『筋切・通切』 古今和歌集下 巻第十九(雑歌)
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題しらず
1020
むめの花 見にこそきつれ うぐいすの、
ひとくひとく いとひしものを
人来人来と 厭霜居
素性
1021 くちな
やまぶきの 花色衣 主や誰、問へど答へず 支
し
子にして
藤原敏行朝臣
1022 た
いくばくの 田を作ればか ほととぎす、しでの田
おさ
長を 朝な朝な呼ぶ
使用字母
題不知
1020
无女乃花 見爾己曾支川麗 宇久飛数能、
人來々々止 厭霜居
素性
1021
也末不支能 花色衣 主也誰、問止不答 支
子二之手
藤原敏行朝臣
1022
幾能 田遠作礼者可 保登々支数、志天能田
長遠 朝菜々々呼
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焦茶色・篩目・小切箔振
歌番号は元永本古今和歌集での通し番号
「个」は「介」とすることも、「爾」は「尓」、
「與」は「与」とすることもあり。
1020
梅の花見にこそ来つれ鶯の、人来人来と厭しものを。
1021
山吹の花色衣主や誰、問へど答へず梔子にして。
1022
幾許の田を作ればか時鳥、死出の田長を朝な朝な呼ぶ。
幾許の田を作れれば時鳥、死出の田長を朝な朝な呼ぶ。(公任本古今集)
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ひとく
人来;鶯の鳴き声の疑似語。ヘクョ、ヘクョ、ヘクョがそう聞こえることから人の来るのにかけて言う。
はないろごろも
花色衣;咲いた花を衣に見立てて言う言葉。他に露草で染めて衣や縹色の衣なども言う。
くちなし
支子;梔子。「口を利かない、しゃべらない」の「口無し」にかけて言う。
ほととぎす
死出の田長;死出の山からやって来るとも云われる不如帰の異称。
死出の山は死の苦しさを山に例えたもの。
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『筋切・通切』 古今和歌集下 巻第十九(雑歌)
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題しらず 讀人しらず
1077 いとひ
よを厭 このもとごとに たちよりて、うつ
伏染の 麻のきぬなり
人のうしをつかひけるか
しにければ其の牛の主
の許によみてつかはし
ける
使用字母
題不知 讀人不知
1077 利 天
世遠厭 己乃毛止己止仁 多知與礼者、宇川
伏染乃 麻乃支奴奈利
人乃宇之遠都可比个流可
之兒个禮者其牛乃主
能許爾與美天徒可八之
个類
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歌番号は元永本古今和歌集での通し番号
1077
夜を厭い木の下毎に立ち寄りて、空五倍子染の麻の衣なり。
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夜を厭い;この世を避けて離れる。出家する。
う つ ぶ し ぞ め にびいろ
空五倍子染;(空柴染)五倍子で染めた浅黒い色。鈍色。
喪服などに用いる。
五倍子は白膠木科の若芽に出来た虫こぶ。中は空洞。
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『通切・筋切』 古今和歌集下 巻第廿(雑歌)
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1094
まがねふく きびのなかやま おびき
せる、ほそたにかはの おとのさやけさ
じょうわ
これは承和のおほむ
べのきびのくにのうた
1095
みまさかや くめのさらやま さらさ
らに、わがなはたてじ よろづよまでに
これはみづのをのみかどの
おほむべのきびのくに
のうた
使用字母
1094
末可禰布久 紀飛能奈可也末 於飛支
世留、寶曾太爾加者乃 於止農散也个散
己禮者承和能於保武
部能支飛乃久爾乃宇多
1095
美末散可也 久女能左良也末散良々
々爾、王駕那者多天之 與呂川□末天耳
己禮者美川能遠農美可止能
於保无部乃支比農久爾
乃宇多
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焦茶色・篩目・小切箔振
歌番号は元永本古今和歌集での通し番号
「个」は「介」とすることも、「爾」は「尓」、
「與」は「与」とすることもあり。
1094
真金吹く吉備の中山帯きせる、細谷川の音のさやけさ。
真金さす吉備の中山帯にせる、細谷川の音のさやけさ。(公任本古今集)
1095
美作や久米の皿山更々に、我が名は立じ萬代までに。
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まがねふ
真金吹く;枕詞。「吉備」「丹生」にかかる。
細谷川;流れの細い谷川。
承和;平安初期の年号(834年1月3日〜848年6月13日)仁明天皇朝
おほむべ ふこ
御部;封戸としてのへひと。
久米の皿山;歌枕。岡山県久米郡佐良山村皿の辺りの山。
みづのをのみかど
水尾帝;清和天皇。(850年〜880年、在位858〜876年)
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『筋切・通切』 古今和歌集下 巻第廿(雑歌)
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1105
きみをおきて あだしごころを わが
もたば、すゑのまつやま なみも
こしてむ
さがみうた
1106
こよろぎの いそたちならし
いそなつむ、めざしぬらす
な おきにをれなみ
使用字母
1105
紀美遠於支天安多之己々呂乎和可
无多波、数恵能末川也末名見无
己之天无
散可美宇多
1106
己與呂支能 以曾太知名良之
以曾名川无、女左之奴良数
奈於支爾乎禮名美
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歌番号は元永本古今和歌集での通し番号
「个」は「介」とすることも、「爾」は「尓」、
「與」は「与」とすることもあり。
1105
君を於きて他し心を吾が持たば、末の松山波も越してむ。
君を於きて他し心を吾が持たば、末の松山波も越えなむ。(公任本古今集)
1106
小余綾の磯たち均し磯菜摘む、目刺し濡らすな沖に折れ波。
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あだしごころ
他し心;浮気な心。
末の松山;歌枕。宮城県多賀城市に在ったと云われる山。
てむ;結果を推量し、そうなるだろうとする強い意思を表す。
完了の助動詞「つ」の未然形に推量の助動詞「む」の付いたもの。
こよろぎ いそ
小余綾の磯;歌枕。神奈川県大磯町付近の浜。
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