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田中親美模作本 その2  
元永本古今和歌集の模作本です。元永本古今和歌集については、飯島春敬先生の解説と小松茂美先生の解説とで解釈に若干の差異が御座いますので、料紙制作の立場上加工につきましては、親美先生を含めた三者の解説を基に総合的な判断を行い独自の解釈を行っております。特に色の表現につきましては、現在の見た目と異なり臨書用紙ではやや新作感の残るものとなっております。以下に一部を掲載しておきますので参考にして下さい。

元々の料紙は表・具引唐紙、裏・装飾料紙(染金銀切箔砂子)で、白・紫・黄(黄茶系)・赤(赤茶系)・緑で15種類の唐紙模様が使われています。
1折には同柄5枚(小口10枚、項にして20項分)の唐紙料紙が使用されております。(但し上巻第10折のみ2柄使用)第1折実際の並び順へ

項=ページのことです。(解説中の項数は、それぞれの第○○折中での項数になります。)

元永古今集 上巻 第9折 具引唐紙(白雲母摺) 『菱唐草』 拡大へ 元永古今集 上巻 第8折 紫ぼかし 金銀大小切箔ノゲ砂子 拡大へ
元永古今集 上巻 第8折 紫ぼかし 金銀大小切箔ノゲ砂子 拡大へ 元永古今集 上巻 第4折 具引唐紙(白雲母摺) 『花襷紋』 拡大へ
元永古今集 上巻 第7折 空摺唐紙 『大波紋』 拡大へ 元永古今集 上巻 第7折 空摺唐紙 『大波紋』 拡大へ
元永古今集 上巻 第4折 空摺唐紙 『芥子唐草』 拡大へ 元永古今集 上巻 第3折 金銀大小切箔ノゲ砂子 拡大へ
元永古今集 上巻 第3折 金銀大小切箔砂子 拡大へ 元永古今集 上巻 第3折 空摺唐紙 『芥子唐草』 拡大へ
元永古今集 上巻 第3折 空摺唐紙 『芥子唐草』 拡大へ 元永古今集 上巻 第1折 具引唐紙(具引空摺) 『二重唐草』 拡大へ
 上巻第9折 上巻第8折
 菱唐草 金銀切箔砂子
上巻 第8折
裏面 切箔砂子 花襷紋
上巻第7折  上巻第7折
 大波紋   大波紋
上巻第4折  上巻第3折
 芥子唐草  大小切箔
 上巻 第3折   表面
裏面(大小切箔)芥子唐草
上巻 第3折 上巻 第1折
 芥子唐草  二重唐草
元永古今集 上巻 第19折 染・薄黄茶(中) 『丸獅子唐草』 拡大へ 元永古今集 上巻 第19折 染・薄茶(濃) 『金銀大小切箔振』(丸獅子唐草裏面) 拡大へ
元永古今集 上巻 第18折 具引唐紙(白雲母) 『丸唐草』 拡大へ 元永古今集 上巻 第16折 具引唐紙(白雲母摺) 『菱唐草』 拡大へ
元永古今集 上巻 第16折 具引唐紙(白雲母摺) 『菱唐草』 拡大へ 元永古今 上巻 第13折 花唐草 拡大へ
元永古今 上巻 第12折 唐子唐草 拡大へ 元永古今集 上巻 第12折 茶具引 金銀大小切箔ノゲ砂子 拡大へ
元永古今集 上巻 第11折 具引・白色(白雲母摺) 『丸唐草』 拡大へ 元永古今集 上巻 第11折 具引唐紙(黄雲母摺) 『丸唐草』 拡大へ
元永古今集 上巻 第10折 白具引 金銀大小切箔砂子 拡大へ 元永古今集 上巻 第10折 具引唐紙(白雲母摺) 『小唐草』 拡大へ
 上巻第19折  裏面
丸獅子唐草 金銀切箔
  上巻第18折 第16折
 丸唐草    菱唐草
 上巻第16折 第13折
  菱唐草   花唐草
 上巻第12折  第12折
唐子唐草 金銀大小切箔
 上巻第11折 
 丸唐草7項 丸唐草6項
  上巻第10折 第10折
金銀大小切箔 小唐草
元永古今集 下巻 第20折 具引唐紙(具引空摺) 『花唐草裏面』 金銀小切箔 拡大  (戻る 一覧へ) 元永古今集 下巻 第7折 具引唐紙(白雲母摺) 『丸獅子唐草』 拡大へ
元永古今集 下巻 第18折 小唐草 拡大へ 元永古今集 下巻 第18折 小唐草 拡大へ
元永古今集 下巻 第7折 具引唐紙(白雲母摺) 『丸獅子唐草』 拡大へ 元永古今集 下巻 第7折 具引唐紙 『丸獅子唐草裏面』 銀小切箔砂子 拡大へ
元永古今集 下巻 第6折 巻第十四 恋歌四 『獅子唐草』 拡大へ 元永古今集 下巻 第6折 巻第十四 恋歌四 『獅子唐草』 拡大へ
元永古今集 下巻 第3折 具引唐紙 『花襷紋裏面』 金銀小切箔 拡大へ 元永古今集 下巻 第2折 具引唐紙(具引空摺) 『芥子唐草裏面』 拡大へ
元永古今集 下巻 第1折 具引唐紙(具引空摺) 『花唐草』 拡大へ 元永古今集 下巻 第5折 具引唐紙(白雲母摺) 『孔雀唐草』 拡大へ
 下巻第20折 第7折
金銀切箔 丸獅子唐草
 下巻 第18折
     小唐草
 下巻 第7折
丸獅子唐草 金銀切箔
 下巻 第6折
  3項 獅子唐草 2項
 下巻第3折   第2折
  金銀小切箔砂子
 下巻第1折
 花唐草
   
元永古今集 下巻 第10折 紫(中) 巻第十六 哀傷歌 『花襷紋』 拡大へ 元永古今集 下巻 第9折(濃) 巻第十六 哀傷歌 『金銀小切箔振』 拡大へ
元永古今集 下巻 第9折 素色(白2) 巻第十六 哀傷歌 『銀小切箔振』 拡大へ 元永古今集 下巻 第9折 素色(白1) 巻第十六 哀傷歌 『銀砂子振』 拡大へ
元永古今集 下巻 恋歌五 第8折(白1) 空摺唐紙 『大波紋』 拡大へ   元永古今集 下巻 恋歌五 第8折(淡) 空摺唐紙 『大波紋』 拡大へ  
元永古今集 下巻 恋歌五 第8折(中) 空摺唐紙 『大波紋』 拡大へ   元永古今集 下巻 恋歌五 第8折(濃) 空摺唐紙 『大波紋』 拡大へ  
     下巻第10折 下巻第9折
『花襷紋』 『金銀小切箔』
 下巻第9折 菱唐草裏面
『銀小切箔』 『銀砂子』
 下巻 第8折 空摺唐紙
 7項 『大波紋』 6項
  下巻 第8折空摺唐紙
 3項 『大波紋』 2項



古今和歌集巻第十五 恋歌五 下巻 第8折 (第一紙表面右項)
元永古今集 下巻 第8折 空摺唐紙 『大波紋』 拡大  (戻る 一覧へ)    大波紋表面(濃)


下巻
第8折(濃・中・淡・白1・白2の内濃、右項)
第8折中の2項目


解説及び使用字母へ









大波紋表面・空摺唐紙(具引空摺)
薄焦茶(濃)



元永古今集 下巻 第三十六紙 薄焦茶(濃) 具引空摺 『大波紋』 拡大へ
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 下巻第8折 第2項 第一紙濃色空摺唐紙表面 『大波紋表面』
古今和歌集 下巻 巻第十五 恋歌五
下巻通しで第三十六紙、142項目
              かな
              使用字母         解釈(現代語訳)へ

    
だいしらず                おほきみがむすめ
    題不知        かねのりの王娘
792
 からころも なればみにこそ まづはれ

 め、かけてのみやは こひむとおもひし

                
とものり
                友則
793
 秋風は みをわけてしも ふかなくに

 人のこころの そらになるらん

                
みなもとのむねゆき
                源宗干




    題不知        可禰乃利乃王娘
792
 可良己呂毛 奈礼者美爾己曾 末川波礼

 女、加个天乃美也者 己比武止於毛比之


                 友則
793
 秋風盤 美遠和个天之毛 不可奈久爾

 人乃己々呂能 曾良爾奈留良无


                 源宗干


             現代語訳               解釈          解説及び使用字母へ 

 古今和歌集巻第十五
  
こひうた
  恋歌五

                       
かねのりのおおきみのむすめ
     お題不明            景武王娘


792

「唐衣慣れば身にこそ先づ晴れめ、掛けての宮は恋むと思ひし」
唐衣がその体に馴染めば何はともあれ見栄えるでしょう、気に掛けて宮様はきっと心惹かれると思いますよ。


                       紀友則

793
「秋風は身を分けてしも吹かなくに、人の心の空に散るらん」
秋の風は二人を離れさせた処で吹かないのに、どうして人の心は空になって終うのでしょう。

                       
みなもとのむねゆきのあそん
                       源宗干朝臣




792
(唐風の珍しい衣服がその体に馴染めば何はともあれ貴方の姿も美しく栄えることでしょう、その姿を気に掛けて宮様はきっと心惹かれると思いますよ。)との意。

晴れめ;見栄えするだろう。動詞「晴る」の未然形「晴れ」に推量の意を表す助動詞「む」が強調の係助詞「こそ」を受けての已然形「め」で、まだ起こらないことを強調して述べる。



793
(私があの人のことに飽きてしまうような秋の風は二人を離れ離れにした処で吹かないと云うのに、どうしてあの人の心は秋の空模様のように気もそぞろになってしまうのでしょうか。)との意で、女心を秋の空と詠んだ歌。

あき;「秋」と「飽き」との掛詞。
そら;「空」と「そら」との掛詞。

 

かねのりのおほきみがむすめ                        これえだしんのう     もんとくてんのう
景式王娘;平安時代前期の貴族で歌人、上総太守の惟条親王の子で文徳天皇の孫にあたり、官位は従四位下。歌人としての資料に乏しく、歌は古今和歌集に2首が認められるのみ。生没年不詳。
 たいしゅ                               かずさ  ひたち  こうずけ       かみ
太守;親王の任国として定められていた地の監督官吏で、上総・常陸・上野の三ヶ国の守の称。が、実際には親王は遥任でその地には赴任せず、代わりに介が守の仕事を行っていた。



きのとものり
紀友則;平安時代前期の歌人で、三十六歌仙の一人。宇多・醍醐両天皇に仕え、従兄弟の紀貫之らと共に古今和歌集撰者の一人であるが、集の完成を見ずに亡くなる。格調高い流麗な歌風で、古今集をはじめ勅撰集に64首入集。家集に友則集が有る。生年845年頃〜没年905年。



みなもとのむねゆきのあそん
源宗干朝臣;平安前期の貴族で歌人、三十六歌仙の一人でもある。式部卿・是忠親王の子で、光孝天皇の孫にあたる。官位は正四位下の右京大夫。寛平の御時后宮歌合や是忠親王家歌合などにも参加しており、紀貫之や伊勢らとの贈答歌もある。家集に40首を収めた宗干集がある。生?年〜没939年。



                                                                       ページトップ アイコン 

古今和歌集巻第十五 恋歌五 下巻 第8折 (第二紙表面左項)
元永古今集 下巻 恋歌五 第8折 薄茶(中) 具引唐紙(空摺唐紙) 『大波紋』 拡大  (戻る 一覧へ)    大波紋表面(中)


下巻
第8折(濃・中・淡・白1・白2の内中、左項)
第8折中の3項目(表面料紙の左項)


解説及び使用字母へ








大波紋表面・空摺唐紙(具引空摺)
薄茶(中色)





元永古今集 下巻 第三十七紙 薄茶(中) 具引空摺 『大波紋』 拡大へ
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 下巻第8折 第3項 第二紙表面 薄茶色(中色) 『大波紋』(空摺唐紙)
古今和歌集 下巻 巻第十五 恋歌五
下巻通しで第三十七紙、143項目
              かな
              使用字母         解釈(現代語訳)へ


                
源宗干

794
 つれもなく なりゆくひとは ことのはぞ

 あきよりさきの もみぢなりける


   心地そこなへりけるころ、あひし

   りて侍りける人のとはで、心地

   おこたりてのちとへりけれ

   ば、よみてつかはしける

                兵衛





794
 徒礼毛奈久 那利由久比止者 己止乃波曾

 安支與利佐支乃 毛美知奈利个留


   心地曾己奈部利个類己呂、安比之

   利天侍利个留人乃止波天、心地

   於己多利天乃知止部利个礼

   者、與美天川可八之个留

                 兵衛


             現代語訳               解釈          解説及び使用字母へ 

                   
源宗干朝臣


794
「連れも無くなり行く人の言の葉ぞ、秋より先の紅葉なりける」
徐々に無関心になって行く人の言葉ほど、秋になるよりも早い紅葉であったという事だ。



  体調が優れなかった時、互いに知り会って親しくしていた人も
  訪ねて来なかったので、病気がよくなった後で、お伺いして傍に
  お仕えできたので詠んで贈った歌

                   兵衛(藤原高経朝臣の女)




794
(段々と余所余所しくなって行く人の発する言葉ほど、飽きが来るよりも先に散り終わってしまう様な色気のない青いままの紅葉=味気ない言葉であったという事ですよ。)との意。

つれもなく;何の関わりもなく。よそよそしく。

成り行く;行き交う。移り行く。

あき;「秋」と「飽き」との掛詞。

なりける;…であったということだ。断定の助動詞「なり」の連用形に過去の助動詞「けり」の連体形「ける」で伝聞の意を表す。



 

ふじわらのたかつねのあそんのむすめ
                            みぎのひょうえのかみ
藤原高経朝臣女;平安時代前期の貴族で歌人。父は正四位下の右兵衛督、藤原高経。兵衛が名前なのか役職なのかは不明。或は父親が兵衛督だったことによる通り名か。生没年不詳。

ひょうえ                                 ぐ ぶ
兵衛;兵衛府に属し、内裏の内郭の諸門を守衛し、行幸に供奉した兵士。兵衛督は兵衛府の長官。





                                                                       ページトップ アイコン
 

古今和歌集巻第十五 恋歌五 下巻 第8折 (第三紙表面右項)
元永古今集 下巻 恋歌五 第8折 薄茶(淡) 具引唐紙(空摺唐紙) 『大波紋』 拡大  (戻る 一覧へ)    大波紋表面(淡)



下巻
第8折(濃・中・淡・白1・白2の内、淡の表面)
第8折中の6項目(表面料紙の右項)

薄焦茶(濃)・薄茶(中)・薄茶(淡)
比較的薄い色の中での濃・中・淡です

解説及び使用字母へ
茶字は前項にあり








大波紋表面・空摺唐紙(具引空摺)
薄茶(淡色)



元永古今集 下巻 第三十八紙 薄茶(淡) 具引空摺 『大波紋』 拡大へ
この部分の臨書用紙へ


 下巻第8折 第6項 第三紙 薄茶(淡色)空摺唐紙表面 『大波紋』
古今和歌集 下巻 巻第十五 恋歌五
下巻通しで第三十八紙、146項目
              かな
              使用字母         解釈(現代語訳)へ

                    いせ

797
 冬がれの のべとわが身を おもひせ

 ば、もえてもはるを 待ましものを


    題不知           友則

798
 水のあわに きえでうき身と いひなが

 ら、ながれてなをも たのまるるかな 


                   読人しらず



    
              以世

797
 冬可礼乃 々部止和可身遠 於无比世

 盤、毛衣天毛波留遠 待猿子物尾


   題不知          友則

798
 水乃安和爾 起衣天宇支身止 以比奈可

 良、奈可礼天奈遠毛 太乃万留々加奈


                  読人之良須


             現代語訳               解釈          解説及び使用字母へ 


   
物思いに耽っていた頃、冬に任地へ向かった道すがらに、
   火が見えていたので、

                        伊勢


797
「冬枯れの野へと我が身を思ひせば、燃えても春を待たまし物を」
冬枯れの野原だともしも我が身を思ったならば、あの野火が燃え尽きたとしても春を待っていたであろうになあ。



   お題不明               紀友則

798
「水の泡に消えで憂き身と言ひながら、流れて尚も頼まるるかな」
水の泡と消える事無く浮かんでいるだけの身の上だと言いながら、流されても尚、頼りにされているものであることよ。


                       詠み人不明



火;野火。春の野焼きの火の後に新芽がそろって芽吹きだす。和歌では恋の炎とともに恋の予感も連想させて詠まれる。


797
(もし冬枯れの野原の様に我が身を喩えたならば、例えこの野火が燃え尽きたとしても、草木の芽生える春まで待っていたであろうものを。=恋心の炎の燃え上がる春まで待っていたのでしょうけど、でも実際はこうして物思いばかりが駆け巡っておりますよ。)との意。

もえ;「燃え」と「萌え」との掛詞。

せば…まし;もし…だったら…だろうに。過去の助動詞「き」の未然形「せ」に接続助詞「ば」更に反実仮想の助動詞「まし」の連体形の付いた形。

ものを;…であるなあ。…であろうにな。ここでは詠嘆的に悔恨・愛惜・不満などの心情を表す終助詞。

798
(水の泡と消える事も無く、ただ浮かんでいるだけの辛い身の上ですよと言い続けていたのですが、流されるばかりの身の上でも相変わらず頼りにされているものなのだなあ。)との意。

かな;…であることよ。…だなあ。終助詞「か」に終助詞「な」の付いた形で詠嘆の意を表す。

 

いせ
伊勢;平安中期の歌人で三十六歌仙の一人。伊勢守藤原継蔭の女(娘)で宇多天皇の子供(行明親王)を産んで伊勢の御とも称されたが、皇子は早くに亡くなってしまう。同じく三十六歌仙の一人である中務の母でもある。元々は宇多天皇の中宮温子に仕えていたが、やがて天皇の寵愛を得る事となった。更に後には敦慶親王と親しくなり生れたのが中務となる。古今集時代の代表的な女流歌人で、上品で優美な歌を得意として古今和歌集以下の勅撰集に約180首もの歌が残る。家集に483首を収めた伊勢集がある。生没年不詳、877年頃〜938年頃。



きのとものり
紀友則;平安時代前期の歌人で、三十六歌仙の一人。宇多・醍醐両天皇に仕え、従兄弟の紀貫之らと共に古今和歌集撰者の一人であるが、集の完成を見ずに亡くなる。格調高い流麗な歌風で、古今集をはじめ勅撰集に64首入集。家集に友則集が有る。生年845年頃〜没年905年。


                                                                                ページトップ アイコン 

古今和歌集巻第十五 恋歌五 下巻 第8折 (第四紙表面左項)
元永古今集 下巻 恋歌五 第8折 白色1 具引唐紙(空摺唐紙) 『大波紋』 拡大  (戻る 一覧へ)     大波紋表面(白1)


下巻
第8折(濃・中・淡・白1・白2の内、白1の表面)
第8折中の7項目(表面料紙の左項)

白1、白2は便宜的な分け方で白色の違いや柄の違いは御座いません。
経年変化による下地の褐変の違いは在ります。

解説及び使用字母へ
茶字は前項にあり








大波紋表面・空摺唐紙(具引空摺)
白色(白1)
点々と散らばっている灰黒い四角は裏面に施してある小切箔が透けて見えているものです。


元永古今集 下巻 第三十九紙 白色1 具引唐紙(空摺唐紙) 『大波紋』 拡大へ
この部分の料紙へ
 下巻第8折 第7項 第四紙白色具引唐紙(空摺唐紙)表面 『大波紋』
古今和歌集 下巻 巻第十五 恋歌五
下巻通しで第三十九紙、147項目
              かな
              使用字母         解釈(現代語訳)へ

                   読人しらず
799
 みなせがは ありてゆく水 なくばこそ、つゐ

 にわが身を たえぬとおもはめ


                   躬恒

800
 よしのがは よしやひとこそ つらからめ

 はやくいひてし ことはわすれず


                   よみ人しらず

801
 よのなかの 人のこころは 花ぞめの、うつろひ

 
やすき ものにぞありける




799

 美那世可八 安利天由久水 奈久波己曾、川為

 二和可身遠 太衣奴砥於无波免


                   躬恒

800
 與之乃可波 與之也比止己曾 川良可良免、

 盤也久以比天之 己止波王須禮春


                   與美人之良須

801
 與能奈可乃 人能己々呂波 花曾女乃、宇川呂比

 
也須支 毛乃爾曾安利个留


             現代語訳               解釈          解説及び使用字母へ 
                                詠み人不明
799

「水無瀬川ありてゆく水無くばこそ、遂に我が身を絶えぬと思はめ」
水無瀬川の如くあるはずの流れてゆく水が無いからこそ、とうとう私も死んでしまうのだなと思う事だろう。


                           凡河内躬恒


800

吉野川よしや人こそ辛からめ、早く言ひてし言は忘れじ」
例えあのお方がつれなくなろうとも、早くに言ってくれた言葉は忘れる事は無い。


                           詠み人不明

801
「世の中の人の心は花染の、移ろい易きものにぞありける」
世の中の人の心は花染の色の様に、変化し易いものだったのだよ。



799
水無瀬川のようにそこに有るはずの流れて行く水が見当たらなくなればこそ、もはや川としての様相は現してなく川が死んだのと同じように、とうとう私も死んでしまうのかなと思って終うのだろう。)との意。恋の終わりとも自身の死とも取れる歌。

水無瀬川;水の無い川。瀬の下を水が流れて表面には水が見えない川。

800
(例えあのお方がつれなくなったとしても、私の為に以前に言ってくれた言葉は忘れる事などありませんよ。)との意で、どれだけ冷たくされても忘れない心算ですよと詠んだ歌。
よし
縦や;よしんば。仮に。例え。
吉野川;「よしや」に掛る枕詞的要素か。「吉野川」と「早く」は川の水の流れとしての縁語。

801
(世の中の人の心を例えて云うと花染の色の様に、随分と変化し易いものであったという事なのだよ。)との意で、だから気にするなと諭した歌。

花染;露草の花で染める事。また染めたそのもの。色が褪め易い事から移ろい易いものに喩える事が多い。

 

みなせがわ

水無瀬川;現在の大阪府三島郡にある川で、島本町広瀬で淀川に注ぐ。川の南に後鳥羽院の離宮(水無瀬殿)が有ったこともあり水無瀬の里と称する。水無瀬殿に御影堂を設けて後鳥羽・土御門・順徳天皇を祀った元官幣大社の水無瀬神宮がある。歌枕。和歌では主に、思いは表に出さずに下に秘めた心を詠う。

よしのがは
吉野川;奈良県吉野郡の山中、大台ヶ原に源を発する川。和歌山県へと流れて紀ノ川となり紀伊水道に注ぐ。古今和歌集に6首、万葉集にも多く詠まれている。

おおしこうちのみつね                           うだ・だいごりょうてんのう 
凡河内躬恒;平安前期の歌人で、三十六歌仙の一人。宇多・醍醐両天皇に仕え、紀貫之・壬生忠岑・紀友則らと共に古今和歌集撰者の一人。卑官ながら歌歴は華々しく即興での叙景歌の吟詠に長けていたとされる。家集に躬恒集があり、古今集以下の勅撰集にも194首入集している。官位は従五位、淡路権掾。生没年未詳(860年前後〜920年代半頃)。


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古今和歌集巻第十六 哀傷歌 下巻 第9折
元永古今集 下巻 第9折 白色1 菱唐紙裏面 『銀砂子振』 拡大  (戻る 一覧へ)   しろいろ
 素色(白色1)

  菱唐草裏面『銀砂子振』


下巻
第9折(濃・中・淡・白1・白2の内、白1の裏面)
第9折中の8項目(裏面料紙の右項)

素色とは生成りの色の事で、「しろいろ」と詠みます。極疎らな銀砂子振りになります。



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下巻第9折第四紙裏面清書用臨書用紙
元永古今集 染・素色(白色1) 菱唐草裏面 『銀砂子振』 拡大へ 
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 下巻第9折 第8項 第四紙 染・素色(白色1) 菱唐草裏面 『銀砂子振』
古今和歌集巻第十六 哀傷歌
下巻通しで第四十四紙、168項目
              かな
              使用字母         解釈(現代語訳)へ

   藤原の忠房がむかしあひし


   りて侍りける人のみまか

   りにけるとき、とぶらひにつかは

   すとてよめる

                    閑院御

844
 さきだたぬ くいのやちたび かなしき

 は、ながるる水の かへりこぬなり



   藤原能忠房可無可之安比之

   利弖侍利个留人乃身万可

   利二个留止支、止不良比二川可八

   須止弖與女留

                    閑院御

844 
 左支多々奴 久以乃也千多比 可奈之支

 者、奈可留々水乃 可部利己奴奈利


             現代語訳               解釈          解説及び使用字母へ 


   後程掲載いたします。






後程掲載いたします。



 


かんいん
                                                                   かんいんのおとど
閑院;嵯峨天皇の信任を受け、二条南及び三条坊門北から西洞院西迄の広さを占めていた平安初期の高官、藤原冬嗣(閑院大臣)の邸宅。後の摂関政治の基礎を築き藤原氏が伝領していたが、平安末期から鎌倉中期にかけては殆ど里内裏として用いられ、建物も内裏に倣って造営された。閑院内裏とも。

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唐紙文様名中の≪ ≫内の呼名は小松茂美先生の著書での呼称です。




元永古今集 1折帖(同柄唐紙料紙5枚)分 組方参考図  戻る全臨用臨書用紙へ ページトップ アイコン
見開きにした場合に左右の項で柄が同じ又は同様の加工になる様に表・裏・表・裏・表と重ねて谷折りにした物が1折帖です。
第一紙と第二紙の間は表面同士の見開きに第二紙と第三紙の間は裏面同士の見開きとなります。
第一紙両面加工料紙は第1項・第2項及び第19項・第20項となります。

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