奉る)の詩藻
より紀貫之が転用して述べた物。

濁音には判り易いように濁点をつけております。
「礼」は「禮」とすることも、「與」は「与」とすることも、「个」は「介」とすることも

」は「天」との見分けがつかぬ場合も、「爾」は「尓」とすることも

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金銀泥下絵 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)  江戸初期書写
金銀下絵古今和歌集 序

右上書出し波型浜部分


使用字母

大 和 哥 波人
與呂川乃古止
与乃 中 耳安

やや厚手の鳥の子紙に極淡目の金銀泥で下絵が施されております。

金銀泥下絵 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)  
江戸初期書写
金銀下絵古今和歌集 序

中央上部葦原部分


使用字母

物 聞 毛乃耳
者那爾奈久鶯
己恵越幾希八
以徒連可哥遠
 
やや厚手の鳥の子紙に極淡目の金銀泥で下絵が施されております。   
 金銀泥下絵 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写)  江戸初期書写
金銀下絵古今和歌集 序

書出し右下葦原部分


使用字母

 心 越 種 止 之 天
者止楚奈礼利个留
 古 止 王 左 繁 幾
 
 やや厚手の鳥の子紙に極淡目の金銀泥で下絵が施されております。  

金銀泥下絵 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写) 見返し料紙  見返し
 江戸初期書写
金銀下絵古今和歌集 序

見返し料紙 全面金砂子 
書出し葦原部分
 
 
 金銀泥下絵 『古今和歌集 序』 (江戸初期書写) 巻子表紙 江戸初期

巻子表紙

 錦
 江戸初期書写
金銀下絵古今和歌集 序

巻子本-緞子表紙部分(天地逆様に映してあります)『錦』 色糸に金銀も使われています。
 
 


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