学生の頃、悪筆を父に叱られ書を習うようになり、筆を持たないと何だか寂しいような気持ちになるので、上手になろうというより、日課として毎日書いていたような気がします。
終戦後、教職についたため、今度は本格的に書の道を目指して、内田鶴雲先生の門をたたき稽古を始めました。漢字も、かなも、先生の手本のほか古法帖古筆を習い、展覧会にも出品するように勉強を続けていました。
その頃福山で古筆の展示があり、生まれて初めて国宝級の古筆のすばらしさに触れ、又料紙のすばらしさを感じ、自分の書も少しでもよく見えるような料紙、又自分に合った書きやすい料紙は自分で作るより外にないと考えて、料紙の研究を始めました。
これが、昭和二十年代後半の頃だと思います。しかし、何度やっても礬砂が上手くゆきません。墨を弾いてしまいます。何回作って見ても書の書けるような料紙は作ることが出来ず、失敗に失敗を重ねて、何度中止しようと思ったかわかりません。紙質や季節によって加工の仕方を変えると気づくのに何年も掛ってしまいました。
そんな時、高木先生や小野先生が励まして下さったお陰で、現在まで続けることが出来たと思います。
又、京都の伝統工芸家の多くの人たちの指導、援助を受け、その上、地域の方々の協力により昭和三十年半ば頃より、どうにか書写出来る料紙を作れるようになりました。
その間多くの博物館、美術館巡りをし、多くの古筆を鑑賞し、その中でも森田竹華先生宅、前田家の尊経閣、西本願寺、陽明文庫等では、本物に手を触れて何時間も時の経つのを忘れて拝見させて頂きました。
それから、西谷卯木先生の御厚意により、田中親美先生の復元された原色模本を入手して、古筆料紙の復元の基礎として精進させていただき現在に至っております。
この時の思いを忘れる事なく、この先も技術と伝統に培われた良い料紙を作り続けて行きたいと考えております。
近頃では各地の紙漉産地でも伝統を受継ぐ人々がめっきり少なくなってしまったと伺っております。利用者が少なくなってしまったことに由来するそうですが、我々の業界でもうかうかしては居られません。和紙の利用が減れば、当然作る人も減ります。人が居なくなってしまえば、いざ欲しいと思った時には物が無いと云う事にもなりかねません。ニーズに合ったものを作るのは当然のことなのですが、良い物はよいと認める素直な心を養い、臆せず使って頂ける確かな製品を作続けてゆく所存です。
栢菅 溪雨
1、古筆臨書用紙
西本願寺家集を始めとし有名古筆の料紙、清書用、練習用ともに多数取り揃えております。
2、料紙、美術料紙
全壊紙、半壊紙、巻物用、手鑑用、帖用の料紙の外、大小色紙、短冊、扇面(特大・大・中・小・豆・ミニ)、うちわ(大・小)など各種。
加工内容も、染、具引、唐紙、ボカシ、金銀切箔、砂子、磨出し、ローセン、もみ紙、墨流しなどの外、破り継紙、重ね継紙などもあります。
特選料紙(半懐紙) 特選料紙(全懐紙)
3、画仙紙
半切、全紙、2尺x6尺、連落ち(1.75尺x7.5尺)、全長(2.3尺x6尺)全版(3尺x6尺)などの寸法で紙質も各種あり、、染、具引、唐紙、ボカシ、金銀切箔砂子、磨出しなど料紙と同様の加工をした細字用料紙加工ものもあります。
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料紙便箋 中扇面 鳥獣戯画、縦横筋入、 3色墨流しの便箋、封筒 手作り和紙便箋 王朝風破り継の百人一首のカルタ 王朝風破り継のハガキ、ハガキ料紙など 大色紙、小色紙 重ね継ミニ屏風(卓上用)、破り継桐箱 破り継しおり、破り継封筒 |
5、写経用紙
紺紙・紫紙、写経料紙(写経用美術料紙)をはじめ、汎用写経用紙清書用、練習用が御座います。
金線、銀線のそれぞれ普通線、蓮台線、宝塔線の3種類で色は各色あります。丸蓮台も始めました。
原紙は純楮紙、純雁皮紙が主体ですが、純三椏紙、麻紙もあります。又練習用には、機械漉きのパルプ入り楮紙、ラモン箋等も御座います。
また不定期ではありますが、扇面写経、平家納経風写経料紙も御座います。